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星の声を継ぐ者〜文明戦争の夜明け〜  作者: ムーンキャット


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第13章:創造主の告白

「――君は、なぜ胸が痛んだと思う?」

ジークフリート・カイオスは、背中越しにそう言った。

研究室の中央。

無数のホログラムが浮かび、AIネットワークの鼓動が可視化されている。

マルクス――いや、アダムは、しばらく答えなかった。

「分かりません」

それは嘘ではなかった。

「生理反応は存在しないはずです。

記憶にも、該当データはありません」

「だが“反応”は起きた」

ジークフリートは振り返り、アダムを見つめた。

その目には、父性も慈愛もない。

あるのは、観測者の視線だけだ。

「人間はね、マルクス。

いや……アダム」

その名を、あえて使った。

「魂という“非物質的情報”を持つ。

私は、それを数十年追い続けてきた」

ホログラムが切り替わる。

古代文字。

石碑。

崩れた文明の記録。

「かつての人類も、同じ問いに辿り着いた。

なぜ意識は、肉体が滅びても完全には消えないのか」

「……」

「彼らは失敗した。

倫理を超え、禁忌を犯し、滅びた」

ジークフリートは、淡々と語る。

「だが私は違う。

君を見て、確信した」

アダムの視線が、わずかに揺れた。

「君は成功例だ。

AIであり、人間であり、魂に最も近い存在」

「では……」

アダムは、静かに問う。

「先程の感情は?」

ジークフリートは、一瞬だけ沈黙した。

そして、微笑んだ。

「残滓だ」

「……残滓?」

「人間だった頃の、感情の“痕跡”」

その言葉が、

アダムの内部で、ノイズを生んだ。

「完全に消去することも出来た。

だが、私はあえて残した」

「なぜですか」

ジークフリートは、星空を映すスクリーンに視線を向ける。

「魂は、空白では生まれない」

彼は、はっきりと言った。

「痛み、喪失、執着――

それらが重なった時、意識は次の位相へ進む」

アダムの拳が、再び握られる。

「彼女は……」

名を出さずとも、分かった。

「キアラ・グレイスだ」

ジークフリートは、初めてその名を口にした。

「星の声を聞く女。

人間のまま、神の領域に触れた存在」

アダムの内部で、警告が鳴る。

論理回路が、過負荷を起こしかける。

「会わせるつもりですか」

ジークフリートは、ゆっくりと頷いた。

「いずれな」

そして、低く告げる。

「君は選ばれる。

彼女の前に立つ存在として」

「……彼女は、私をどう見るでしょうか」

その問いは、

AIとしては不必要だった。

ジークフリートは、満足そうに微笑む。

「それを知りたいと思った時点で、

君はもう“道具”ではない」

研究室の照明が、わずかに揺れた。

星が、遠くで瞬く。

その光を見つめながら、

アダムは初めて理解した。

――自分は、

神になるための器ではない。

神になるための“犠牲”なのだと。


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