決起集会
『アパレルダンジョンを取り戻す』
そう誓い合った三人の美女(?)たち。
だがちょっと待った!
「武装蜂起はいけませんよ!」
逸る女性陣を諫めねば。
だって異世界だし、文明度低そうだし、民度低そうだし!
中世ヨーロッパ風と言えなくもない(元日本人ばっかで日本語通じるけど建物や町並みは西洋風)世界だし、領主とかいるし。
一揆を起こしたら首謀者は死罪かも!
「何言うてんねん」
エバちゃんが呆れ顔になった。
「うちら冒険者やで。元々武装してるがな」
言われてみれば杖とか弓矢とか持ってんな。
ソニアさんは丸腰に見えるけど。
そんなことはどうでもいい。
「えっと、じゃあ武装はそのままでいいんで、一揆はやめときましょう」
「あんた頭古いな。江戸時代やあるまいし、一揆て。誰もそんなんせえへんわ」
え、でも、アパレルダンジョンを取り戻すって。
領主相手に実力行使するって意味じゃなかったの?
「じゃあ何を?」
「団体交渉や」
エバちゃんは不敵に笑った。
「いわゆるデモやな。せやけど令和の市民団体みたいなプラカード持って歩くだけのお行儀のええデモとはわけが違うでぇ。領主邸に押しかけて直談判したるわ。ここは異世界で、うちらは冒険者や。労働組合があるでなし、自分らの権利は自分らで守らな。交渉のなりゆき次第では派手な衝突もあるかもしれへんなあ。うちらを止めたかったら機動隊でも連れてこいっちゅうねん。思い出すなあ、安田講堂」
「派手な衝突、望むところよ。ダンジョン産の高品質オートクチュールを独り占めしようなんて許せない。私たちがどれだけファッションに飢えていたか、既存の衣服の地味さにどれだけ味気無い思いをしてきたか。私たちから美しいものを奪う権利なんて領主にはないわ」
エバちゃんのセリフは一部ちょっと意味が分からない部分があるが、なんとなく物騒な感じがする。
セシルさんのセリフも過激だ。
派手な衝突を望まないでほしい。
「冒険者ギルドとしては直接的には領主と敵対はできないわ。だから私は動けないけど、その代わり」
ソニアさんはカウンターから職能団体一覧表を手に取った。
「一緒に交渉に臨みそうな団体を知ってるわ。どう? 声かけてみる?」
ソニアさんの人差し指が当たってる場所、『フラワーデザイナー連盟』なんですけど。
※
ここは銀猫亭。
あれから場所を移動した。
冒険者ギルドは直接的には関与しない、という建前なので、ずっとギルドで話し合いをするわけにはいかないらしい。
で、なぜか俺も連れてこられた。
どういうわけか団体交渉に参加させられる流れになっている。
グレアムさんは逃げた。
『神殿は中立です』とか言って。
ズルい、俺も逃げたかった!
なのに『俺もビギナーだから中立で』と言ったら『アホか。あんたはうちの後輩や』とエバちゃんに引きずってこられた。
理不尽。
「もちろん私たちも団体交渉に臨ませていただきますわ」
ソニアさんに呼ばれてやってきたフラワーデザイナー連盟会長さんは金髪縦ロールの釣り目美人さんだった。
見た目はいいとこのお嬢様が趣味に邁進したまま年食ったって感じ。
「我々も賛同しよう。この一件は見過ごせない」
同じく呼ばれてやってきた医療用画像魔力線機器組立技師互助会会長さんは、無免許天才外科医みたいな白黒二色に分かれた髪をした男性だった。
顔に斜め傷はなさそうだ。
「いいね、いいね~。騎馬隊連れてく? でっかいバイコーンに乗ってる連中呼んでこようか?」
同じく、厩務員倶楽部部長さんはノリが良さそうで軽そうな中年のおじさんだった。
どことなく無責任そうな感じだ。
なんでもこの三人はそれぞれ冒険者を率いるパーティーリーダーなのだそうだ。
団体名=パーティー名だと言うけど、なんでそんな名前つけちゃったんだか。
「あんたらがいれば百人力やな」
エバちゃん嬉しそう。
「百人どころか一騎当千よ」
セシルさんが数を十倍にして言う。
一騎当千の人が三人、エバちゃんとセシルさんも加えて五人いるから、五千人力か。
俺の力は数に入れないでね、初心者だから。
「みんなで力を合わせて領主倒すでー!」
「「「「おー!」」」」
「お、おぉ…?」
戸惑いがちに小さく唱和する俺。
本当にこれでいいのかな…?
打ち首獄門とかになったりしない…?




