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第16章 恵梨子 ひと夏の清涼感をあなたに

 誰かにとっては最後のSUMMER FESTIVALが開幕しようとしている。

演奏面ではまだまだの亜紀子だが

作詞した作品がデビューしようとしている。

「蒸気」「ロープレ」「恋の砂塵」……

Blind Touchの代表作に成れる楽曲は生まれるか?

第16章 恵梨子 ひと夏の清涼感をあなたに


LAST STAGE

IN SUMMER VACATION

「祇織、本当にこれが最後なんやね」

「恵梨子ぉー、我がままばかりでごめんね。

Blind Touchの穴を空けた分、

めっちゃ勉強して現役合格してみせるから」

 現役合格、進学というビジョンがない私にはいまいちピン! 

とこないが、きっと大学生になりたい人にとっては

大切なことなんだろう。

そんな話をしていたら、舞台袖にアッコちゃんが参上した。

私の肩を叩き、ねぎらいの言葉を掛けてくれる。

「今日は、Blind Touchの区切りの時であり、

わたくし吹丘亜紀子・作詞デビューの時でもあるね。

私とエッちゃんの作品が、

聴きにきてくれた人たちの耳に届く瞬間を、ここから見届けるよ」

「ステージの向こうにはお客さんがたくさんおるけんど、

今日はアッコちゃんのために、最高のストロークを目指すじょ」

 私は直視できないが、観客導入の様子は

会場のざわめきとチケットさばきの実績で把握している。

「恵梨子、幽香さん、そして亜紀、Blind Touchの

名を汚さぬ最高の演奏をすることをここに誓うよ。

汐音祇織、ここに在りって所を見せてやろうじゃない」

「祇織、私より早く受験勉強に専念するなんて頭が下がるけど、

それはあんたが考え抜いた末に導き出した結論だもんね。

Blind Touchのドラムスとして

最高のビートを刻むことを、ここに約束する」

 寡黙な幽香さんがここまで饒舌に語る、

今日のステージがそれほど特別だってことを

感じさせる貴重な瞬間だ。

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