冒険者ギルド ①
死んだ後、神様に出会って、転生を望んだ。
そして今ここにいる。
剣と魔法の異世界に。
※
やったね、異世界転生だ!
転生と言っても赤ちゃんからスタートではなく、適当な年齢で初めていいと神様が言ったから、15歳にした。
武器防具が大人並みに装備できて、尚且つ成長期が終わってないので、身体能力であれ精神力であれグングン伸びそうな年齢だ。
チート能力はもらえなかったけど『会話や読み書きは不自由しない』と神様が言っていた。
楽しみだなあ、異世界。
あ、でも調子に乗りすぎるとよくないかも。
転生者だと知られないようにしよう。
最初は冒険者としてコツコツ働いて、地道に力をつけて……。
※
「あんた元日本人でしょ」
そう指摘されてギクッとした。
なんでバレた?
悪い人に目をつけられないように、目立たず、周囲に紛れるように、服装も立ち居振る舞いも気をつけていたはずだ。
一目で見抜かれるなんて……もしや『鑑定』スキル持ち?
「今、鑑定スキル疑ったでしょ」
「なぜそれを!」
「言っとくけど鑑定も読心も持ってないからね」
若い女性…少女と大人の中間くらいの見た目年齢のその人、冒険者ギルドの受付嬢は皮肉な笑みを浮かべた。
「そんなスキルなんか無くたって見ればわかるのよ。肉体年齢15歳前後、目立たないつもりの顔、目立たないつもりの服装、目立つ持ち物無し。最初の一声が『冒険者登録お願いします』。日本人転生者の典型だわ」
「転生者を知ってるんですか!?」
知られてはならない秘密が、異世界転生第一歩から知られてしまっている!
ていうか典型とか言うからには多数いるのか?
日本人とか言うからには別の国の転生者もいると?
背後から声がかかった。
「俺も転生者だ」
「私も転生者よ」
「僕もだよ」
「うちもやで」
「自分もです」
振り向くと、酒場のテーブルにいる冒険者達がニヤニヤ笑いながらこっちを見ている。
ベテランぽい風格のあるゴツい戦士が代表するように言った。
「金もコネもない転生者は必ず冒険者ギルドから人生始めようとするからな。歓迎するぜ、新入り」
「……てことはそこにいる皆さん全員転生者? え、俺だけじゃなかった。ていうかそんなにザラにいるの!? 冒険者ギルドで石をぶつけたら転生者に当たる状態!?」
「チッチッチッ」
戦士は小粋に指を振った。
「『冒険者ギルドで』じゃない、『世界で』だ」
「は?」
「この世界の人間、誰も彼も大抵皆転生者なのさ」
「はああ〜〜〜???」
絶句した。
「こういうの飽きたわぁ。もっと魅力的な人に来て欲しいわ」
絶句する俺を受付嬢が白けた目で見ていた。