逃避
初めまして。お久しぶりです。蟹座のメロスです。
限りある人生の休憩中に、この作品に興味を持っていただけただけで嬉しく思います。
様々な小説をお読みになっている皆様からすると、技術もなく、ありきたりな話と
思えるかもしれません。
それでも、私の世界を覗いてくださるという方。本当にありがとうございます。
お楽しみいただけますと幸いです。
都会で佇むビル群のとある1棟。
あちこちからキーボードを叩きつける音と、罵声が飛び交っていた。
田中聡。社会人1年目の僕は、まだ仕事なんて何一つ分からず、
この現状が正しいのか判断ができないため、必死にしがみつくしかなかった。
「田中くん!この後、楽しみだね!」
久しぶりの飲み会が開かれることで、課長は満面の笑みをこぼした。
この会社では、誰かが配属、異動。そして退職の場合のみ飲み会は開かれるらしい。
そして、今回は僕の歓迎会だった。
社会人の飲み会は初めてだったので、“何かギャグをするべきか”や“最初の挨拶どうするか”
と、仕事のことなんて考える暇なんかなかった。
余っていた業務をこなし、足早に会場へ向かうと、飲み会は僕待ちであった。
「すみません!」
新入社員が最後に来るなんて、マナー違反に違いないが時代も時代であるため、誰も何も言わなかった。部屋に入ると、タバコの匂いが充満しており、息をするのを忘れそうになる。
自分の親と同じくらいの年齢である大人たちに囲まれ、中年男性達が身体の芯から発する匂いがさらに息を吞ませた。
「あ、ビール注ぎますよ!」
「おっ!ありがと!」
僕は、少しでも好かれようと思い、空いているグラスを見つけたらすぐに声を掛けた。
ただ、ビールを注ごうとする手は、上手くグラスに定まらず、数回はテーブルを濡らしてしまった。懇親会が終わる頃には、シャツは身体中から溢れた汗で濡れており、
喉は渇ききっていた。
「う~し、外出るぞ~。」
どの先輩かは分からなかったが、皆外へ出ていったため、流れに身を任せ
僕も身体を素直に外へ向かわせた。
外へ出ると、街を照らす光は、夢の中のようにおぼろげに光り、
街を歩く人々の和気あいあいとした声は、僕の身体を揺らし、鼓動をさらに早めてくれた。
「じゃぁ、お開きで。」
高揚感溢れる僕なんて置き去りに。
意識の遠くから、無慈悲な大人が発する“終わりの合図”が聞こえた。
―2次会すら、やってくれないのか。
力も勇気も持ちえない僕は、誰にも見られない心の奥底で、不貞腐れていた。
学生の頃から想像していた、“明るい会社生活”とは程遠く感じる現実に。
革靴は、コンクリートで鈍い音を大きく鳴らしながら家へ帰っていく。
それをバカにするように、歩行者信号は僕を見つけると赤色となり、僕を進ませなかった。
「ははは」
夜を楽しむ集団が僕を囲い、楽しそうな会話は1人きりの僕を嘲笑っている気がして、
周りの視線や、行動に敏感になっていた。
どこかに同じ人間はいないかと、探していると信号下に男が1人でいた。
手を伸ばせば信号機に届きそうなほど長身で、髪はセンターパートで綺麗に整えられていた。
そして目は、、、
―あ。
その猫のように眉が吊り上がる目に見覚えがあった。
“佐藤健”。40人もいる同期の中の1人で、話したことはなかった。
学生気分が抜けていない同期8人ほどで、いつも一緒に行動しているのを見たことがある。
研修中はいつも目を閉じており、度々講師から呆れられ、裏で“研修ストッパー”と呼ばれていた。
そんな、少し“関わりたくない人”だった。
いつもなら気付かなかったフリをして、無視をするだろう。しかし、なぜだろうか。
今日は話しかけたい気分だった。少し小走りで、青色に変わる前から信号を渡り、声をかけた。
「あれ、佐藤君だよね?」
「うん、田中君だよね?何してるの?」
「えっと、歓迎会終わりだね。」
「あ、まじ?おれもだよ。」
「おぉ、奇遇だね。」
初対面とは思えないほど自然な会話が進み、
人は話してみないと分からないな。と僕が偏見を持っていた事を心の中で謝罪した。
「けんく~ん!!」
そこに、高く透き通るような声が聞こえた。
遠くから、リズムの悪いスキップで向かってきた。
“山田琴音”。話したことのない数少ない女性同期3人。その中の1人。
