迷宮遊園地 ②
俺はネズミの大群に襲われた!!
「ダニエルさん、助けてー!」
「しょうがないなぁ」
腕組みして壁にもたれていたダニエルさんは、腕組みを解くとこちらへ歩き出した。
と思ったら。
一瞬、フワリと風を感じて。
壁際にいたはずのダニエルさんが気づくと目の前、息がかかるくらいの距離にいて。
スッと、俺の前を横切って。
左から右へ軽やかに駆け抜け、シュシュシュッと風切り音が立て続けに聞こえて。
まさに一陣の風が通り過ぎたという感じ。
ダニエルさんが通った後には動きを止めたネズミたちが。
と思ったら、ネズミが煙になって消えていく。
ポテポテと魔石が落ちる。
その数、十個くらい。
え、この人、一瞬で十匹倒したの!?
「とまあ、こんな具合だね」
「凄い! ダニエルさん凄い!」
シーフの技って凄い!
え、シーフってこんなに素早いの?
目で追えなかったよ!
武器、持ってたの?
何も持ってないように見えたんだけど!
なんか……いいな。
俺もシーフになろうかな。
魔法使いになるにはお金かかるし、クレリックは戦えないし。
「じゃあ頑張ってね」
軽く手を振り、壁際に戻って行こうとするダニエルさん。
…って、おい!
「ちょっと待って! まだ何十匹もいるんですけど!?」
「君自身が倒さないとチュートリアルにならないでしょ。大丈夫、普通に叩けば倒せるよ。お手本見せたでしょ」
「見せてもらっても真似出来ないんですけど! さっきのアレで何をどう理解しろと!?」
「理解できなくても大丈夫。習うより慣れろって言うしね。回数こなせば慣れるって。多少噛まれても死なないから安心して。君はネズミに集中していいよ。宝箱が出たら僕が開けるから」
「冷たい! 冒険者の先輩が冷たい!」
叫んでも、訴えても、魔物は待ってくれない。
噛まれたくないなら殺るっきゃない!
俺は『さくらの棒』を必死で振るった。
群がるネズミを叩いて、叩いて、叩きまくった。
手応えとしては、スライムよりは硬いかな?
少なくとも生きた哺乳類の感触ではないので、ちょっとホッとする。
生身の小動物の感触だったら、とてもじゃないけど叩けなかっただろう、気持ち悪くて。
ネズミの耐久力は低く、攻撃が2〜3回当たると煙になって消えていく。
たまにクリティカルヒットなのか1回当てただけで消えてくこともある。
そしてポトポト落ちる魔石とコロコロ転がる宝箱。
宝箱は手のひらサイズで丸っこいデザイン。
なんとなくカプセルトイという言葉が浮かぶ。
宝箱の頻度は毎回ではなく、ネズミ5匹倒したら1回出るくらい。
ダニエルさんがひょいと拾ってはピッキングツールらしき物を使って開けて、中身を確認している。
「『おもちゃの指輪』か。こっちは『スライムの指輪』。ハズレだな。また『おもちゃの指輪』。指輪率高いな。あ、ちょっと違うの出た。『フェアリーフォーク』。せめてナイフとセットならなぁ。あんまりいいのないな。白ネズだとこの程度か」
なんかブツブツ言ってる。
暇ならネズミ狩り手伝ってくれませんか?
まだたくさんいるんですけど!
※
結局、ダニエルさんはそれ以上手伝ってくれなかった。
鍵開けする以外は壁際で腕組んで見てるだけ。
俺のチュートリアルだから俺がやるべき、というのも一理有る。
でも、もうちょっと何と言うか、仲間同士の助け合い的なものがあっても良くないか?
グレアムさんやエバちゃんとは同じ作業を一緒にやって、パーティー組んでる感があった。
離れて見てるダニエルさんってなんだかなー。
教えてもらってる立場ではあるけれど、『誘ったのそっちじゃん』という気持ちもある。
釈然としない思いでネズミを片付け、大量に落ちてる魔石をチマチマ拾っていると。
ダニエルさんがポツリと呟いた。
「……ビギナーズラックだ」




