表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/26

15 誤解

 色々と判明してすぐに手紙を書いて呼び出した親友イーディスは、朝一番で我がダヴェンポート侯爵邸へと来てくれた。


 私は順を追って説明し、レンブラント様の前で真相が書かれた神殿からの手紙を読んでしまった気まずい瞬間までを聞いてもらった。


「まあ! そうだったの! 頭上にある数値は、リディアへの好感度だったのね」


 私の能力(ギフト)の内容を聞いたイーディスは、嬉しそうに目を輝かせていた。


「そうなの……どうしよう。イーディス。これって、レンブラント様は私の事を、好きだって言う事でしょう?」


 私は両手を頬に当てた。熱い。


 昨夜、神殿からの手紙を読んだあの時から、まるで風邪で高熱を出した時のように頭がぼーっとしてしまうのだ。


「ええ。そう言うことだと思うわ。リディア。殿下に他の女性が居るなんて、これまでずっとおかしいと思っていたけれど、そう言う事だったのね」


 イーディスはそう言って苦笑した。


 彼女は当初からずっと『何かおかしい』とあやしんでそれを言ってくれていたのだから、私がその言葉を落ち着いて考えてみれば、神殿側の判定結果が間違えているのかもしれないということに早く気がつけたかも知れない。


「……あの、ごめんなさい。イーディス。実は貴女の恋人のエミールのことなのだけど……私は恋愛指数だと思っていたから、数値の低い彼にイーディスを騙しているのかも知れないと勘違いして彼を責めてしまったの」


 私は彼のことをすっかり勘違いしてしまって、イーディスの恋人エミールを責めてしまったことを打ち明けた。


 イーディスの事を思えばこその行動だったのだけど、余計なお世話をしてと言われればその通りだった。


「まあ……そうだったの。リディア」


「ごめんなさい。イーディス……」


 やはり、エミールはイーディスには何も伝えていなかったようで、彼女は驚いてはいたけど、私が心を込めて謝罪をすれば手を握って慰めてくれた。


「思ってもみなかったから驚いてしまったけれど、神殿の勘違いでそうなってしまったのなら、貴女が悪いわけではないわ。それに、私への厚い友情を感じて、責められてしまったエミールには悪いけれど、嬉しくなってしまったもの」


 確かに彼女の言う通りに親友イーディスでなければ、あの時エミールに意見していたかというとわからない。


 私にとって彼女は失い難い、大切な友人だからだ。


 いつか必ず不幸になるとわかっている相手ならば、どうにか遠ざけたいと思ってしまうほどに。


「そうなの……けれど、勘違いでよかったわ。実は……勘違いしてエミールを責めている間、彼の好感度は下がり続けて、最終的には一桁になってしまったのよ。とんでもない女だと思われてしまったわね。きっと」


 昨夜、イーディスと同様にエミールにも謝罪の手紙をすぐに書いたけれど、まだ返信はない。貴族の朝は遅いので、今は手紙を開いて読んでくれている程度の時間だろう。


「リディア。大丈夫よ。貴女が悪いと言うことはないわ。きっと、エミールならわかってくれるはずよ」


「ありがとう。イーディス」


 エミールの件についてはイーディスが取りなしてくれそうで、私はほっと息をつき安心した。


「それよりも、今対処しなければいけないのは、貴女とレンブラント殿下の事よ!」


 私は真面目な顔をしたイーディスがいきなり声を上げて、驚いて目を見開いてしまった。


 そうだった……レンブラント様とどう接すれば良いのかと相談するために、イーディスをここに呼び出したのだった。


「ええ……そうね。レンブラント様と、一度ちゃんとお話しするべきだと考えてはいるの。私の気持ちとか……それに、この前に授かった能力(ギフト)についてであるとか……」