佐藤君と山田さんは、研修中は隣の席だった。
話している様子は、見たことがなく、仲が良いことは今知った。
「けんくん、何してるの?」
「今、たまたま佐藤君とばったりって感じ。」
今日初めて2人と会話する僕は、仲が良さそうな二人の間に割り込めず、
愛想良く見えるように口角を上げていた。
「あ、田中君!山田です!よろしくね!」
「う、うん。よろしく」
「うん!」
山田さんの、人を区別しない暖かく無邪気な笑顔は、僕の口角を自然な形に仕上げてくれた。
「実は、私、歓迎会終わりなんだよね。」
『え?山田さんも!?』
「え?う、うん。まさか2人も?」
息ぴったりのタイミングで、佐藤君と発言が重なる。
それを、山田さんはネタ合わせでもしたのかと不審がる様子を見せ、
この状況がおかしくて笑いを耐えられてなかった。
「なんか、運命感じるね。」
安っぽく聞こえてしまう “運命“って言葉は、あまり好みではなかった。
けど、なんだか、とてもしっくり来ていた。
「山田さんと田中君。この後、まだいける?」
山田さんよりも、少し不気味な笑みを浮かべる佐藤君。
自分だけが不気味だと感じているのかを確かめるように山田さんの顔を見ると、
山田さんもこちらを見ていた。それを安心材料に、もう一度佐藤君の顔へと目を移し頷く。
「じゃぁ、飲みにいく?」
再度、山田さんと顔を見合わせて、息を合わせるように笑みをこぼして一緒に一言。
『うん!』
台本の読み合わせのような展開に、
あまり仲が良い同期もいなかった僕は、この出会いをとても救いに感じていた。
三人で出会い方を笑いながら、すぐそこにあった居酒屋に入る。
「会社の飲み会楽しくなかったな。」
入って早々こぼれてしまった愚痴に2人は、目を丸くして啞然とするわけでもなく
自然体で反応してくれた。
「分かる。俺も気遣いしちゃうんだよね。」
「佐藤君もなんだ!私もなんだよね~。」
「グラスとか空いてると、聞かなくちゃってあせるよなぁ」
「分かる~!あと、食事取り分けるのもめんどくさいよね」
自分も感じていた悩みを感じている人が目の前に2人もいる。
それを知れただけで、今日という1日はこれからの期待が膨らませた。
「ねぇ、グループ作ろうよ。」
人の目なんて気にせず、学生時代を感じさせてくれる。
きっと、僕はこういう社会人を思い描いていたに違いない。
その後、連絡先を交換し、苗字呼びは下の名前呼びになり、
1週間に1度は、3人で集まる仲となり、半年が過ぎた。
気晴らしは、タコパか飲みの2択だけだったが、それもなんだか今となっては安心感があった。
今日は、明日も仕事であったため、タコパをしていた。
「そろそろ、彼女がこっち来るからさ。もう会えないかも。」
「まじか、健。」
と、急な展開。心地よく感じる集まりが崩れてしまうのか。
そう不安になり、何か解決策はないのかと仕事中よりも、脳をフル回転させた。
「じゃぁ、彼女さんも一緒に遊べばいいじゃん」
琴音が、珍しく低い声で、拗ねている子供のように語りかけた。
「聡もいいよね?」
「う、うん、もちろんだよ。」
僕が止めることなんて、できるはずもなかった。
この時間を失いたくないから。
「彼女に聞いてみるよ。」
「うん!」
困り顔の健を見るのは新鮮で、
切り替えが早い琴音をみていると誰にでも“裏”は存在するのだろう。
と、他人事のように考えていた。
小学校のとき、たまたま誘われたサッカーが生きがいになっていた。
そのまま、ダラダラ高校まで続けていたが、大学に入ると趣味程度でフットサルをするようになっていた。サッカーよりもお遊び感が強く、熱が入り過ぎない程合いが気楽だった。
社会人になってからは、仕事の疲れから休日はゆっくりしたい人が多く、めっきり機会も減り、
3カ月ぶりに開催された今日は胸を少し高鳴らせた。そのせいか、フットサルの後、仲間たちと解散するとドっと疲れが身体にのしかかり、家に帰宅する気力すらなかった。
近くのみえた温泉に向かい、身体の疲れを洗い流した後、マッサージチェアーで少しウトウトしていた。もう少しで夢へ行けそうだという時に、LINEの通知音が鳴った。
「こんなときに誰だ。」
駄々をこねながらも、確認すると健だった。
―今、彼女といるんだけど、飲まない?
