勝手に死んだな、っと
この海の主と戦って、ぼろ負けして、もう少しで死ぬとこだったからさ。
そう語った青年は爽やかな笑みを浮かべたままグラリと傾いた。
ザバーンと水しぶきを上げて、海に倒れる。
「大変だ、溺れますよ! 早く助けないと!」
「魚人や。水陸両用言うてたやんか」
「あ、そうか。じゃああれだ、ICU! どこかにありませんか!?」
「それを言うならAED。この世界にはないけどな。地球ちゃうねんからこういう時は薬草や」
「そうだった!」
冒険者ギルド直販、薬草ドリンクを昏倒した男の口に流し込む。
これは冒険者流の荒っぽい救命方法だ。
普通の地球人に同じようにやったら窒息する可能性があるから、良い子は真似しちゃいけないよ!
※
「いや〜、死んだかと思ったよ」
薬草ドリンクで意識を取り戻した青年はアハハと笑った。
体力消耗、疲労の限界だったらしい。
それなら死体浮きで休んでいればいいものを、エバちゃんの悪ふざけにカチンときて思わず立ち上がって説教かましてしまい、気が緩んだとたんに意識がブラックアウト。
薬草ドリンクを飲ませなかったらどうなっていたことか。
溺死はしなくても、水棲の魔物に食われたのでは?
迂闊というか、後先考えない人なのかもしれない。
「ところで魚人さん」
「ハリーと呼んでくれ。君たちとはもう友達だからね」
何時そうなった。
「ではハリーさん。この海の主と戦ったって言ってましたね」
「ああ、凄い戦いだったよ。今生きてるのが不思議なくらいさ」
「なんでまたそんなものと戦いに?」
「理由を聞かれるようなことかな?」
ハリーさんは小首をかしげた。
それ男がやっても可愛くないから。
「ここは海で、僕は海の男だ。主がいたら戦いを挑みに行くのは自然なことじゃないのかな?」
「……」
「……」
しばしの沈黙。
少し離れた所でコソコソと密談する。
「エバちゃん、エバちゃん、もしかして魚人って戦闘民族かなんかですか?」
「うちにもわからん。魚人なんて珍しい種族会うたの初めてやし。けどあの口ぶりからすると、自分から喧嘩ふっかけに行っとるな。海の主に」
「危ない人ですよね?」
「危ないやつやな」
「そんなことはないよ。誰彼構わず喧嘩を売ったりしないから。最強の座を掛けて主に挑んだだけだから」
「……」
「……」
二人の密談にいつの間にかハリーさんが混ざっていた。
人懐っこい笑顔で輪に入ってくるなよ!
こっちはあんたの陰口叩いてんだからよ!
気まずさ半分、警戒心半分でそ~っと離れようとした俺の肩を大きな手がガシッと掴んだ。
「この島の名物でも食べに行こうか。お近づきの印に僕がおごるよ」
あ、これ、逃げられないパターン……。
もう片方の手で同じく肩を掴まれたエバちゃんが遠い目をしている。
「バカ島名物……。おしまいや。うちらもう死んだな。短い人生やった」
なにそれ!?
エバちゃん何を言ってるの!?




