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総転生世界 〜Everyone Reincarnated~  作者: ful-fil
インターン ここは砂と岩の農場

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砂漠の冷凍冷蔵庫③

 前方に雪だるま軍団、やつらはそれぞれが槍などの武器を構えていた。

 後方に機械化巨大蟻(仮称スチームアント)軍団、こいつらも侵入者に気づいて臨戦態勢に入っていた。

 そしてどこからともなく聞こえてきたのは伝声管でも通したかのようなエコーのかかった人の声。


『あー、あー、侵入者に告げる。命が惜しければただちに降伏しなさい』


 前後を百匹以上の魔物に挟まれて、その魔物がネズミサイズならいざ知らず人間大となると、冒険者3名錬金術師1名の即席パーティーでは勝ち目がない。

 魔物の群れに飛び込んで無双?

 そんなの勇者でもないと無理。

 ここにいるのは平凡な農業アルバイト冒険者にすぎない。

 ジェレマイアさんの『なぎはらえ~』でなぎ払う?

 雪だるま軍団か、スチームアント軍団か、どっちか片方ならなぎ払えるかもしれない。

 だけど両方同時は難しい。

 片方をなぎ払ってるうちにもう片方がバックアタックしてくるだろう。

 両方をいっぺんになぎ払うには両者の属性が違いすぎる。

 氷の魔法で攻撃したら冷気に強そうな雪だるまが生き残るだろうし、炎の魔法で攻撃したら熱に強そうなスチームアントが生き残る。

 色々なことを一瞬で考え合わせたのだろう。


「降伏する」


 ジェレマイアさんは即座に両手を挙げた。


「仕方ない」

「おやっさんがダメなら俺たちじゃどうにもならん」


 ロレンスさんとマーティーさんも武器を捨てて両手を挙げた。

 それを見て俺も両手を挙げた。

 ハルバードも捨てたよ、もったいないけど。


 そして俺たちは蟻と雪だるまに連行された。

 来た道とは別のどこへ続くかわからない通路を。



 キャベツ、レタス、ニンジン、トマト、ピーマン、キュウリ、インゲン、パセリ……。


 まるでスーパーの新鮮野菜コーナーのようだが、もちろんそうではない。

 食料貯蔵庫と思われる一画を通過しているのだ。

 通路から見える小部屋は野菜でいっぱい。

 誰のための食料なんだろう。

 雪だるまは野菜食べないよね。

 スチームアントが食べるのかな。


 野菜コーナーを通過したら、次は食肉と魚介類の貯蔵庫だった。

 どれもカチカチに凍っているようだ。

 ここの気温は冷凍庫並みなんじゃないだろうか。

 俺たちはジェレマイアさんの魔法のおかげで寒くないけど。


 食肉と魚介のコーナーを通り過ぎ、『チーズ保存庫』『ワイン保存庫』『中央制御室。管理者以外立ち入り禁止』『調理室。高温注意。雪だるま入室厳禁!』などと書かれたプレートの付いたドアをいくつも通り過ぎ、たどりついた先は荘厳な氷の宮殿みたいな広間だった。

 正面の玉座みたいな所に女性が一人腰を下ろしている。

 その女性はおもむろに立ち上がり、ほっそりした体の重心を少し傾け、上体を捻り気味にポーズを取った。

 ファッションモデルみたいな魅せる立ち方だ。


「初めまして、侵入者の皆さん。私はこの迷宮の女王ナターシャ。雪と氷のダンジョン、クリスタルパレスへようこそ」

(ヒソヒソと)「このダンジョンってそんな名前でしたっけ?」

(ヒソヒソと)「うんにゃ。公式名称はD-431テラロッサマウンテン、通称は『赤い山』だな。冒険者ギルドの求人も『勤務地:赤い山』で出したぞ」

「そんなダンジョン管理番号や登録名なんかはどうでもいいのよ!」


 俺とジェレマイアさんのヒソヒソ話をナターシャさんが聞きとがめた。


「どうせ地上部しか見てない人が適当につけた名前でしょ。地下はこの通り氷のダンジョンなんだから『赤い山』じゃ似合わないわ。地上は猛暑で地下は氷温。それが私のクリスタルパレスよ」

「氷を水晶に見立ててクリスタルパレスとは安直なネーミングじゃのー」

「『赤い山』だって安直じゃないの!」

「分かりやすさは大切だ。変に気取るのがよろしくない」

「美意識が欠如してるようなドワーフに言われたくないわね!」


 ヒートアップしていく二人の会話。

 ジェレマイアさんに悪気はないのだろうが、ナターシャさんとはそりが合わないようだ。

 忘れているのかもしれないが、我々は雪だるま軍団に連行されてきた捕虜であり、ナターシャさんはその雪だるま軍団のボスと思われる人物である。

 口喧嘩してる場合ではないと思う。

 なので仲裁気味に声をかけてみる。


「あのー、そろそろ事情を説明してもらってもいいですか? なんならこっちから説明しますが。怪しいものではないとか、地面に穴が開いたから入ってきちゃっただけだとか、その辺りのことを」


 ぎゃいぎゃいと言い争っていた二人はハッとした顔になった。


「そ、そうね。侵入者なのだから取り調べが必要よね」

「侵入者ではあるが不審者ではないということを証明する必要があるな」


 認識のすり合わせって大事だね。


「正式な名称については後で話し合いましょう」

「了解した」


 そこにこだわるんかい。

 ダンジョン名なんか何でもいいのに。

 今まで潜ったダンジョンも安直な名前(近くの森)か変な名前(バカ島)ばっかりだったし。

 適当に決めちゃえばいいのに。

 『クリスタルパレス』か『赤い山』かでもめるんなら……。


「間を取って『クリスタル山』か『赤いパレス』でどうでしょう」

「「却下」」


 即座に二人で一つの返事。

 実は気が合うんじゃないの、この二人。

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