職業 ④
順番待ちしている冒険者たちにバートラムさんが話をつけた。
「こいつはアーウィン。ダニエルがアレを手に入れた時に利用されたビギナーだ。あいつの持論が正しければ、こいつはレアモンスターを出しやすいし、レアドロップを出しやすい。というわけで試させろ。上手くいけばここにいる全員、お目当てのブツを手に入れられるぜ」
全員が即納得したわけではないが、とりあえず試す価値ありということで合意。
俺がネコのスイッチを押すことになった。
「では、いきます!」
スイッチオン!
出た!
いきなり金ネズ二匹と銀ネズ4匹が出た。
「おおー!」
ギャラリーがどよめく。
「よし、アーウィン、金ネズをやれ!」
「はい!」
見た目は無抵抗なハムスター。
だが今の俺には金のタマゴを生むニワトリに見える。
どすっ、どすっ。
ぷちっ、ぷちっ。
ポト、ポト、コロン、コロン。
「宝箱が出たぞー!」
「おおー!」
どよめくギャラリーに見えるように、バートラムさんが宝箱を開ける。
鍵がかかってそうだったけど、バートラムさんが指に力を入れたらパキンと音を立てて開いた。
一つ目は金の指輪。
そして二つ目は。
「出たぞ、『管理者キー』だ!」
「おおー!」
出てしまいました。
こうなるとギャラリーの興奮が止まらない。
必ずではないけど出ると証明されたんだからね。
「ビギナー! 次は俺と組もうぜ!」
「いいや、俺が先だ!」
私のために争わないで、な状態。
悪くない気分だけど、暴動になりそうでちょっと怖い。
そこを仕切るのはバートラムさんだ。
「落ち着け。順番はさっき並んでた順だ。一回チャレンジしたら次と交代。再度チャレンジしたけりゃ後ろに並べ。ネコを押すのと金ネズを倒すのはアーウィンだ。そこは手を出すな。金ネズ以外の獲物が出てきたら、組んでるやつが倒せ。自分が倒した獲物の魔石とドロップアイテムは自分のものだが、金ネズのドロップが欲しけりゃ一個ににつき100ストーンをアーウィンに払え」
「100でいいのか?」
「今日この場に限ってだがな。別の日にはその値段では売らねえぞ。あとチャレンジ料金、一人一回10ストーンをアーウィンに払え。これを払わないならアーウィンはネコを押さない。チャレンジしないやつはさっさと帰れよ。時間は有限だ。アーウィンが疲れたら終わるからな」
という流れで、順番に並んでもらい、10ストーン受け取って俺がネコを押す。
すると金ネズ銀ネズがなぜか必ず出るので、それぞれ倒す。
ベテラン冒険者ばかりなので、皆さんあっという間に銀ネズを片付けてしまう。
速い。
俺の金ネズも無抵抗なので秒殺。
するとなぜか必ず宝箱が落ちて、三回に一回くらいはお目当ての『管理者キー』が出る。
このサイクルを延々と繰り返した。
※
「疲れました」
「お疲れさん」
その場にいた全員がアレを手に入れるまでやった。
最終的には二十人くらいに行き渡るまで、合計60回くらい戦闘した。
そのすべてで金ネズが出た。
「ビギナーズラックって本当にあるんですね」
「職業が決まるまでの一年間、神様がくれるボーナスだって言われてるな」
「職業」
そのキーワードは今ちょっと辛い。
上向いた気分がまた落ち込みそうだ。
「なんかあったのか?」
「実は……」
かくかくしかじかと心に溜まったものを吐き出してみた。
こうして水を向けてもらうと少し楽に話せる。
失敗した自分を直視するのは辛いけど。
「…というわけで、自分では意識してなかったけど、ソニアさんのこと聞けば何でも答えてくれるAIみたいに思ってたのかも」
「あいつ面倒見がいいからな」
「こっちの世界のお母さんみたいで」
「そこはお姉さんにしとこうや。角が立つから」
「グレアムさんに叱られて、甘えすぎてたと気づかされて、ソニアさんにどんな顔して会えばいいのか」
「だったらちょうど良かったな」
何が?
「チャレンジ料金とドロップとで大分稼げただろ。その金持って堂々と聞きに行け。有料情報教えて下さいってな」
「なるほど!」
仕事してこいって言われて、ちゃんと仕事してきたわけだし、合わせる顔が出来たかも!
「明日にでも行ってこい。菓子折りでも持参すればソニアも受け取るだろうし、ソニアが受け入れればグレアムも何も言わねえよ」
「そうします!」
明日のミッションは菓子折りと情報料を持ってソニアさんに突撃することだ!
「それと俺にチュートリアル料金100ストーン払ってくれ」
「やっぱりか!」