たった一文。そういえば、こっちに彼女が来ると言っていたな、と思いつつ
この重い腰をあげるかと悩んでいた。その迷いを察したように、もう一通。
―お願いだから来て?
それは健ではなく、琴音からの連絡だった。
断れるはずもなく“OK”サインのスタンプを返し、健にも行ける旨を伝え、
重い腰を持ち上げて集合場所にむかった。
居酒屋にはいると、真剣なまなざしでスマホを見つめる琴音が座っていた。
「よっ!あれ、2人は?」
「よよっ!まだだよ~」
「誘ったきたの、あっちなのにな。」
「ほんとね~」
ルーズな健に少し苛立ちつつも、少し元気のない琴音と二人きりなのが決まづく感じた。
「あのね、わたし、、」
「ん?どうした?」
何か重大なことが伝えられる気がして身構える。
「うぃすうぃす。」
「おぉ、やっときた!」
「またせたね。」
「全然だよ~。」
悪びれもなく、座る健を琴音はいとも簡単に許した。
後ろに、もう一人。幼い子供みたいに健にくっつき、
健の身体からは手入れの行き届いた長髪がはみ出ており、柑橘の匂いが漂っていた。
「こ、こんにちは。」
喉の筋肉を精一杯使って発しているように聞こえる自信のなさそうな声で健の彼女は挨拶をしてきて、
健の彼女とは思えないほど物静かだった。
「よろしくね!」
先ほどとは、想像もつかない愛想の良さを見せる琴音。
それが、緊張をほぐしたのか時間の経過とともに、楓ちゃんの声量は大きくなっていた。
「ちょ、お手洗いいってくる。」
「いってらっしゃい~」
盛り上がりが落ち着いたころ、健はお手洗いに行くといった。
実は、タバコを吸ってくるという合図だとは僕以外は知らぬだろう。
「ねぇ、楓ちゃんは健のどこが好きなの?」
「えっと、、、王子様みたいな、、ところです。」
「かわいい~!」
若さを感じさせる回答にも、優しく答える琴音を見ると、やっぱ恋愛トークは女の子の専売特許であることを再確認した。
ただ、子供っぽすぎる素直な反応に、驚いたのか。
琴音の目の奥から光が、一瞬だけ消えていたのが少し気になった。
「ごめん、ごめん」
不安をかき消すように、健は戻ってくる。それをいい締めくくりとして、僕たちは店を後にした。
「楽しかった!」
楓ちゃんは、最初とは比べものにならない声量で精一杯の喜びを表現しているおり、
妹と接している気分だった。帰り道が別々であったため、健と楓ちゃんを見送った後に琴音と二人で帰った。
「楓ちゃん、楽しそうにしてたね。」
「ほんとね。なんか、安心した。」
コオロギの生き残りであろう程よい量の泣き声が残る夜道。
飲み会前の雰囲気が戻る。
「私、別れたんだ。」
沈黙が続いた後の急な告白。僕は、黙り込んでしまった。
「だから、なんか楓ちゃんが羨ましいな」
きっと、別れた直後の気の迷いであろう。それ以上、何も聞けなかった。
「言いたいこと、分かるよ。」
僕自身も、独りであったため、気休め程度の言葉しかかけられなかった。
「うん。コオロギ、泣き止んだね。」
楽しかった高揚感に包容された寂しさは、
明るい未来を示すわけでもないのに、なぜか心地よく感じた。
仕事の休憩中、僕は一人で喫煙所に行くことが増えていた。
悩みが形として出ているように、吐いた煙は宙から中々消えなかった。
―昨日のことだった。
「楓、次はカラオケしたい!」
あれ以降、4人で集まるようになり、楓ちゃんは人見知りだった頃を想像させず、
今にもPopな音楽を流しそうな明るさを見せるようになった。
「だ~め~。琴音は何がしたい?」
「え?私?私もカラオケかなぁ。」
「いいね~」
ただ、今までは見えなかった健の素顔も見えるようになった。
楓ちゃんの気持ちを弄び、嫉妬心を煽るように琴音を甘やかしていた。
「やった~!楓、楽しみ!」
