血も涙もない冷たい奴ら⑥
しれっと攻略組に混じってるケイトリンさん。
なんでこっち側にいるの?
ダンジョンアタックに厩務員倶楽部の騎馬隊は参加しない。
地下では馬の機動力を活かせないから。
『植物モンスター以外は自信がない』という植木屋さんも、騎馬隊と一緒に農場でお留守番だ。
「ケイトリンさんも農場に残る方がいいのでは?」
そう提案してみた。
だって非戦闘員だし、か弱いし。
「そうそう、残った方がいいよ」
「危ないから、地上で待機しとく方がいい」
農業アルバイトの面々もケイトリンさんを説得しようとした。
だがケイトリンさんは断固として譲らなかった。
「行きます。私が見てないと先生が無茶ばかりするので」
「……チッ!」
ジェレマイアさんが露骨に舌打ちしている。
この人、弟子の心配をなんだと思っているのか。
「ジェレマイアさんはケイトリンさんが見ていたとしても無茶すると思いますよ?」
「それでも近くにいれば、いざという時に止められます。近くにいなかったら止められないので」
一理ある。
でも、できるかなあ、ドジっ子属性のケイトリンさんに。
危険へ突っ込んで行くジェレマイアさんを止めようとして、逆に二人とも奈落の底へ落ちていきそうなイメージがある。
「言っとくけど、うちらが受けた依頼はテラロッサマウンテン地下エリアの確認や。護衛の依頼は受けてへんから、ついてくるなら自分で自分の身を守らなあかんよ。まあ良識の範囲で配慮はするけど」
エバちゃんが釘をさす。
「わかっています。足手まといになるようなら見捨ててもらってもかまいません」
ケイトリンさんは真剣な表情で頷いた。
「見捨てたりしないから安心しな、ケイトリンちゃん」
「俺たちは一応、護衛だから」
「そうそう、ケイトリンちゃんは俺たちが守る」
ロレンスさんとマーティーさん、それに大鉈使いの人が調子のいいことを言っている。
最初は地上で待機するように説得してたくせに。
でもまあ、ケイトリンさんがついてくれば、ジェレマイアさんへの抑止力にはなるのかな。
いくらジェレマイアさんでも、弟子が見てれば少しは自重するだろう。
暴走特急ジェレマイア号のブレーキ役だと思えば、いた方がいいのかも。
そんなわけでケイトリンさんを真ん中にして、ジェレマイアさんはその横。
前後を農業バイト冒険者で囲んで守り、その外側にチーム暇人……というフォーメーションで進むことになった。
線路のある一本道に出てしまえば、サイドアタックの恐れもないし、雪だるま軍団が出てきてもチーム暇人の前衛が蹴散らしてしまえばいい。
目指すは大将首、ナターシャ。
指揮官が彼女一人なら、彼女を捕縛しちゃえばいい。
指示を出す者がいなくなればスチームアントも雪だるまも脅威ではないはず。
巨大雪だるまが出てきたら、エバちゃん・ジェレマイアさん・ケイトリンさんが一斉に炎熱系の魔法をぶつけて仕留める……という作戦になっている。
いいなあ、魔法使い……。
俺も魔法を覚えたい。
お金ないけど。
この探索で氷の魔石を手に入れたら魔法を覚える資金になるだろうか。
二十~三十個くらい拾えたら、一番安い魔法なら……。
「ほな行こかー。うちはしんがりを務めるさかい、先頭は斥候と盾役と案内役なー」
「斥候はダニエルさんで、盾役はバートラムさんですね。案内役は……」
「あんたやんか」
「何故!?」
新人なのに!
先輩たちより前に出させられるって、そんなのあり?
ふと見ると、ロレンスさん始め農業バイトの先輩たちはケイトリンさんをがっちり守る位置にいる。
……消去法で俺か!
そりゃあ道は覚えてますけど!
広場までは一本道だし!
でもなんか釈然としない。
俺より強い人たちが真ん中辺にいて、新人で未熟な俺が前衛って、何か間違ってない?
「ふっふっふ。腕が鳴るわい。古代魔法王国の遺跡を儂の鑑定眼で丸裸に」
マッドアルケミストが何か言ってる。
気にしたら負けだな。
俺はジェレマイアさんから目をそらした。
「バートラムさん、ダニエルさん、道案内はしますけど、戦闘になったら頼みますよ?」
「おう、任せとけ!」
「大船に乗ったつもりでいていいよ」
ダニエルさんの人間性は信用できないけど、冒険者としての腕は信用できる。
バートラムさんは人間性としても冒険者としても信用できる。
この二人がいるなら、大丈夫、たぶん、きっと。
さあ地下エリアへ突入だ!
※
「ホーホホホ、やっぱり来たわね、不法侵入者たち!」
……ナターシャ、寝てなかったんだな。
地下の広場にたどり着いた俺たちが見たものは、目の下に隈を作ってハイテンションな笑い声を上げるナターシャと、広場を埋め尽くす雪だるまの大群だった。




