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総転生世界 〜Everyone Reincarnated~  作者: ful-fil
クライアント ここは暗闇の洞窟

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アーウィン 惨劇の真実、そして現実 

 『ま、いっか』じゃねーよ!


 明らかにおかしい。

 あの文脈だと、丸くなった『あの人』=『魔狩人デーモンハンター』。

 ミラーカさんが出会ってビビりまくってた相手といえばグレアムさん。

 すなわち『あの人』=『グレアムさん』=『魔狩人デーモンハンター』という図式が成り立ってしまう。

 見間違いの可能性はほぼない。

 なぜならミラーカさんは夜目が利く上に魔力が見える。

 魔力は指紋同様に個体の識別が可能なのだから、それが見えるミラーカさんが人違いするとは思えない。

 よって魔狩人デーモンハンターとグレアムさんは同一人物。

 だけどグレアムさんは自称『物理攻撃最弱』の回復特化だ。

 光の魔法連発はすごかったけど、あれは殺傷力は乏しいらしいし、人狼なんていう半ば不死身であろう化け物を撲殺できるとは思えない。

 その点が矛盾している。


 矛盾しているということは、どこかに間違いがあるということだ。

 俺はう~んと唸りながら考えたが、それ以上はわからなかった。



『ちょっと聞きたいことがあるんですけど』

『なんなりと』


 考えてもわからない時は近くにいるわかりそうな人に聞け。

 前世の新人教育で言われた言葉だ。

 俺は身近にいる『わかりそうな人』として銀猫亭の女将さんに聞いてみることにした。

 例によって筆談だ。

 別に俺は口でしゃべってもいいのだが、なんか楽しいので石板石筆で書く癖がついた。

 女将さんもどことなく嬉しそうだし。

 レッツ筆談タイム。


魔狩人デーモンハンターってご存じですか?』

『職業名としては。実在するかどうかわからない都市伝説のようなものです』

『見たっていう人がいるんですけど』

『それはありえません』

『と言うと?』

『法で裁けない犯罪者を処刑するので、実在するとしたら非合法な殺人者です。ですので魔狩人デーモンハンターは自分が魔狩人デーモンハンターであることを隠すのです。悪党を処刑する時は目撃者がいない所でやると言われています』

『7年くらい前に近くの町で人狼が殺されたと聞いたんですけど』

『血の惨劇事件ですね。ボーダーポートという町で明け方に不審な狼の死体が発見されたそうです。路上の広範囲に血痕が飛び散り、建物の塀や壁にも血の足跡が残っていたとか。狼の足跡なのに、二足歩行と思われる痕跡だったそうです』

『それ、魔狩人デーモンハンターの仕業ですよね?』

『そういう噂も囁かれていました。その直前まで行方不明者が相次いでいたこともあり、人狼による連続殺人が行われていたのではないか、という憶測も飛びました。証拠がなかったので噂は噂のままでした』

『もし魔狩人デーモンハンターが一般人に顔を見られたらどうなるんでしょうか』

『罪のない一般人を口封じに消すわけにはいきませんから、その町を離れて、別の町に行って別人として暮らすのではないでしょうか』

 ……。



 部屋に戻り、ベッドに寝転んで天井を見つめる。

 あれとこれとを結びつけると、どうしても一つの推論に達してしまう。

 7年前、ミラーカさんが目撃した人狼殺しの魔狩人デーモンハンターはグレアムさん…。

 

 だけどそんなことってある?

 あのグレアムさんだよ?

 フェアリーの群れから全力で逃げて、本音の毒舌トークで『おまえ運悪いな』とか言ってくる人だよ?

 人狼殺せるくらいの実力あるならフェアリーから逃げる必要ないじゃん!

 非力な聖職者の仮面の裏で、危険な連続殺人犯を、それも人狼を、撲殺してたとかそんなことって……!

 あんな人の良さそうな顔して!

 まあ、人が良さそうなのは上っ面だけだって知ってたけど!

 本音は結構過激だって知ってたけど!

 ポロっと漏れる本音では『勝手に殺し合え』とか『地獄に落ちろ』とか『命で払え』とか『灰になれ』とか……!


 ……。


 …?



「あ、やっぱグレアムさんだわ。うん、納得いった」


 すとん、と腑に落ちた。

 『そんなことある?』と訊かれたら『あり寄りのあり!』と答えよう。

 法の網をすり抜ける殺人鬼を闇に紛れて処刑する、いかにもグレアムさんがやりそうな事ではないか。

 なんで俺ありえないとか思ったんだろ。

 矛盾があるからか?

 自称『物理攻撃最弱』な彼が人狼を撲殺できた、という点だ。

 仮説としては二つ考えられる。


1・実力を隠していた


2・神聖属性の何か凄いアイテムでボコった


 以上、どちらかだと考えれば辻褄が合う。

 どちらが正解なのかはこの際どうでもいいことだ。


 ……そう、矛盾とかどうでもいいんだよ。

 矛盾してるからじゃないんだ。

 俺が真実から目を背けようとしたのは、信じたくなかったからなんだ。

 残酷な真実を認めたくなかっただけ。


「グレアムさん…こっち側だと思ってたのに。そんなかっこいい、ダークヒーローみたいな別の顔を持ってたなんて…」


 地味顔、平凡、目立たない、のフツメン仲間だと信じてたのに!

 ちくせう、グレアムさんの裏切り者ー!

 弱くてかっこ悪いの俺だけかー!

 俺だって弱いけど、グレアムさんよりは強いと思っていたのに…。


 やっぱり俺が最弱か。

 悲しい現実に一人悔し涙に泣き濡れるのだった…。

 第4章ひとまず完結です。

 次の章は主人公を少しは強化させないと。

 せっかく魔法の武器に気づいたのに、ろくに活用してないし。

 いつになったら初心者マークが外れるんでしょうか。

 作者にもわかりません。

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― 新着の感想 ―
アーウィンさんにとっての残酷な現実って、それか。 なんだかんだ言って平和な異世界。次は何をしでかすのか楽しみにします。
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