シーフ ②
挿絵を入れてみました。ダニエルのイメージイラストです。MicrosoftCopilot生成。
どこか胡散臭いダニエルさんはキラキラした笑顔で俺を酒場コーナーに誘った。
「エールでも奢ろうか」
「エール!」
冒険者っぽい!
タダより怖いものはないと言うけどさ、異世界の冒険者酒場で奢ってもらうエールは別だよね!
「いただきます」
ぷはー。
仕事の後のエールはウマい、ような気がする。
飲んだの初めてだから比較対象がないけど。
「アーウィンくん、二日に一回のペースで『ただの棒』を使い潰してるんだって?」
おお、なんだか珍しくちゃんと名前を呼んでもらえた気がするぞ!
シーフのダニエルさん、もしかしたら案外いい人なのかも……なんて思うのはアルコールのせいかな?
こっちに来て初めてのアルコール飲料だ。
アルコール度数が低いのか、全然酒気を感じないけど。
この体がお酒に強いかどうか不明だから、気をつけよう。
未成年だから飲んじゃダメとか、そんな決まりはこっちには無いよね?
「スライムの酸で傷んでしまって。何十匹も倒しているとどうしても…」
「何十匹も出るの?」
「大体毎日20匹は出ますね」
「近くの森の浅い所だよね?」
「フェアリーが出ても全力疾走すれば森から出られるくらいには浅い所です」
「フェアリー出たの? 何回くらい出た?」
「6〜7回かなぁ。出たらすぐ逃げてるので、倒したことは一度もないですけど」
「なるほどね」
ダニエルさんは深く納得した様子で頷いた。
わかってくれました?
俺は何も悪くないんです。
棒が駄目になるのはスライムのせいなんですよ。
「じゃ、アーウィンくん、僕と一緒に探索行こうか」
「なんでそうなるんですか」
警戒警報発動!
ちょっといい人に思えても、この人はシーフ、すなわち盗賊だ。
油断したら有り金全部巻き上げられるかもしれない。
「答えは単純だよ。スライムの酸で武器が傷むのなら、スライム以外の魔物を狩ればいい。フェアリーは棒では倒しにくいから、倒しやすい奴が出る所に行こう。僕が連れてってあげるよ」
キラキラ笑顔で言われても、やっぱりなんか胡散臭い。
裏がありそう。
「チュートリアルだとするとダニエルさんの料金は50ストーンでしたよね? 俺そんなに払えませんよ」
「近くの森にしか行ってないから、そうだろうね。薬草採取は効率が悪いから。僕がお勧めする所では効率良く稼げるよ。チュートリアル料金を差し引いても100ストーン以上は確実だ」
「うーん。そういわれても」
ちょっと心が動いたけど、なんだか落とし穴がありそうだから……。
「気をつけなさい、新入り。シーフはみんな泥棒よ」
ソニアさんがカウンターから声かけしてくる。
「酷いなぁ、そういう色眼鏡で見るのって良くないんじゃないかな。職業に貴賤はないよ」
ダニエルさんは軽くふざけたポーズで冗談めかして言う。
でもシーフだからね。
職業に貴賤はなくても、犯罪かそうでないかの区別はある。
「冒険者自体、社会的信用が低いけど、中でもシーフは信用ないわよ。『パーティー外のシーフは詐欺師と思え。パーティー内のシーフは裏切り者と思え』ってね。そいつについて行くなら自己責任よ。騙される覚悟で行くことね」
ソニアさんの言葉は鋭い。
うーん、やっぱりそうだよなー。
詐欺師に騙されるのは嫌だから、ここはお断り一択で……。
「僕が案内するのはとっても素敵なダンジョンさ。宝箱が取り放題」
「行きます!!」
即答した。
ダンジョン!
宝箱!
異世界の冒険はこうでなくちゃ!
自己責任上等!
アーウィン行きまーす!
こうして新人は騙されるのです。




