アパレルダンジョン……?
無礼にもほどがある。
そう叫んだ少年の瞳の色が変わった。
血のような赤に。
室内が照明を落としたように暗くなる。
無人のピアノが悲しげな旋律を奏で始める。
どこからともなく女性の歌声が……。
……って、ホラーか!
「大体、来る客来る客、みんなアイテムしか合成しないからおかしいとは思っていたんだ。アパレル? ここをファストファッションの店かなんかだと思ってたの?」
「どちらかというと服地屋さんと洋裁店のコラボのように思ってましたわね」
「広く繊維製品を扱う卸売店のように思っていたが」
「ちっがーう!!」
少年が吠えた。
先輩たち、神経太いよね。
ホラーテイストな演出に1ミリも動じてないよ。
「ここは! 服地屋さんでも洋裁店でも繊維製品卸売店でもない! 悪魔系の魔物ばかりが出る、悪魔の館! 仲間にした悪魔を合体させて別の悪魔を作ることができる『悪魔合体の館』なんだよぉー!」
「おっと坊や。それ以上はやめとこうか」
厩務員倶楽部部長さんがやんわりと制止する。
うん、なんとなく危険な発言だったよね、主に領主と似たような方向性で!
具体的に何を意味するのかは俺にはちょっとわからないけどね!
イゴール少年の赤く染まった瞳がギラリと光った。
「なんで? なんでやめなきゃいけないの? 僕には理解できないよ。剣と魔法の世界に生まれ変わったんだよ? 悪魔に言われてみたいだろ? 『コンゴトモヨロシク」って!」
「言われたくないです」
悪魔によろしくされるのはお断りします。
怖いから。
「何? なんで言われたくないの? 『オレサマ、オマエ、マルカジリ』のほうがいいの?」
「それはもっと言われたくないです」
普通に嫌だろ、悪魔にまるかじりされたら。
「信じられない!」
イゴール少年は頭を抱えた。
「君たちには悪魔を愛する気持ちがないの!?」
「ありません」
「ないなー」
「ないわね」
「ありませんわね」
「ねえな」
「ないと答えておこうか。我々は邪教徒ではないのでな」
「信じられない!」
再び吠えるイゴール少年。
ボーイソプラノが金切声に近くなっている。
「妖精がいるんだよ? 精霊だっているんだよ? 魔獣も悪魔もいる世界だよ? なんで悪魔使いになろうとしないの? なるだろ普通!」
ならねーよ。
なる方がおかしいんだよ。
「せっかく悪魔使いになったのに! 悪魔使いの職業を世に広めようと、こうして悪魔合体の館も開業したのに! 誰も理解してくれないどころか、度重なる侮辱に、ショップ扱い! もう僕はキレたよ! これはキレていいところだよ!」
「あんた悪魔使いやったんか」
「そうだよ! これを見ろよ! 出でよグレーターデーモン!」
イゴール少年が身振りを付けて叫ぶと、空間に穴が開き、何か大きくて黒いものが出てきた。
全体のフォルムは直立二足歩行だけど、翼があって、角があって、尻尾があって……ってインプじゃないんだから。
でも形は似てるかも。
インプを数百倍に巨大化した感じのそれは禍々しくも凶悪な面構えをした獰猛そうな悪魔だった。




