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チョコミント蔓延るショッピングモール(4)

 チョコミント。

 チョコミント。

 チョコミント。


 チョコミント?


 これは……、チョコミントセンサー?

 なぜ、急に……。

 そういえば最近チョコミントセンサーが発動する機会が減ってチョコミント。

 水戸さんが発するチョコミントパワーが強すぎてかき消されているのかとチョコミント、もしや俺のチョコミント受容体が成長してチョコミント?

 いや、そんなことより……、このチョコミントは一体……?

 俺はチョコミントセンサーの示すままに顔をチョコミント。

 そこにあったのは一枚のポスター。


「チョコミント……、アイス……、移動販売……?」


 西側の入り口から出たところにチョコミントアイスの移動販売車が来ているそうだ。

 俺は自分の財布を思わず確認した。

 いくら入っていただろうか。


 いや、そういうことか……。


 なるほどな、水戸さんめ……。

 正確に言わなかったな?

 水戸さんは服屋に入っていない。

 正確に言えばその直前までしか行っていない。

 彼女はその周囲でこのポスターを発見し、思わず自分の財布を確認しようとした。

 だから財布が無い事に気が付けた。

 次に本屋と駄菓子売り場を往復した件だ。

 これも検討はついている。


 恐らくだが、水戸さんは例のミステリー小説を()()()()のだ。


 角にあったそれが買われていた。

 同調圧力に負けない精神性なのかと思ったが、落としてしまったから買ったとすれば辻褄があう。

 落としてしまい、戻して駄菓子売り場へと向かったがやはり気になって戻って来た。

 そう考えるのが妥当だろう。


 そしてその真偽はどうだっていい。


 一番重要なことは財布がどこに落ちているか、だ。

 可能性が高い場所、それは本屋だ。

 本屋のブックカバー売り場。

 そこにはレザー製のブックカバーもあった。

 もし、水戸さんの財布と同じ材質の物があったとすれば……、埋もれてしまう可能性は十全にある。

 さらに水戸さんがミステリー小説を買いに来た際、店員は品出しをしていた。

 彼女に気を取られて財布の上からブックカバーを置いてしまったとすれば、高確率で財布は本屋にある。


「すみません! ブックカバーの下、見てもいいですか?」


「え? ああ、いいですよ。財布を探しているんでしたね」


 ブックカバーの棚を見る。

 財布が埋もれているようには見えない。

 取り敢えず商品をどかしてもらう。

 だが、それらしきものはどこにもない。


「なんだ……? もう考え得る可能性は出し尽くしたが……」


「あ、あの! すみません!」


 そこで突然後ろから話しかけられた。

 その声の持ち主は中学生らしき人物。

 彼は自分の買い物かごを指さした。


「あの、もしかしたらこれを探していますか……?」


 そのかごに入っているものはブックカバーによく似た財布。

 しかし財布らしい厚みがしっかりとあり、中には千円札が数枚入っていた。


「こ、これをどこで……?」


「え、えっと、僕はここで二時間くらいいたんですけど、一時間前くらいにこのブックカバーが欲しくなって、かごに入れたんです。それでなんか今騒ぎを聞きつけて……」


「なるほど、確認したら財布だったと」


「はい……。これ、どうぞ。すみません。僕がこれを取らなければもっと単純だったかもしれないのに……」


「落とした方が悪いから大丈夫だ。……君、チョコミントは好きかい?」


「え、まあほどほどに……」


「あとでチョコミントアイスを奢ってやろう」


「い、いや……、悪いですよ……」


「俺からの感謝だと思って。こういうのは受け取っといて損はないぞ。日本だし」


 そんなこんなで俺は水戸さんの財布を手に入れた。

 さて、どうやってこれを水戸さんに届けようか。

 これ秘密で動いてるんだよな。

 取り敢えず中学生君へとチョコミントアイスを奢るため、俺はチョコミントアイスの移動販売車へと向かった。



――――


 迷子センターへと向かうため、水戸 千代は一階へ降りるためのエスカレーターに乗っていた。

 その右手には迷子になっている子供がおり、しかしその目は迷子センターでは無い場所を向いていた。


「ねぇコウタ君、どこを見てるの?」


「え、えっとね。ぼく、チョコミントアイスが好きで、チョコミントアイスを食べるためにここに連れてきてもらったの……」


「な、なるほど……」


 水戸 千代は最近チョコミントが好きな同級生に付き合ってくれと言われたばかりであるため、複雑な心境である。

 だが、子供の真剣なまなざしを見ているだけというのは彼女のポリシーに反する。


「じゃあ、あそこの移動販売車に行ってみよっか」


「え!?」


「だって、コウタ君と一緒に来た人もそこにいるかもしれないもんね」


「た、たしかに……」


「それじゃあ決まり!」


『え、ちょっとまって!』


「花夜ちゃんは先に迷子センターまで行って来てくれる? 待ってる人がいたら連絡して?」


『ふざ――』


 水戸 千代は電話を切った。

 彼女らはチョコミントアイスを求めるのであった。



――――


 一階で、四道 克徹は問題の同級生と話していた。


「それで、弟とはぐれちゃったのよ」


「そ、そうか……」


 彼はどうにかして彼女を迷子センターから遠ざけることを考えていた。

 その小さな脳みそからひねり出した回答。


「そうだ、弟さんが行きそうな場所ってどこだ?」


 それがこれだ。

 普通であればよかっただろう。


「あぁ……、今日ってチョコミントアイスの移動販売車が来てて……」


「よし、そこに行ってみよう。迷子センターなんていつでも行けるしな」


 二人の思惑は異なれど、しかし目的は変わらず。

 彼らはチョコミントアイスを求めるのであった。



――――


 三組のチョコミントアイスを求める者たちが集う。

 問題は、まだ一つも解決していない。

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