見せつけるように、健の腕を掴み身体を寄せる楓ちゃん。
「聡もいいよね?」
それをみた琴音は、寂しそうな顔を一瞬浮かべ、隠すように笑顔で僕に語りかける。
その歪みが隠し切れない笑顔が醜く、見ていられなかった。
「お、聡じゃん。」
そんなことで悩んでいるとは知らず、健が喫煙所に入ってきた。
「健か。」
「なんだよ~。不服そうだなぁ」
巨体から繰り出されるツッツキに、身体は耐えられずバランスを崩してしまった。
普段ならこんな事をしてこない、テンションが振りきった健を見ていると、むずがゆくなった。
「なんか、健くん機嫌いいね?」
「ん~?そんなことないと思うけどなぁ」
あまりにも、聞いてほしそうな表情を見せつけくる。
「はやく、教えてよ」
「実は、琴音と」
「琴音と?」
「しちゃった。ははは」
待っていました!と言わんばかりのテンションで、いつもよりも早口になりながら答えた言葉は、
大人になれば、主語がなくても誰にでも意味が通じた言葉だった。
僕が知らない間に、ただの“安堵”としての関係だった集まりは、
ドロドロの欲望が詰まった沼に変わっていた。
「えぇ!!まじか!もっと聞かせろや!」
対して興味もなかったが、あまりにも喜んでいる彼を盛り下げるなんてことできず、
納得できない言葉ですら、飲み込んで肯定するしかできなかった
彼にとっての最高の経験談は、
僕の貴重な休憩を超え私生活までもぶち壊した。
―数日後
タコパをするために、また4人で集まることとなった。
裏で起きていたことを知ってしまった僕は、複雑な気持ちで参加していた。
「わ~い!今日はロシアンルーレットしよ!」
「いいね~楓ちゃん!」
「私、初めてやるんだ!すっごい楽しみ!」
女性どうしで楽しそうな会話をしていた。
先週までは、微笑ましい空間に思えた映像は、ノイズが邪魔して情報が何も掴めなかった。
「琴音~。それ、食べさせてよ~」
「いいよ~。あ~ん」
楓ちゃんと僕なんていないかのように挑発的にイチャつく2人。
段々とエスカレートしていく行為は、楓ちゃんの視線には映らないようになっていた。
その日食べたたこ焼きは、全部同じ味がした。
「あ、帰らなくちゃ!」
「まじか~。聡送ってあげてよ。俺眠いわ~」
健は、楓ちゃんを前よりも雑に扱うようになった気がする。
そして、僕のことも。
人生が上手くいっている彼は、きっと自分を王様だと勘違いしてしまっている。
「聡!送って!」
「はぁ、しょうがないなぁ」
場の雰囲気が凍るのが怖かった僕は、何も気にしていない素振りで
送るのを受け入れた。
「あ~、楽しかった!」
「ほんとだね。」
「今、人生で一番楽しい!」
楓ちゃんは素直に、あの場を楽しんでいた。
僕だったら、少し恥ずかしく思える素直で嬉しい言葉は、
ゆっくりと胸を締め付けていった。
「楓ちゃんは、あの二人距離近い嫌じゃないの?」
「え?」
「いや、ちょっと気になってさ、、」
明るさは消え、空気が重くなる。
「健君、怒っちゃうの怖いから。言えないな。」
「怖いか。」
「けどね。楓のこと愛してくれているから。大丈夫。」
ピコん―。
考える暇を与えぬように、一通のLINEが届く。
“してるから、戻ってこないでね”
健からだった。健は人を監視役に使い、スリルを味わっていた。
吐き出してしまえば、楽になれる。が、全てを壊してしまう状況。
僕には、誰かを捨てる勇気も、救う勇気も何も持てなかった。
「聡!今度、テーマパーク行こうよ!」
「そうやな。行きたいね。」
何も知らない無邪気な彼女の笑顔。
それを見た時、
息を吐くことを忘れ、肺に空気が溜まっていく。
息とともに身体に入る罪悪感は、”何もできない自分”を
身体中へ運び染み渡らせた。
「大丈夫?、、、」
「う、うん。」
