サボテンの花咲いてる砂と岩のダンジョン⑤
ずももももっ、と赤い地面を突き破って出てきた緑色の触手のようなもの。
それは太くて硬そうで少しトゲトゲしていて、無秩序に、だが概ね放射状に延びていく。
…どこかで見たような色とフォルムと質感だ。
なんかこう、サボテンに似ているけどサボテンじゃないような、食品ではないけど食べ物っぽいような…なんか前世でこういうの見たような気がする、喉まで出かかってるんだけど思い出せない、そんな感じ。
その緑色の触手のようなものはずんずん巨大化していく。
「クソッ、おやっさんがまた雨降らせたぞ!」
「予告なしにやるなっつーの、クソボケが!」
小屋で作業中だったスタッフが作業を中断し、てんでに武器を持って駆けつけてくる。
手にしているのは大剣や大鉈、デスサイズ(死神が持ってるタイプの大鎌)など。
巨大な刃物を振るって緑色の触手っぽいものを切り刻み始めた。
その手際の良さといったら。
瞬く間に触手っぽいものがスライスされて減っていく。
「ジェレマイアさん、あれはいったい…?」
「うむ、乾燥地に適応した植物モンスターでな。普段は土の中で休眠状態にあるが、一定の水分を与えるとこうしてたちまちのうちに芽吹き成長し、超短期間で開花結実までするという優れものなのだ。その名をアロエ・ギガンティカという」
「それだ!」
そうそう、それそれ、アロエだよ、アロエ。
なんかどこかで見たと思ったら、おばあちゃんちの鉢植えアロエとそっくりだ。
やたらと大きくて樹齢百年の銀杏の木くらいのサイズ感だけどね。
「アロエは体にいいと前世では聞いてましたが、こっちの世界でもそうなんですか?」
「うむ、薬草として優秀だな。錬金素材としても使い勝手がいい。魔物なので冒険者でないと刈り取れないのが玉に瑕だな」
アロエは魔物だったのか。
「ということは今そこで闘っている人たちは冒険者なんですね」
「うむ、場所が場所だけに一般人では危険なのでな。収穫作業員として冒険者を雇うことにしている」
アロエ・ギガンティカはもう半分くらい削られている。
冒険者側も少しダメージを受けているように見えるのは気のせいだろうか。
あ、吹っ飛ばされた。
アロエの触手? 枝? なんと呼ぶのが正しいのか分からないけど、幹から伸びてる長い物で冒険者が弾き飛ばされた。
アロエ結構強くない?
「冒険者の人たち大丈夫なんですか? 一人吹っ飛ばされましたけど」
「ポーションは山のようにあるから即死でなければ問題ない」
即死だったらダメじゃん。
「アロエ・ギガンティカには毒はない。単純に殴られたら痛いだけだな。打撲くらいならポーションですぐ治る。おまえさんもちょっと行ってやってみるか? ん?」
「武器が棒とスリングなので、巨大植物にはちょっと…」
巨大アロエを棒で殴ってもクラーゲンの時と同じでダメージが入らない気がする。
やっぱり斧とか鉈とか、斬り属性の武器を買うべきか?
「んじゃその棒ちょっと貸してみ。それちょちょいのちょいと」
「えっ?」
ジェレマイアさんは俺のメイン武器である棒をひょいっと取り上げて何やら細工をした。
それはもう本当に一瞬の早業で止める暇もなかった。
2、3度瞬きしたらもうそこには『先端に刃物が生えた棒』があった。
棒が、棒が……柄の長い斧みたいになってる!
これはもしやハルバードというものか?
「錬金成功~。これで存分に戦ってきんしゃい」
「きんしゃいって、これ一応魔法武器だったんですけど、改造されて付与消えたりしてませんよね?」
「大丈夫、大丈夫。改造料金も取らん。サービスにしとくから」
「そういう問題じゃないんですけど? いえ、改造自体は嬉しいですけども!」
俺の忘却の棒が一瞬で魔改造されてしまった。
恐るべし錬金術師。
もしも忘却の棒から『忘却』の効果が消えてしまっていたなら、ただのハルバードになってしまう!
…いや、使い勝手の良くない魔法は消えてもいいのか?
魔法武器がただの武器になってしまったら、という辺り、ロマンの観点では損なのだが、実用性という観点ではお得な気がしてきた。
なにしろハルバードは強力な武器だ。
そしてお高い!
金額的にはめちゃくちゃお得。
もちろん魔法が消えてなくて、忘却の棒から忘却のハルバードに進化したなら言うことはない。
「ささ、サクッとやってきんしゃい」
「だからきんしゃいってどこの方言なんですか。まあやりますけども」
最弱でも冒険者である以上、魔物を前にしてアタックしない理由はない。
ハルバードが手に入ったとなれば尚更だ。
敵はアロエ・ギガンティカ。
アーウィン、いきまーす!




