アーウィンの海岸物語
挿絵を入れてみました。MicrosoftCopilot生成。
海岸で若い二人がコイを釣る物語〜♪
「いや、おかしいでしょ。なんで海岸でコイが釣れるんですか」
「この海はちょっとおかしいねん。自分の釣り竿見てみ。金魚釣れてんで」
釣り針からコイにしか見えない魚を外しながら、エバちゃんが言う。
淡いピンク色がかった白地に赤い斑が入ったその魚はどう見ても錦鯉だ。
「コイも金魚も淡水魚のはずでしょ!? ていうか野生の錦鯉とか聞いたことないし。元々、人間が品種改良して生まれた生き物なのでは?」
「せやけどこうして天然ものが獲れてるやん。現実は受け入れなあかんやろ」
確かに俺の釣り針には金魚にしか見えない何かがかかっているけれど!
俺は黙ってそれを針から外し、海にリリースした。
夜店で金魚をすくった事はあるけど、釣ったのは初めてだ。
あまり嬉しくない経験である。
俺は今エバちゃんと磯釣りをしている。
最近エバちゃんを見かけないと思っていたら、突然、銀猫亭に釣竿を持って現れて、釣りに誘われたのだ。
『おニューの釣り竿や! 試しに行くで!』
そして連れてこられたのが、この岩場。
ザバーンと打ち寄せる波しぶきが塩っぱい。
ところがこの海、海は海でもダンジョンの中の海である。
近くの森とは別方向にある、割と人気の日帰りダンジョン、その名もグレートバカンスアイランド。
このダンジョン、地下に潜ったはずなのに、なぜか青い空と広い海が広がっている海浜型ダンジョンなのだ。
通称『グレ島』または『バカ島』。
……ろくな略称じゃねえな。
「水平線が見えるし、磯の香りがするし、カモメみたいな鳥が飛んでるけど、でもダンジョンの中なんですよね」
「せやな。青い空に白い雲が浮かんでるように見えるけど、実際には作り物や。古代のレジャー施設として作られた異空間やな。むやみに水に入ったらあかんで。水棲の魔物に引っ張られて溺死させられるで」
「なんでそんな危険な岩場で俺たち磯釣りしてるんでしょう」
「釣りは冒険者の必修スキルや。覚えといて損はない。釣った獲物は売れるしな」
売れる。
その一言でやる気が出てくる。
最近は近くの森でサクランボを集めたり、花の出荷作業を手伝ったりと、どうも地味かつ実入りの少ない仕事ばかりだったのだ。
ここは一発、高級魚を釣り上げようではないか!
「どんな魚が高く売れますか?」
「定番はクエ、ノドグロ、アロワナや」
「なんか食用と観賞用とが混ざってますけど? 淡水魚と海水魚は言うまでもなく!」
「なんでも釣れるねん、この海は」
そんな雑談をしているうちにも当りが来る。
エバちゃんの釣竿にはタイのような魚が、俺の釣竿にはクラゲがかかった。
「クラゲって食べられますかね?」
「うーん、どうやろなあ。毒があるかも分からんし。他のもん釣ったらええわ。それはそのへんにほかしとき」
針から外したクラゲを、ぺい、と岩の上に投げる。
新たな釣り餌を付ける。
「ところでこの釣り餌って何なんでしょう?」
エバちゃん持参の謎釣餌。
グミのような弾力のある短いひも状の物体で、乾燥状態だと微かに臭く、水に漬けるともっと確実に臭くなる。
どこかで嗅いだことのあるニオイなのだが。
「スライムの切干や」
「それだ!」
そうかスライムか。
やつらは雑食性だからか、潰すとたまにスルメのような匂いを発する。
どこかで嗅いだニオイだと思ったら、スルメのスメル、もといスライム臭だったか。
この臭いで魚が食いつくのかもしれない。
「大物こーい!」
スライムの切干を付け、釣り竿を振る。
小気味よく飛んでいく釣り針。
なんかこう、風を切る感触がいいよね。
ぼーっと釣り竿を持って海を眺めていると、妙なものが目に映った。
「……変な物が浮かんでませんか?」
「奇遇やなあ、うちもそれ言おうと思てたとこや」
プカプカ浮き沈み、波の間に間に見え隠れしている、それは…。
「人が溺れている……?」




