職業 ②
天から職業が降ってくる。
その意味をソニアさんは説明してくれなかった。
「説明する義務はないわ」
「ケチ! ソニアさんのケチ!」
「うるさいわね。何でも人に聞けば教えてもらえると思ったら大間違いよ。甘ったれてないで仕事しなさい」
イヌを追い払うように追い払われてしまった。
しかし仕事と言っても、近くの森はセシルさんによる局地的破壊のため、採取ができない。
何日か経てばまた採取できるようになるらしいけど、今は立ち入り禁止だ。
となると俺が稼ぎに行ける場所は迷宮遊園地くらいしかない。
しょうがない、ネズミ狩りに行くかー。
ネズミは素早いから倒しにくいんだよなー。
渋々、出かけようとすると。
「アーウィンさん」
グレアムさんが声をかけてきた。
「職業選択でお悩みなら相談に乗りますよ」
親切そうな笑顔だけど、それっていわゆる宗教の勧誘なのでは?
警戒せねば!
「えーと今ちょっと出かけるところなので」
「では僭越ながら助言を少しだけ」
えっ、と思った時にはもうグレアムさんに襟を掴まれていた。
意外な握力で引っ張られ、顔をずいっと近づけられる。
「お前な、いつまでも甘やかしてもらえると思うなよ? 情報はタダじゃねえ。ソニアさんは仕事上、無料で出せる情報と有料情報を分けてんだ。詳細知りたきゃ金出して買えよ。ギルドの受付をケチだのなんだの悪態つきやがって。金も払わず酒も奢らず、情報だけ聞き出そうってその姿勢が甘えてんだよ。生きた人間を検索エンジンと一緒にすんな。ここは日本でもネット掲示板でもねえんだよ」
「え」
俺、怒られてる?
グレアムさんが口調は荒いけど真面目なこと言ってる。
呆然とした。
今、何言われた?
俺、甘えてた?
甘えて、失礼なことをして、先輩から叱られた?
「神様はいつでもあなたを見守っていますよ」
グレアムさんはすぐに手を離し、いつもの笑顔に戻った。
その優しさは上辺だけで、中身は辛辣で、毒舌で……。
でも間違ってない、ような。
正鵠を射ている、ような。
……失敗した。
未熟さ故の過ち、それを指摘されてしまった。
そう思うと悔しいやら恥ずかしいやら、胃がでんぐり返ししそうな不快感がせり上がってくる。
あ、セシルさんの気持ちが今ちょっとだけわかったかも。
これは辛い、辛い時にはどうするか。
俺は……逃げる!
ダッシュでカウンターの前を通過し、
「さっきはすみませんでしたあー!!」
一息に叫んで出口に向かってダッシュ!
誰の顔も敢えて見ない!
俺を引き止めないで!
穴があったら入りたい気分だから!
俺は一目散に外に走り出て、そのまま目的地に向かって走り続けた。
そして飛び込む。
迷宮遊園地!!
俺、穴に入ります!




