第23章 汲子 ゴースト・モーション
第23章 汲子 ゴースト・モーション
「なあ鷹嘴、重低音革命はその後どうなんだ?」
「あー、福山先輩、難航してます。
インパクトは充分なんだけど、
一曲通してとなると、耳障りな感じがちょっと……」
「まあ唯一無二の奏者を目指すんだったら、
思考錯誤は常だろ。
お前、他人のライヴや飲み会には頻繁に顔出してくれるから、
全然幽霊部員って印象は受けないけど、
なんせ演奏はヴェールに包まれたままだからな。
真の実力者って、皆一目置いてるぞ」
「うわぁ、作戦失敗や、後でえらい恥かかんといいけど」
「なぁ、革新的な奏法を模索しているのは理解できるけど、
バンド組んでもそれは追求できるんじゃないのか?」
「アンサンブルの妙は、中高時代に
充分に経験させてもらいました。
私、指先に障害を抱えているんです」
つい、言ってしまった。
私はこの人に弱みを曝そうとしているのだろうか?
「障害? 痺れたりするんか?」
「リハビリの甲斐あってだいぶ回復はしたんですけど、
指先の細かい作業が、ちょっと難儀で……」
「ドラムスはフィンガーコントロールを駆使するって
聞くもんな。そっか、そういう理由か。
すまん、辛い時期を思い出したりしなかったか?」
ひょうきん者って言葉が一番しっくりくる
福山先輩のさりげない優しさ、
ちょっとクラっときたじゃない。
「平気……、平気です。
ミュージック・阿波ーって
今の所全バンドコピーやってるじゃないですか。
私、密かに待ってるんです。
劇的なロックを引っ提げて名曲を掻き鳴らす、本物の逸材を。
第一志望は社会科の教師だから、
4年間ずっと待ちぼうけでも構いません」
「確かに此処はコピーバンドの巣窟だな。
いいよ、好きなだけ待ってみろ。
天才は、忘れた頃にやってくるって言うだろ?」
「テンサイ違いですけんど、だんだん。
長い目で見たら、教師でロックするのも悪くないですよね?
今は重低音革命、そして待ち人を
手薬煉する日々です」




