アパレルダンジョン④
シャボン玉を撃ち落としてアイテムを手に入れるという、子どもの遊びのようなシステムのアパレルダンジョン。
遊園地ならともかく、服を手に入れるのに射的!
どんだけ射的好きなんだ古代王国人!
いや、元々はこういうのじゃなかったんだろうけど!
管理精霊がバグったり、色んな経緯があっての今なんだろうけど!
大真面目にやってる冒険者の先輩達の絵面が酷い。
花子さん、あなたが手にしているそれは高枝切り鋏ですか。
何十メートル伸びるんですか、魔法の高枝切り鋏ですか、凄いですね。
ダンジョンとか冒険とかに抱いていたイメージがガラガラと崩れていく気がする。
初めて見た魔法の武器が高枝切り鋏て。
「アーウィン、ここんとこ見てみ!」
エバちゃんが呼んでいる。
「何ですかー」
ダレた気分で近づいていく。
あー、夢とロマンが欲しい。
「ここに付いてるこれな、こいつ倒さなあかんねん」
「うわ! 小悪魔ワンピに小悪魔付いてる!」
ちょっとビビった。
エバちゃんが持っているワンピースの襟に手のひらサイズのゴブリンみたいな生き物がへばりついている。
そいつには角と羽根と尻尾があり、盛んに周囲を威嚇している。
醜悪な顔した小さな悪魔。
これがインプでなくてなんだろう。
「これな、盗難防止のタグやねん」
「これが!?」
この世界の盗難防止タグは角と羽根と尻尾生やして人に噛みついてくるの!?
「元は精霊の仲間かもしれへんけどな。とにかくアイテムにくっついて攻撃してくるんや。うちら正式な客やないから、泥棒やと思われてんねん」
「まあそういう見方もできますよね」
冒険者がダンジョンのアイテムを回収するのに代金を払うわけがない。
「せやからこうして、『Υπνος』」
エバちゃんはインプ=生きた盗難防止タグを魔法で昏倒させた。
くたっと力が抜けたインプは床に落ち、ハッと目を覚ましたかと思うと、キョロキョロと辺りを見回し、最寄りの柱へ駆けていき、吸い込まれるように消えた。
「アイテムから引っ剥がすと設定がリセットされるんかな、任務忘れるみたいで、ああやって逃げてくねん」
「はあ…」
他の人達はどうしているかと周りを見ると、セシルさんは射落としたらしいドレスからインプを摘んで取って捨てている。
「嫌だわ、3匹も付いてる」
指でピンと弾き飛ばされるインプが憐れに見える。
彼らにしてみれば、代金を払わずに品物を持ち去ろうとする相手から商品を守る、言わば万引きGメンみたいな立場なんだろうね。
非力すぎて全然守れてないけど。
か弱いインプに同情してる間に先輩達は全員、欲しい物を手に入れたようだ。
「ほな今度は自分がやってみ」
「あ、いえ、服とか布とか興味ないんで」
「新人研修やねんから、あんたがやらな格好つかんやろ。なんでもええからやってみ」
と言われてもな。
服飾関係で欲しい物?
防具屋でブーツ買ったことはあるけど。
そこから思いつく物は……手袋とか?
俺は柱に手を当てた。
見様見真似で注文を出してみる。
「グローブ! なんか丈夫そうなやつ!」
ふわりとシャボン玉が出現した。
それをスリングで撃ち落としてみる。
ヒラヒラと落ちてきたそれは……。
「なんやそれ」
……軍手だった。




