魔法使い①
冒険者生活、二日目。
無口な女将さんが出してくれる洋風の朝食は案外美味しかった。
宿泊客は今は他にいないのか、テーブルに着いているのは自分一人。
会話が無いのがちょっと寂しい。
話し相手、欲しい。
とりあえず今夜も泊まりたいので仮予約を入れておく。
筆談で。
『薬草採取してきますので、帰ってきたらまた泊めて下さい』
『お帰りをお待ちしております』
なんか石板と石筆の使い方にも慣れてきた。
チョークと比べると手が汚れない分、こっちの方がいいかな。
※
昨日と同じ冒険者ギルド。
受付にいるのも昨日と同じソニアさん。
酒場にたむろするメンバーまで昨日と同じ。
そっくり同じ体験が二度繰り返されてる。
まるでデジャヴのようだ。
それとも時間のループだろうか?
「おはようございます」
「おはよう」
「早いね」
「頑張ってるね」
「筋肉痛なってへんか?」
「昨日はお疲れ様でした」
様々な返事が返ってきた。
……ループしてないな。
普通に現実だった。
軽く会釈しておいて、ソニアさんのいる受付に向かう。
「おはようございます」
「おはよう。宿屋どうだった?」
「銀猫亭ですね。ちょっと変わってるけど、ご飯美味しかったです」
「それは良かったわ。今日はどうするの。また薬草採集?」
「それもいいんですけど、せっかくだから魔法覚えたいなと」
剣と魔法の世界に来たのに、まだどっちも触れてない。
武器として装備してるのはただの棒だしね。
「始まったわね。転生者あるあるが」
「あるある…ですか?」
「ゲームやアニメで魔法描写を観てるから、イメージだけで使えると思ってるでしょう」
図星だった。
だってだって、ラノベでよくあるじゃん!
イメージ固めて発動させれば詠唱なんか要らない、みたいな。
魔法ってそういうものだよね?
違うの?
「チュートリアルでその先入観を叩き壊してもらうといいわ。エバちゃーん」
「はいな〜」
「新入りが魔法使いたいってさー。指導したげてよ」
「まかしとき。どうやったら魔法覚えられるか、わかりやすう解説したるわ。お代は25ストーンぽっきり」
「え、あ、でも」
「ゆうても金ないんやったなあ。ほな近くの森いこか。採取で稼いで払うてくれたらええわ」
「え、あ、その」
「ほないこかー」
なぜか勝手に話が進んでいく。
チュートリアル頼むなんて言ってないのに。
お金払うなんて一言も言ってないのに。
会話したいとは思ったけど、こういう強引な展開は望んでない。
なのに近くの森へ?
よく知らない女性と二人っきりで?
無理、無理、無理!
だが逆らえず、虚しく引きずられていく俺だった。
誰かー、助けてー。




