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総転生世界 〜Everyone Reincarnated~  作者: ful-fil
インターン ここは砂と岩の農場

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サボテンの花咲いてる砂と岩のダンジョン④

 風に吹かれて枯草の塊が転がっていく。

 それをなんとなく目で追ってると、小型のつむじ風が砂を巻き上げてくるくる回っているのに気づく。

 ここは乾燥地帯。

 つむじ風、サボテン、蛇やサソリなどの生物、蜃気楼、動物の骨、ひび割れた大地、旋回するハゲタカっぽい猛禽、遠くにオレンジ色の岩山。

 全体的に岩や土が赤いなあ。

 なんで赤いんだっけ。

 鉄分を多く含んでいるから?

 日本の山は青かったのに、ここでは山も足元の地面も何もかもが赤っぽい茶色だ。

 異国の景色だという感じはするけど、ファンタジー世界という気はしない。

 むしろよく知ってる感じ、実際に見たことはないけど、テレビの画面越しに見たことある感じ。


「なかなかの景色だろう?」

「西部劇の中に迷い込んだみたいな気分です」


 そう、ここはアメリカ北西部を舞台にした西部劇の景色にそっくりだった。

 ジョン・ウェインやクリント・イーストウッドが馬に乗って走り回ってそう。

 ただしモノクロじゃなく、どぎついくらいのカラーだけどね。

 すこーんと抜けるように青い空と赤い大地のコントラストが目に痛い。

 乾いた風に乗ってきた砂埃で鼻がムズムズする。

 俺はマントのフードを目深にかぶり鼻を隠した。


 俺はジェレマイアさんの依頼を受けて農業研修という名の短期アルバイトをしに来ている。

 依頼内容は農場での作物収穫だ。


「ここってダンジョンの中なんですよね?」

「うむ。あたかも屋外のように見えるが、実際には閉鎖空間でな。外の影響を受けない作りになっている。年間を通して安定した気候で、いわば巨大な温室。実験栽培に最適」

「でも乾燥してるし、魔物も出るんでしょ?」

「うむ。そこを嫌ってフラワーデザイナー連盟はここを使おうとしなかった。よって儂の独占状態だな」


 独占できても雨の降らない砂漠状態では農業に向かないと思うけど。

 ジェレマイアさんはそこら辺のデメリットを気にしていないようだ。


「天然の降雨がないなら人工的に降らせればいいじゃない。なんのための水魔法か」


 砂漠に水まくための水魔法ではないと思う。

 けどジェレマイアさん的には水やりのためにある魔法なんだろうなあ。


「魔物対策も魔法ですか?」

「いや、そっちは別だな。まあ見てなさい。百聞は一見に如かず。説明するより見せる方が早い」


 道なき道をトコトコ歩く。

 ちょっと歩いたところにそれはあった。


「こ、これは……!」


 農地とおぼしき四角く整理された地面を取り囲む、びっしりと並んだサボテンの行列。

 まるで有刺鉄線のように刺々しく背の高いサボテンが等間隔に整列している。

 それだけならまだいい。

 サボテンが一斉に振り向いたんですけど?

 幹っぽいとこに顔みたいな穴があるんですけど?

 めっちゃ見られてる気がするんですけど!


「あのサボテン魔物なのでは!?」

「魔物だとも」


 なぜかジェレマイアさんは得意げに胸を張った。


「乾燥地に適した天然の防御機構、その名も仙人掌カクタス樹魔トレントである。知能は低いが縄張り意識の高い植物モンスターであるからして、外敵、特に植物食の生き物に対しては激しく攻撃するぞ」

「それって人間も攻撃されるのでは!?」

「匂いで仲間を識別するので、サボテンフレーバーの香水を一吹きすれば問題なし。こう、しゅぱっとな」


 ジェレマイアさんは俺と自分とにフローラルな香りのする液体をスプレーでプシュッとかけた。


「本当に大丈夫なんですか。もしも匂いが取れちゃったりしたら」

「君も心配性だな。大丈夫、大丈夫。何かあったら儂の魔法で『なぎ払え~』ってするから」


 その軽そうな口調が今一つ信用できないんですけど!

 サボテンモドキの樹魔(トレント)達の視線を感じながら、俺はジェレマイアさんに付いて農場の中へと進んで行った。



 サボテンゾーンを抜けると管理用の小屋があり、スタッフらしき人々が作業をしていた。

 農地はというと……。


「なんにもないですね」


 がらんと何も植わっていない乾いた地面が広がっている。

 枯草も生えていないから、まあ、一応管理されてはいるのだろう。


「一見なにもないように見えるが、実は種が既に撒かれているんだなこれが」


 そう言われて目を凝らしてみるけど、よくわからない。

 そもそも畝もないんだけど。

 農地って普通、畝で縞模様が出来てるものじゃないの?


「前世日本の畑作と同じと思ってもらっては困る。こちらには農機具もエンジン付きの物はないからな。乾いた土は固いから手作業で耕すのは至難の業だし」

「それって開墾できないってことなのでは?」

「耕さなくても生える植物なら問題ない。忘れてはいかんぞ、ここはダンジョンだということを」


 嫌な予感。


「土が干からびて岩石のように固かろうとも、負けずに根を張るタフな植物であればよい。それすなわち植物モンスターなり。いでよ、エフェメラルプランツ! 雨雨降れ降れもっと降れ、Ας βρέξει」


 ジェレマイアさんが掌を上に向けて踊るようなアクションで呪文を唱えると、農地の一部にパーッと虹が差し、ザーッと5秒くらい激しい雨が降ってすぐに止んだ。

 地面に水たまりができたと思ったら、すぐに水が吸い込まれるように消えて、土がもこっと動いた。

 何かが土の下から出てこようとしている。

 緑色の触手のようなものが……。





・エフェメラルプランツ:短期間で花を咲かせ結実に至る植物の総称。春のまだ寒い時期に花を咲かせて1~2か月で枯れるスプリングエフェメラル、砂漠で種子休眠を続けて短い雨季の間に一気に成長して種をばらまくデザートエフェメラルなどがある。ジェレマイアが栽培しているのは砂漠に適応した魔物のデザートエフェメラル。その中でも傑出した超短期成長型植物モンスターで、水を与えた途端に爆発的に成長する。当然だが魔物なので人を襲う。

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