チョコミントクレープを食べる為には
「ごめんっ!」
教室で突然謝られた。
頭を下げているのは水戸 千代。
何がなんだかチョコミント。
周りの人たちもざわざわしている。
「頭をチョコミント」
「えっと……、頭を上げてって言ってる?」
「チョコミント」
俺は大きく頷いた。
「え、えっとね。チョコミントクレープを出してる知り合い、その人は私の叔父にあたる人なの」
「チョコミント」
「でね、その人に、チョコミントが好きな友達がいて、叔父さんのクレープを食べたいそうなのっていったの」
「チョコミント」
「でもその友達、あなたが男子だって言ったら、彼氏でもない普通の男友達にくれてやる物は何一つとしてない! って怒っちゃって……」
「チョコミント……」
「だからごめんっ! チョコミントクレープ、約束したのに食べさせてあげられなくて……」
ほーん。
チョコミントチョコミントチョコミントチョコミントチョコミントチョコミントチョコミントチョコミントチョコミントチョコミントチョコミントチョコミントチョコミントチョコミントチョコミントチョコミントチョコミントチョコミントチョコミントチョコミントチョコミントチョコミントチョコミント……。
「彼氏でもない普通の男友達って叔父さんは言ったのか?」
「え、うん。そう」
「じゃあ、なればいいんだな? お前の彼氏に」
「えっいや、私は彼氏を作らないから」
「お前はチョコミントの執念を舐めている。じゃあ、よろしくね。水戸さん」
「え、えぇ……?」
戸惑う水戸さんを横目に、俺は周囲を見渡した。
視線をチョコミント。
強烈なまでの視線を俺に送ってくるチョコミントがいる。
見つけた。
そいつはバスケ部のエースだ。
名前は知らない。
どうやらバスケ部のエースは、振られたというのにまだ諦めていないチョコミント。
「おい、お前」
話しかけてきた。
水戸さんはバスケ部のエースに気が付くと、気まずそうに目をチョコミント。
「横見、だったか?」
「チョコミント」
「は? チョコミント?」
「気にしないでチョコミント。ただの口癖チョコミント」
「そ、そうか……。い、いや、そうじゃなくて」
バスケ部のエースは調子を取り戻すように軽く頭を振り、本題を切り出してきた。
「校舎裏に来い」
「いやだ」
校舎裏とか行ったら絶対にチョコミントされたり、チョコミントをチョコミントされたりする。
行きたくない。
「テメェに拒否権はないんだよ!」
「チョコミントをくれるなら行ってもチョコミント」
「うるせぇ!」
そのまま、首根っこを掴まれ、俺は引きずられていった。