「じゃあ、来月ね!」
もう、この渦の中で苦しみたくない。
それだけしか頭には残っていなかった。
次の日、僕は職場を去った。
世間一般的には、あまりいい印象を持たない“退職代行”を使った。
LINEを1通送るだけで
―完了しました。
と、1通。連絡が届き、退職が決定する。
とても便利なものだが、自分でも良い選択ではなかったと思う。
仕事にもやりがいを感じず、プライベートでも窮屈な思いをするこの職場は
残っている“理由”なんてもの思い浮かばなかった。
僕にはこれしかなかったのだ。
仲のいい同期、優しい職場環境、慣れてきた街。
とても居心地の良い環境だった1年にも積もる時間。
それを、一時の感情で全てを崩してしまい、職と友人、家までも失う僕は、
不安に襲われていた。
“楽”なんてものは、年を重ねれば、“責任”に変化していく。
ピコピコ。
一通のLINE。
“もう耐えられない。助けて。”
苦痛の叫び。琴音からだった。
やっぱり、幸せとは長く続かないようだった。
なかったことのように、そのメッセージを非表示にした。
―数年後。
転職をした僕は、職場の人と一定の距離感を保っていた。
「今日、タコパしよ!」
休憩室で、新入社員たちが楽しそうに話していた。
男2女2の、どこかで見たような集まり。
1人の男が、2人の女の子にボディタッチをしていた。
満更でもなさそうな2人を、不機嫌に見つめる男。
「そんなん、やったら3人で遊んだらええやん。」
「一生、嫉妬して苦しんで死ね!!」
あまりにも強気な言葉に思わず、声を出して笑ってしまう。
「お前が嫉妬しとるんやろ!孤独に生きろ~。」
負けじと返す王様君。その周りの女も嘲笑う。その場を去る彼を見送り、僕は駆け足に歩き出す。
王様君の前で、何もない地面に足を引っかける。
手に持っていたコーヒーは宙に舞い、この世をなめ切った彼らのにやけ顔、
そして、自分を表現している服に降り注ぐ。
「あっつ!」
「ごめんなさい!急いでるんで!」
王様君は、もたついていたが、自分でもおかしくて笑える理由で、その場を去った。
不機嫌な男に追いつき、思いっきり、後ろから背中を叩いた。
「ありがとな!すっきりしたわ!」
「え?」
「きみ、かっこ良かったで!」
何が起きたかなんて、知るわけもない彼は
そう言い残し去る僕を、不気味そうに見つめていた。
その顔ですら、面白おかしく見えてしまう。
「あぁ、やっと出ていった!」
死にたくなるほどの苦痛を忘れさせるのは、ほんの数分。
それだけで十分だったらしい。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
1人でも、読み切った方がいらっしゃることを願っております。
私事ではありますが、最近人生が上手くいっておりません。
まだまだやれる。と自分を鼓舞する朝と、
これから先まっくらだ。そう思ってしまう夜を繰り返しています。
重たいなぁって思いますよね。私も思います。
けど、それを受け取って楽にしてくれる。
そんな素敵な人が、世の中にはいらっしゃいます。
今回の作品では、その
”重さを受け取り過ぎた優しい人”を、この作品で表現したかったのです。
優しい人は、突然行動するように見えます。
けど、実は長い間考えて、苦しんだ結果産んだ行動でしょう。
僕たちは、その選択を間違っているとは思わないし、
優しさを知っているからこそ否定など出来ません。
だけど、
もっと周りにアホだと言われるくらい
異端者だとけなされるくらい人に迷惑をかけて、
対話して欲しいと思います。
それを、しないで飲み込んでくれるから優しい人なんですけどね。
私は、優しい人の重さを投げ捨ててやれる。
そんな人間でいたいものです。




