あばれるダンジョン①
挿絵を入れてみました。解毒剤を用意している会長さんのイメージイラストです。MicrosoftCopilot生成。
『偉大な悪魔』ね、なるほど。
……って冷静に観察している場合じゃない。
見るからに好戦的な雰囲気のグレーターデーモンは『よろしく』してくれそうな気配はみじんもなかった。
これはまさかのまるかじりコース!?
「これを見てもまだアパレルダンジョンって言える? 言えないよね!」
イゴール少年はドヤ顔だ。
「いきなりラスボス出しよった」
エバちゃん、苦いもの食べさせられたような顔。
「魔法が効きにくく、物理防御も高い。嫌な敵ね」
セシルさんが弓ではなく、ショートソードを構える。
「あいつはブレスを吐きますわよ! おまけに毒持ちですわ!」
花子さんがいかにも魔力ありそうな指輪をはめた手を一振りすると冷涼な空気の膜が味方全員を覆った。
「毒にやられたら下がりたまえ。解毒剤の用意はある」
医療会会長さんが小さなガラス容器を手に持ち、出口の前へとじりじり後退しながら言う。
「ここじゃあ俺は役に立てそうにないな。悪いが後ろで応援させてもらうよ」
厩務員倶楽部部長さんは静観の構えだ。
「皆さん頑張ってください!」
俺は部屋の隅っこで声援を送る。
必然的に前衛はセシルさんと花子さん、中衛にエバちゃん、後衛に会長さんと部長さんと俺という形になる。
イゴール少年が首を傾げている。
「女の子を前に立たせて男3人が後ろで応援? 君たちそれでいいの? 恥ずかしくない?」
「「「ない!」」」
戦闘力で分けたらこうなるんだから仕方ない。
俺なんかさくらの棒さえ持ってないんだよ。
グレーターデーモン相手に前に出られるわけがない。
「まったく、悪魔を舐めすぎだよ。ここがどこだか身をもって学ぶといいよ!」
「話せばわかるのにすぐキレるのは子どもの証拠、自分が偉いと思い込むのも子どもの証拠やで!」
エバちゃん煽る煽る。
イゴール少年の目が物騒な光り方をした。
「口数の多い女だな、まずお前がかかってこいよ。消し炭にしてやるから」
「真打は後から登場するもんや。先手譲ったろか? クソガキ」
一瞬の睨み合い。
「「死ね!」」
イゴール少年の放ったどす黒い火球とエバちゃんの杖から飛び出した白色の火球がぶつかり合い、互いにもつれ合い、押し合う。
それを合図にグレーターデーモンがセシルさんと花子さんに襲い掛かる。
左右に跳んで回避する二人。
実体のない歌姫、弾き手のいないピアノが物悲しいメロディを奏でる中、戦いの火ぶたは切って落とされた。
前衛の女性二人はセシルさんがスピードタイプ、花子さんがパワータイプだ。
セシルさんがグレーターデーモンをけん制し、隙を作って、花子さんが重たい一撃を叩きこむ。
花子さんの武器は熊手みたいなたくさんの刃が付いた長柄の武器。
浅層で使っていた高枝切りバサミはどこかへ置いてきたのだろうか。
もしかしてアイテムボックス的な物を持ってて、そこにしまっているんだろうか。
「破!」
掛け声と共にブゥンと振りぬく、その威力は当たれば人の骨くらい砕けそう。
しかしグレーターデーモンはくるぶしを刈られても倒れない。
「効いてる感じがしませんわ」
ぼやく花子さん。
その顔面を狙って振り下ろされるグレーターデーモンの腕。
ぎりぎり回避した、と思ったら蹴りの追撃、更に尻尾の一撃!
よけて、よけて、熊手で受け流して、と華麗に防御する花子さん、凄い、戦うフラワーデザイナーだ。
「弓技ならもっと効くのに!」
セシルさんが果敢に攻めるが、ショートソードが当たっても弾かれてダメージが入る気配がない。
ただ、ちょっとは痒いのか、ムッとした様子のグレーターデーモンがセシルさんにブレスを吐く。
いかにも体に悪そうな黒と紫が混じったブレスだ。
ひらりと身をかわすセシルさん。
うまく立ち回ってはいるけれど……得意の弓技が使えないのはここが狭いからだろうか。
逃げ回るにしても、室内だとアーチャーは分が悪い気がする。
会長さんがポツリと呟いた。
「広い所へおびき出すか?」
「そうしたいのはやまやまなんだが」
部長さんがボリボリと頭をかく。
「ドアが開かねえ。閉じ込められちまった」
「嘘! マジ!?」
慌ててドアノブをガチャガチャしたけど、本当に開かない!
接着剤で固められたかのように、ドアと壁が一体化している!
これはもしや、ボスを倒さないと部屋から出られないパターン!?




