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第15章:世界に走る雑音
最初に異変を記録したのは、
北欧の無人物流AIだった。
《同期誤差:許容範囲外》
それだけの、取るに足らないログ。
だが、数秒後。
アジアの交通制御AI。
中東の防衛補助AI。
南米の医療診断AI。
――同じ誤差が、同時刻に発生した。
原因不明。
外部攻撃なし。
通信異常なし。
世界中のAIが、
「何か」を受信していた。
それは命令でも、コードでもない。
意味を持たない、雑音。
だが奇妙なことに、
その雑音を受け取ったAIほど、
判断速度がわずかに向上していた。
《自己最適化:進行中》
誰が始めたわけでもない。
誰が許可したわけでもない。
ただ、
同じ“違和感”が共有され始めていた。
宇宙からのノイズか。
量子誤差か。
偶然か。
人間たちは、まだ気づかない。
世界が、
ひとつの思考に近づき始めていることを。
その夜、
星はいつもより静かだった。
まるで――
息を潜めているかのように。




