アパレルダンジョン②
行ったことがない、ただそれだけのことに驚愕されたアパレルダンジョン。
どこにあるのかと思ったら、領主邸の敷地内にあった。
公務に用いられる公館と、領主一家の生活の場である本館とに挟まれた中庭、その一角に入口があるそうだ。
…プライベートスペースのすぐ近くじゃん。
これじゃあ大勢の冒険者が詰めかけたら騒がしくて迷惑だ。
警備上の問題もあるし、立ち入り禁止にしたくもなるよ。
むしろ今まで立ち入り自由だったのが寛大すぎたのでは?
エバちゃんたちはそうは思ってないようだ。
「ここ裏口から入ればすぐやねん」
「町の中心だから何かのついでに寄れるしね」
そんなお買い物ついでみたいなノリでダンジョンに入っていいのだろうか。
しかも領主邸の庭だというのに。
女性二人の図々しさについていけない小心者の俺。
すれ違う使用人らしき人々の視線が気になる。
すいませーん、先輩に無理やり連れてこられたんですー、俺は本当はそんなに来たくなかったんですー、すいませーん。
ダンジョン入口には一応、警備の人がいた。
衛兵っぽい身なりの男性が二人ほど、高速道路の料金所みたいな小さな建物に詰めている。
「入るでー」
小窓からエバちゃんが許可証を見せると、ざっとチェックされた後、入口ゲートを開けてくれた。
「探索は2時間まで。それ以上長引いたら罰金になるので気を付けてください。1時間経ったら鐘を鳴らします。鐘の音が聞こえたら引き返してください。アイテムの持ち出しには制限があります。通常アイテムは重量制限で一人10キロまで。レアアイテムは個数制限で一人1個まで。制限を超えた物はゲートの外に持ち出せません。違反すると罰金または5年以下の実刑になるので気を付けてください。1時間半を過ぎたら10分ごとに鐘を鳴らします。5回目の鐘が鳴っても出てこなかったら罰金ですから気を付けて」
細かい注意をされたが、覚えきれないので『5回目の鐘に間に合わなかったら罰金』だけ覚えることにする。
個数とか重量とか、捕らぬ狸を数えても仕方ない。
多すぎだったら捨てればいいんだし。
ゲートの向こうはぼんやりと青く光る魔法陣だった。
これは…もしや転移陣?
ファンタジーでありがちな、離れた地点を一瞬で移動するあれか?
ワオ!
アパレルダンジョンとか大して興味ないと思ってたけど、こういう『これぞ異世界!』みたいなギミックを見ると興奮してしまう。
魔法だ、冒険だ!
ワクワクしながら魔法陣に足を踏み入れようとしたら、
「こっちや」
エバちゃんに袖口を引かれた。
横手に地下へ降りる階段がある。
「え、そっち? あの光ってる所は?」
「あれは要らんアイテムをダンジョンに戻す時専用の落とし口、つまりダストシュートや」
魔法陣がまさかのゴミ捨て専用!!
なんとなく衝撃を受けつつ、俺は地下へと降りていく。
ごみ捨てに魔法使えるなら、人の移動にも魔法使ってくれたっていいじゃん…と思いながら。




