第01章 恵梨子 情熱の色彩
私、箸元恵梨子はブラインドタッチの名の下、
今日も障害と向き合い生涯設計。
趣味の枠を超えない油彩画と
全身全霊を込めた、作詞作曲のたしなみを
日々体現しながら生きている。
今日はどんな色彩が
情熱をあたためてくれるだろう?
私は、両親の顔を知らない。
でも、二人からは
両手で抱えられないくらいの愛を貰っている。
足りない物があっても、それを補うほどの優しさ。
私が母親になったなら、その時もきっとカタチにするんだ。
私は、太陽の色を知らない。
でも、大空の画を描く時、
躊躇することなく
「情熱」をパレットに搾り出す。
ルールは神の創造ではなく
人間が後から付け足したつくろいだ。
触れることで、世界が拡がる。
歌うことで、世界が色付く。
私は油絵を描き、ギターを掻く。
油絵は母から、ギターは父から教えを乞うた。
バンドを組むなら絶対にTHREE PIECE
そう心に決めていた。
4人編成、5人編成がダメだという意味ではない。
3人にしか奏でられないアンサンブル(調和)
3人だからこそ奏でられるアンサンブルが
存在することを
私は身をもって知るんだ。アンサンブルとは
「信頼」である。
ステージで呼吸が一つになる時、
私は「信頼」の中心にいて
それを保ち続けるために、
自分にできる最高の発声と、
最高のストロークを目指すようにしている。
初めて作った曲、タイトルは
「ミチヅキ(満ち月)」
満月を言い換えた造語で、無限に広がる夜空に優しく
でも圧倒的な存在感を放つ、
あの輝きのようになりたいと願いを込めて
そう名付けた。
太陽同様、満月本来の色は脳内で勝手に着色。
定番曲は「朝日郷愁水車
(あさひ きょうしゅう すいしゃ)」
大人になろうと背伸びする等身大の自分を歌った曲で
10代の感情を
疾走感溢れるビートとストロークで表現している。
今度のライヴはどんな盛り上がりを見せるだろう?
私も含めたメンバー全員で、
一度も聴きにきてくれたことのない人たちを
招待しよう、ということになっている。
思い返せば心臓が飛び出しそうだった
初めての演奏の時、
同じ学校の子に
「恵梨子のバンド、結構イケるじゃん!」
という感想をもらい、心が救われるようだった。
結構イケる、初ライヴの評価としては上々、
いや最上級の褒め言葉だと思う。
父さん、母さん、産んでくれてありがとう。
たくさんの可能性をありがとう。
私、2人の愛で世界を変えてみせるから。




