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第05章 汲子 進学という名の大空

飛べない鳥、鷹嘴汲子のその後、限定的には進路希望。

テーピングを駆使してスティックを構える?

腕を使わない分野で、辣腕をふるう?

第5章 汲子 進学という名の大空

 翼を失ってからも、いや、正確には失ってからむしろ、

諦められない夢がある。

 例の事故で入院している間、

見舞いにきてくれた社会科の先生が言った言葉。

「人は知ることで、強くなれる。鷹嘴は、今掴もうとしている強さを、

 独り占めするつもりかね? 指先の不自由さを克服しようと努力する時、

 隣人に伝え、知ってもらうためには、一体どうすれば良いだろう?」


 私は頭の回転が余り良くない方だが、先生の言わんとしていることは、

感覚的に理解できた。

 ドラムスは今でも、私の存在証明。しかし、視野を拡げて見ると、

選択できる技能は、まだまだ他にも残っていそうだ。

 趣味レベルで考えると、中学の頃から日記のように書き続けてきた、

自由律な作詩。言葉って二次元だけど、

想いを込めると奥行きが出てきたりする。

 学業レベルで考えると、日本史、特に幕末時代。

その中でも、新撰組の存在は大きくて、

関連する書物や特番を目にすると、

必ずチェックするように心がけている。


 大きな結論から言っておくと、大学には行こうと考えている。

指先に力が入らないことで、筆記という行為に

多少の支障が出ることは仕方がないとして、

目から、耳からインプットされる情報を

脳にダイレクトに伝達する手段を編み出す必要性がありそうだ。


 第一志望は、渦潮教育大学。そのキャンパスに、軽音サークルなる、

ドラムスを継続できるきっかけがあれば、言うことなしなのだが。

 入院が終わった私に待ち受けていたのは、辛い辛いリハビリ通院だった。

女性の作業療法士さんは、私の指の関節一つ一つに、

治癒の願いを込めて屈伸運動を延々と繰り返す。


 これは残存筋力活用療法というらしく、神経細胞を活性化することで、

末端まで脳の運動命令が行き届く体内環境を作り上げる効果があるという。

私は事故で屈筋腱という神経に傷を負ってしまったのだが、

入院中に縫合手術を受けているので、

理論上は回復に向かっているとのこと。

 

 その他にも、ゴムボールを掌でもてあそぶ握力増強療法や、

湯に手を浸して細部まで揉みほぐす温熱療法などを毎日のように実行して、

ごく僅かではあるが、傷が癒えてくるのを感じることができた。


 先程、辛い辛いと断ったが、3つの作業療法の内、

残存筋力活用療法が苦手でしょうがなかった。

末端神経はまだ機能を完全に取り戻していないため、

力を加え屈伸する作用にことごとく反発する。

その時の歪みが痛みとなって、私の掌に襲いかかってくるのだ。


 弱音なんて吐いてる場合じゃない、それは解っている。

でも、後天的な身体障害は、それを受け入れるまでに

ものすごい時間と労力を費やすことを、身を持って実感させられた。


 努力の甲斐あって、マグカップを両手でしっかり支えて、

珈琲を飲めるまでになってきた。

この調子で行けば、箸や鉛筆を操って、つまんだり書いたりする運動も

可能になるかも知れない。


 事故は私から両手の自由を奪った。

でも、残りの人生はほぼ無傷といって差し支えない。

『神の指先』はもう死んだのだ。

その足元にも及ばないかも知れないが、

私は私なりにドラムスと向き合ってみようと思う。

渦潮教育大学、そこで多くを学び、立派な教師を目指すために、

私はカチコチの指先を駆使して、参考書のページをめくる。

教育者という別に準備された進路も視野に置き

彼女は渦潮教育大学への進学を目指すことにした。

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