マイカー
もうこの軽自動車は二十万キロをゆうに走破している。二年前には正月早々にエンジンがかからなくなり、正月明けに工場に直行してバッテリーを交換してもらった。
もともとは、甥が新車に乗り換える折に、タイミングよく譲り受けたものだった。車体はがたがきていて、錆で数ミリ欠けている箇所もあれば、助手席の後部座席のドアはなぜか開かなくなってしまっている。
西高東低の気圧配置で、天気予報でも大雪の注意を喚起していたのが、一昨日だった。
昨日、起きてみれば、ボンネットには三十センチ近くの雪が積もっていた。歩道は近所の方が除雪機で早朝に雪をかいてくれているらしかった。スノーブラシではままならず、スコップでボンネットの雪を払い、それからスノーブラシで雪を払った。
運転席へ。キーを挿入し回す。エンジンは震えたが、かからなかった。何度か挑戦してみたけれど、徒労に終わった。エンジン警告灯とバッテリーが点灯していた。
雪も止んだ今日。曇り空の下午前中のうちに、ボンネットに積もった数ミリの雪を払った。昼食後、エンジンを回した。鳴らない。アクセルを踏みながら何度かのトライでエンジンが稼働した。行くのは他でもない。工場である。走らせて途中で止まらぬように祈りながら、少し動悸を揺らめかせながら、工場到着し、事務員さんに事情を説明。
「お座りになってお待ちください」
案内された工場のチェアに座った。ほどなくして、事務員さんから、
「どうぞ」
と、お茶を出された。待つこと数十分担当スタッフが来て、
「エンジンもバッテリーも異常はないです」
とのことだった。その代わりにマフラーや前輪の空気抜けについての修理の必要性を促された。スタッフに促されるまま、マイカーまで誘導され。指さし確認で異常を教えられた。修理をお願いするしかなかった。待合室に戻り、ガラス窓から見えるマイカーの様子を凝視する。
「村瀬さん、お時間大丈夫ですか?」
待つこと小一時間経つ頃になって、事務員さんから尋ねられた。もうこうなっては早く修理完了を待つしかない。
そらから三十分ほどして工場の入り口前にマイカーが移動させられた。
「急に雪が降ったから、おかしくなったんですかね?」
質問に、スタッフは
「もうだいぶ古い方なので、それもあるかもしれません。また何か不都合があれば持ってきてください」
疲れを隠しながら答えてくれた。
買い物の候補地はいくつもあがったが、家へ一直線で帰途した。