 彼の私への気持ちが聞かずともわかってしまうという、あまりない状況下だけど……私の告白は必ず上手くいくはずだ。


 レンブラント様の好感度は、彼の頭上に乗っているもの。


「二人ならば問題はないと思うけれど、せっかくだから、良い雰囲気の中で打ち明けあった方が良いのではないかしら? きっと思い出に残るでしょう」


「……良い雰囲気の中で?」


 そういえば、私たち二人は婚約者だと言うのにいつも淡々としていた。


 私自身がレンブラント様と一定の距離を保っていたこともそうだし、彼だって、それ以上に踏み込もうとはしなかった。


「ええ。貴女たちは両想いなのだから、きっと上手くいくはずよ」


 イーディスは力強く頷き、私もそれに頷いた。


「そうね。もうそろそろ、レンブラント様の誕生日だから、そこで何か計画してみようかしら?」


 また熱くなって来た頬を両手で押さえつつ私がそう言えば、イーディスは目を輝かせて喜んだ。


「……そうしましょう! そこで殿下のことが好きなのだとはっきりと告白すれば、きっと、喜んでくださるはずよ。大体二人とも婚約者なのによそよそしくて、見ているこっちが心配になってしまうほどだったもの。勘違いがあってやきもきしたけれど、結果が良かったら全て良しなのかもしれないわ」


 イーディスは自信満々でそう言い、私だって確かにそうなのかもしれないと思えた。


 レンブラント様の頭上にある数字は最高値で、これで私たち二人が上手くいかない理由なんて何も思いつかないくらいだもの。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
::::::୨୧::::::::::୨୧:::::::::::新発売作品リンク::::::::::୨୧::::::::::୨୧::::::

【10/4発売】
i945962
溺愛策士な護衛騎士は純粋培養令嬢に意地悪したい。
ストーリアダッシュ連載版 第2話


【9/12発売】
i945962
【シーモア先行配信ページです】
素直になれない雪乙女は眠れる竜騎士に甘くとかされる


【8/22発売】
i945962
婚約者が病弱な妹に恋をしたので、家を出ます。
私は護衛騎士と幸せになってもいいですよね


【6/5発売】
i945962
素直になれない雪乙女は眠れる竜騎士に甘くとかされる
(BKブックスf)
★シーモアのみ電子書籍先行配信作品ページ
※コミックシーモア様にて9/12よりコミカライズ連載先行開始。

:::୨୧::::::::::୨୧:::::::::::コミカライズWeb連載中::::::::::୨୧::::::::::୨୧::::

竹コミ!『溺愛策士な護衛騎士は純粋培養令嬢に意地悪したい。』

MAGCOMI『ひとりぼっちの花娘は檻の中の竜騎士に恋願う』

:::୨୧::::::::::୨୧:::::::::::作品ご購入リンク::::::::::୨୧::::::::::୨୧::::

【電子書籍】婚約者が病弱な妹に恋をしたので、家を出ます。
私は護衛騎士と幸せになってもいいですよね


【紙書籍】「素直になれない雪乙女は眠れる竜騎士に甘くとかされる

【紙書籍】「ひとりぼっちの花娘は檻の中の竜騎士に恋願う3巻

【紙書籍】「ひとりぼっちの花娘は檻の中の竜騎士に恋願う2巻

【紙書籍】「ひとりぼっちの花娘は檻の中の竜騎士に恋願う

【コミック】ひとりぼっちの花娘は檻の中の竜騎士に恋願う THE COMIC

【紙書籍】「急募:俺と結婚してください!」の
看板を掲げる勇者様と結婚したら、
溺愛されることになりました


【電子書籍】私が婚約破棄してあげた王子様は、未だに傷心中のようです。
~貴方にはもうすぐ運命の人が現れるので、悪役令嬢の私に執着しないでください!~


【短編コミカライズ】今夜中に婚約破棄してもらわナイト

【短編コミカライズ】婚約破棄、したいです!
〜大好きな王子様の幸せのために、見事フラれてみせましょう〜


【短編コミカライズ】断罪不可避の悪役令嬢、純愛騎士の腕の中に墜つ。

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