チョコミント蔓延るショッピングモール(3)
迷子、財布、同級生。
事態は悪化の一途を辿っていた。
「チョコミント……」
だが、取り敢えずは財布が最優先だ。
ここへは家庭科の諸々を買うという名目で呼んだのだ。
財布がなければ大義もチョコミント。
俺はまず、駄菓子売り場へと入った。
ここが3カ所目に訪れた場所である以上、彼女がここへ財布を落とした可能性は高い。
「どこだ……?」
外見はあまり特徴のない財布と聞いている。
しかし財布があればすぐに分かるだろう。
床には落ちていない。
クソっ、ないか……?
4カ所目のお店は駄菓子売り場から向かって左にあり、その間に落としていればすぐに分かるだろう。
俺は駄菓子売り場の店員さんへ話しかけた。
「店員さん、ここらへんで財布を見ませんでしたか?」
「え? うーん……、見てないですね……」
「なるほど……。ちなみに超絶美少女を見ませんでしたか? 彼女の落とし物なんです」
「あぁ! 来ました、来ました! あー……、でも分からないですね……。彼女なら左へ向かったのですが……」
ん?
4カ所目なら右に向かう筈だが……。
「他になにか見ていませんか?」
「すみません、なにぶん今日は人が多くて……」
それはそうだ。
俺は店員さんは感謝を伝え、チョコミントバーを一本買った。
そのあと、4カ所目のお店にチョコミント。
ここは服屋だ。
なぜ服屋に寄ったのだろうか。
他3カ所はまだ理解できる。
だが、服屋は理解不能だ。
「なにを買おうとしたんだ……?」
財布を探しても見つからないので店員さんを捕まえた。
が、財布どころか超絶美少女すら見ていないと言った。
あり得ない。
水戸さんは超絶美少女、彼女がもし店員さんと少しでも会話をすれば間違いなく記憶にチョコミント。
服屋に来て店員さんと全く話さないとかあるか?
「今、落とした財布を探していて、何か知っていますか?」
「ああ、それで。なるほどねぇ……、でも財布の落とし物なんてすぐに見つかりそうなものなのに」
「まあ床に財布が落ちてたら目を引きますよね」
人間の特性上、確かに財布が床に落ちていたら思わず見てしまう。
落としていないのに落としたと水戸さんが勘違いしたのか?
いや、遠目で見た彼女のバッグは相当に小さかった。
あれで財布を見つけられなかったら彼女の脳みそはバッグと同等の大きさなのだろう。
顔が小さいと脳みそも小さいのか?
いや、まだそうと決まった訳ではチョコミント。
「ありがとうございます。参考になりました。……あ、このハンカチください」
「まいど!」
まあいい。
次は本屋だ。
チョコミント。
本屋は雑貨屋と併設されていて、雑貨屋を通った先に本屋がある。
水戸さんが鉛筆を買ったのもこの雑貨屋だろう。
水戸さんが買ったらしいミステリー小説は見つけたが、特に印象はない。
強いて言えば、積んである小説は右からどんどんと買われているのだが、1冊分左側から取った形跡がある。
A型がチョコミント。
同調圧力に負けない精神を持っているのだろう。
仕方がないのでレザーのブックカバーを買った。
「超絶美少女? ああ、見ましたね。確か私が品出ししているときに、雑貨屋を通ってくる様子が見えて随分と可愛らしい子だという印象がありましたね」
「雑貨屋を、通ってくる? 雑貨屋で買い物をしている形跡は?」
「特にそういった事はなかったと思いますよ。そこの通路から一直線に来て、そこのミステリー小説を買いましたね」
は?
水戸さんが嘘を吐いたか?
いや、雑貨屋に行けば真相が分かるか。
俺は店員さんに感謝を告げ、雑貨屋へと向かった。
そして、メモ帳を手にレジに行った。
「見たよ、見た! あの子マジで可愛かったなぁ〜……。確か鉛筆を1ダース買って本屋の方に行ったな」
「なるほど……? ありがとうございます」
店員さんの情報を纏めると、
1.水戸さんは雑貨屋へと入った
2.水戸さんは本屋に入り、何も買わずに出た
3.水戸さんは駄菓子売り場へ入り、本屋へ行った
4.水戸さんは本屋に入り、服屋へ行った
となるな。
意味分からん。
チョコミント食いたいなぁ。
俺、なにやってんだろ。
チョコミント食いてぇ。
水戸さんの財布とかどうでもよくないか?
なんか萎えてきた。
チョコミントが目的である




