防具屋 ①
子猫円舞曲でドロップしたアイテムの大半と魔石を買い取りに出した結果、276ストーンの収入になった。
ダニエルさんに持っていかれた『管理者キー』は一旦忘れることにする。
そんな物は無かった、無かったんだよ、うん。
そして売らずに残した『関係者パス』。
「これってどこで使えるんですか?」
ソニアさんに聞いてみた。
「遊園地ダンジョンの中層に入れるし、他にもいくつかのダンジョンで『関係者以外立ち入り禁止』のエリアに入れるはずよ」
「関係者以外立ち入り禁止?」
なんだそのスタッフオンリーなエリアは。
「共通の精霊システムで管理されてるダンジョングループがあるのよ。パスがないと入れない場所があるんだけど、システムが共通だからそのパス一個で複数のダンジョンの認証通っちゃうのよ」
「はあ、企業グループみたいなものですか?」
「さあね。昔は個別のパスが必要だったのかもしれないわ。今はバグってるけどね」
精霊のバグはセキュリティをグダグダにしてしまったようだ。
潜る側としては好都合だけどね。
「とりあえず遊園地の中層ですね」
「パスがあるからって突撃するんじゃないわよ、新入り」
「えー、ダメなんですかー?」
「装備も整ってないのに中層とか、自殺しに行くようなものでしょうが」
仲間不在、防具なし、事前準備なしのダンジョン中層突入がいかに無茶で無謀か、みっちりとお説教された。
あー、ストレス溜まった。
疲れて帰って来てるのに、ソニアさんのお説教は長いんだよ。
何かパーっと気分が上がるようなことないかなー。
ふと思いついた。
俺の財布には276ストーンという、かつてない大金が入っている。
これ使って装備整えればいいのでは?
鋼の剣には手が届かないとしても、防具は?
鎧とか、兜とか、お手頃なのが買えるのでは?
よし。
今日のところは銀猫亭に帰って休んで、明日は防具を買いに行こう!
※
やって来ました防具屋さん。
金属と革製品の匂いが入り混じった独特の空気。
店売りされてるのは小物が多い。
大物はオーダーメイドなのかも。
店の中心にはサンプルとして西洋甲冑がディスプレイされている。
見上げるくらいに大きい!
迫力!
そして。
「うーん、やっぱり高いなー」
お値段がお高い!
フルプレートに手が届かないのは当然として、ヘルムやガントレットなどの部分鎧にすら手が出ない。
とにかく金属鎧は高いらしい。
ミスリルとかの特殊金属じゃなくても、普通に鉄でも『さくらの棒』とは桁が一つ違う。
額当てくらいなら買えるけど、額当てかー。
鉢金とも呼ばれるそれなりにカッコいいアイテムではあるが、守る範囲が極端に狭いこれを買う意味が果たしてあるのか?
おでこしか守れないよ?
店頭価格70ストーンの額当てを前にして唸っていると、入り口から入ってきた客と目が合った。
「「あ」」
冒険者酒場の常連さん、アーチャーのセシルさんである。
この人はなんとエルフだ。
そう、人間に近いけど人間ではない、いわゆる亜人で、作品によっては妖精の一種とされる神秘的な種族だ。
耳が長くてスリムで切れ長の目をした美人さんである。
長い耳にも注目してしまうけど、手の指とか、頭の形とか、あちこちに独特の繊細さがあって、人間とは別の生き物なんだな、としみじみ思う。
綺麗すぎて凡人が話しかけてはいけない気がする人だね。
「新人さん、お買い物?」
話しかけてはいけない神秘的美人さんから話しかけられてしまった。
どうしよう?




