アパレルダンジョン⑧
なんでもいいから入れちゃえ。
そう吹っ切ってしまえば後はもう脳みそ介さない脊椎反射。
パネルにポンと触れ、
『素材を』
音声にかぶせる感じで、手に持ってる物を空間に開いた穴に投げ込む。
あ、長すぎてつっかえた。
いいや、斜めにして入れちゃえ。
しばらくして作動音が……。
「ぶざけるなって言ったよねえ!!」
ものすごい速さで飛び出してきた。
俺が入れた『それ』を振り回しながら。
「なんでこれ入れたのかなあ!! 理由聞いてもいいかなあ!!」
「えーと、たまたま手に持ってたので。ゴミではないし」
「ゴミではないし!? それが理由!? そんな理由でこれ入れたの!?」
「まあ、はい、そうです」
「信じられない!!」
少年は目を見開いた。
「そんな」
絵にかいたような驚愕の表情。
「そんな馬鹿な」
よろり、とよろけている。
「そんな理由で『さくらの棒』を素材に入れる馬鹿がいるなんて……」
いいじゃん、べつに『さくらの棒』だって。
まだ傷んでないからゴミじゃないし、無くなっても惜しくない程度に安いし。
植物性だから繊維製品の材料にならないこともない…ような気がするし。
…やっぱちょっと無理があったかな?
少年、orz のポーズ。
「ひどい…」
そんなに悪いことしたのだろうか。
「最近冒険者が来なくなって暇してたから、久しぶりのお客さんだから、気合入れてサービスしようと思ったのに……蓋を開けてみたらこんな……」
ちょっと悪いことをしたかもしれない。
「なーなー、あんた何もん? 名前なんて言うん? うちは冒険者のエバちゃんて呼ばれてるもんやけど」
エバちゃんが謎の少年とコミュニケーションを図り始めた。
「名前……?」
「うん、名前。差し支えなかったら教えてんか?」
「名前……僕の名前はイゴールだ」
「イゴールくんか。ずっとここでアイテム合成してたん?」
「それは…うん」
「うちここでアイテムもろたことあるで。ありがとうなー」
「あ、うん、そう」
「なーイゴールくん、ちょっと色々教えてくれへんかなー。イゴールくんのこととか、このアパレルダンジョンのこととか」
「アパレルダンジョン?」
イゴール少年の顔に生気が、というか怒気が戻った。
「このダンジョンはそんな名前じゃないけど? 何それ。誰がそんな呼び方してるの?」
「誰がて皆そう呼んでるで」
「皆って!」
「町の人間も冒険者も。なー?」
同意を求められて、先輩一同がそれぞれ頷く。
「そうね」
「そう呼んでますわね」
「アパレルダンジョンが正式名称だと認識している」
「地図にもそれで載ってるしな」
「何それ信じられない!!」
イゴール少年は怒気をあらわに立ち上がった。
握った拳がプルプル震えている。
「大忙しで眠る暇もないくらいひっきりなしに注文が来たかと思えば、急に誰も来なくなるし、来たかと思えばゴミを入れてくるし! 挙句にダンジョン名を勝手に変更するとか! 無礼にもほどがある!」




