迷宮遊園地 ①
出るよ、宝箱。
そんなこと言われちゃったら行くしかない。
なので来ました、ネズミ出現エリア。
途中にショップエリアらしき物(廃墟。商品何もなし)や、鏡の迷路だったかもしれない物(廃墟。鏡が無くなっててただの迷路)や、観覧車っぽい物(風化してホイールしか残ってない)や、絶叫マシンであって欲しい物(同じくレールしか残ってない)があったけど、寄り道なし。
この辺りは廃墟ばかりで、めぼしい物は何もないらしい。
ダニエルさんの解説を聞きながらサクサク進む。
「この遊園地がまともに稼働していた頃、つまり古代魔法王国が繁栄を極めていた頃だけど、ありとあらゆる施設は自動制御されていたんだ。工場も、農園も、レジャー施設もね」
「自動制御。AIみたいなものですか?」
「そうだね、前世で言う人工知能に近いものが様々な施設を管理運営していたんだ。人間が一切働かなくてもいいくらいにね」
「人が馬鹿になりそうですね」
「そうだね、苦労する必要がないんだから、物事を深く考えなくなる人は多かっただろうね。その一方で思索や研究に没頭する人もいただろう。地球の古代ローマと似てるかな。労働を奴隷に任せて、貴族は遊興に耽ったり、逆に学問や芸術に熱中したりした」
「あー、よく知らないんですけど、アリストテレスとかアルキメデスとかですか?」
「それは古代ギリシャ人だけどね。まあ大きく外してはいないかな。こっちの古代王国人は魔法の研究に熱中したらしいね。色んな遺跡にその痕跡が見て取れるよ」
「遺跡ですか。エバちゃんから少し聞きましたけど。スペルライターとか」
「神殿が管理してるやつだね。あれも凄いけど、僕は魔力があまり高くないからね。魔法には頼らず、指先の技術で生きていくことにしてるんだ」
「鍵開けとかですか?」
「そういうこと。さて、着いたよアーウィンくん。この扉の向こうがネズミ出現エリア、通称『子猫円舞曲』さ」
※
『子猫円舞曲』はバレーボールコートくらいの広さの円形の部屋だった。
その名の通り、扉の中に入ると、軽快な音楽が流れ出し、壁に描かれた絵がクルクルと踊り出す。
動力がまだ生きているらしい。
だが、どことなく音の調子が外れているような?
壁画の踊りもギクシャクしているような?
「ここを管理している精霊……地球で言うAIに相当する存在なんだけど、その精霊がね、『魔物大発生』で地上の魔力が乱れまくった時に、バグってしまったようなんだ」
「バグった?」
「そうとしか言いようがないね。人を楽しませるアトラクションのはずが、魔物に人を襲わせるダンジョンになってしまったんだから」
ザワッと背中に嫌な冷たさを感じた。
魔物に人を襲わせるって。
「えーと、ここって危険度低いんでしたよね?」
「そうだよ。普通に見て歩く分には何の危険もない。わざわざ魔物が出る部屋に踏み入らない限りは」
ダニエルさんは壁際を歩いていき、ネコのレリーフの前で止まった。
「大昔はちょっと面白い射的みたいなゲームだったらしいよ。壁のあちこちから飛び出す標的を魔法で撃ち抜いて遊ぶのさ。上手く落とせたら景品がもらえる。だけど今はバグっちゃってねえ。景品も大概変な物だし、飛び出す標的ときたら……こんな感じ」
ダニエルさんがネコのレリーフをグイッと押した。
それがスイッチだったのだろう。
いきなり壁に無数の穴が開いた。
そこから飛び出てくるネズミ、ネズミ、ネズミ……ネズミの大群だ!!
「数が多すぎるんですけど!?」
百匹くらいいるよ!?
しかも可愛くない顔の。
獰猛そうなドブネズミっぽいのが!
「本来一匹ずつ出すところを、管理精霊がバグってるから一度に大量に放流しちゃうんだよね。大丈夫、一匹一匹は弱いから、棒で叩けばすぐ倒せるよ」
「そんなこと言われても!」
ネズミで足の踏み場もない。
チョロチョロ走り回るのでスライムよりやりにくい!
こら、俺に触るな!
こっちに来るんじゃない!
「生身のネズミじゃないから大丈夫、病気とか持ってないよ。管理精霊が生み出してる魔物で、単なる魔力の塊なんだ。倒せば自然に消えて魔石だけ残るよ。運が良ければ宝箱もドロップするから頑張って」
「頑張ってと言われても!」
小さいのがたくさんいすぎて気持ち悪いんですけど!
うわあ、脚を登って来たあ!
ネズミに齧られるぅー!
たすけてー!




