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総転生世界 〜Everyone Reincarnated~  作者: ful-fil
インターン ここは砂と岩の農場

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血も涙もない冷たい奴ら④

 氷の魔石。

 それがこの世界でどんな意味を持つのか。


 ぶっちゃけ俺にはよくわからない。

 スライムの魔石に比べると透明感があって、輝きが鋭くてダイヤモンドっぽいとは思うけど、それだけだ。

 しかしダニエルさんが目をギラつかせたということは、何か意味があるに違いない。

 例えば、お値段がお高いとか。


 わからないことは人に訊こう。

 とりあえずバートラムさんに訊いてみた。


「氷属性の魔石だと何かいいことあるんですか?」

「そりゃおまえ、他の魔石よりぐんと高値がつくぜ」


 あ、やっぱり高いんだ。


「なんで氷属性だと高いんですか?」

「冷やす技術がこの世界じゃ発達してないからな」


 つまりこういうことだった。


 この世界、木材なら豊富にある。

 特に桜の木は腐るほどある。

 なので燃料には困らない。

 調理や冬の暖房に使う薪や炭は安く手に入る。

 一方、夏の冷房や食材の冷蔵となると、低温を作る技術がまだない。


「冷却装置がなあ、水冷式とか空冷式とか、漠然とは知ってるんだが、作れねえんだよな」

 

 冷蔵庫やエアコンの原理をうっすら知ってはいても、作れるほどの技術を持った人が転生してきていないらしい。

 夏の暑さをしのぐ道具としては、かろうじて扇風機があるくらいだそうだ。

 寒い地方では冬場の氷を夏まで保存できる氷室があるらしいが、俺は見たことがない。

 低温を作る方法としては、氷属性の魔法があるが、魔法を覚えるのにバカ高いお金を払う必要があるため、使える人は限られる。


 なるほど、それで氷の魔石の出番であると。

 ふむふむと頷いていると、セシルさんが会話に入ってきた。


「新人さん、鮮魚をギルドで買い取ってもらえなかったことがあったでしょ?」

「そういえば、ありましたね」

「あれってギルドに冷蔵庫がないからなのよ」

「冷蔵庫って冒険者ギルドにもないんですか」

「ないのよ。冷凍庫もないのよ。だからナマモノは買い取りしてもらえないのよ」

「それなー」


 そこへエバちゃんも加わった。


「大物釣ってきても冒険者ギルドでは保冷倉庫があらへんから、商業ギルドに持ち込まなあかん。うちが魔法で冷やしたってもええんやけど、攻撃魔法やからブリザードが吹き荒れるねん。氷の礫がガンガン当たるから倉庫が傷むし、あんましええ方法とは言われへんな」

「微調整ができないのよね、魔法って」

「せやから氷属性の魔石が重宝されてんねん。置いとくだけでじんわり冷える」

「氷の魔石と扇風機の組み合わせは真夏の必需品よね」

「冷風扇なー。商業ギルドのロビーにあるやつな。あれ気持ちええなー」


 エバちゃんとセシルさんは『真夏の商業ギルドがいかに快適か』で盛り上がり始めた。

 俺、商業ギルドって行ったことないんですけど。

 売店でアイスクリーム売ってるって本当ですか。

 ちょっと、いっぺん連れてってくれませんか。


「ま、そんなわけで氷の魔石には需要があるんだよ」

「基本的に氷属性の魔物からしか採れませんから、けっこう貴重ですよ」


 バートラムさんがまとめた。

 グレアムさんも会話に入ってきた。


「氷属性の魔物……。じゃあこれ雪だるまの魔石だったり?」

「他に氷属性の魔物がいないのなら、そうなのでしょう」

「氷属性の魔物って他にどんなのがいるんですか?」

「妖精ジャックフロスト、その女性版の雪娘、スノーエイプ、フロストジャイアントなどが氷属性の魔石を落とすそうです。一年中、雪と氷に閉ざされているような寒い所にしかいませんが」

「この近くにはいないんですか?」

「聞いたことないですね」

「じゃあ、もしかしてこの魔石、割とレアだったり」

「レアでしょうねえ」

「ちなみにこれ一個でお値段おいくらでしょうか?」


 俺の素朴な疑問に答えたのはグレアムさんでもバートラムさんでもなかった。

 ダニエルさんがキラキラ笑顔で答えた。


「精密鑑定しないと正確な所はわからないけど、見た感じ100ストーン前後ってとこだね」


 なんと、スライムの魔石のざっと百倍!

 バートラムさんを一日雇用できる金額ではないか。

 これはなかなかのお宝。


「アイスドラゴンから剥がれ落ちた鱗は氷の魔石になるって聞いたことがあるぞ。北の雪山にしかいないらしいがな」

「ドラゴン系は大体鱗が魔石化するそうですね。ファイアードラゴンの鱗は火属性の魔石になるようですし。南の火山地帯にしかいないらしいですが」


 バートラムさんとグレアムさんは魔石談義を続けている。

 ドラゴンの鱗は浪漫だが、この辺にいないものは今は関係ない。

 今このダンジョンにいるのは雪だるまなんだから、雪だるまの魔石を狙おう。

 本当に雪だるまから魔石が採れるのならの話だが。


「なーなー、このマップの肉とか野菜とか書いてあるとこ、氷温やったんやろ。氷の魔石が腐るほどあるんちゃう?」

「腐るほどって言い方はともかく、雪だるまがたくさんいるなら、氷の魔石はたくさんあるのかもね」

「氷属性の魔物を狩り放題、魔石を取り放題か。稼げそうだな」

「自分たちの目的は、第一に未報告エリアの調査、第二に不法占拠者の制圧です。狩りは二の次ですよ」


 先輩たちがマップを見ながら相談している。

 これはダンジョン地下に再アタックする流れですね!

 待ってろナターシャ、俺のハルバードを取り戻す!

 

「氷の魔石……どのくらいあるのかな。供給源は本当に雪だるまなのか、それとも……」


 視界の端っこでダニエルさんがいつになく真顔で呟いているのが、ちょっぴり気になったけど。

 その時の俺は赤い山ダンジョン地下を攻略する気満々だった。

 冒険者ギルドの先輩たち、農業バイトの先輩たち、おまけに厩務員倶楽部の部長さんもいて、これだけ大勢の冒険者がいればナターシャの軍勢なんか怖くない。

 この時は、そう思っていたんだ。


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― 新着の感想 ―
ついに100話超え! おめでとうございます。  そして、冷凍機。確かに異世界で作るの難しいですね。  電動機又はエンジン。圧縮機。冷媒配管。そもそも冷媒が無いかなと。どれだけの技術者が転生すれば実現…
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