表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

99/128

99.まさかの黒幕

 南西研修地点に於ける評価作業は、一日前倒しで実施される運びとなった。

 その最大の理由は、魔性闇獣及び魔性亜人との遭遇戦が余りにも多過ぎる為、これ以上の研修続行は危険だと判断されたからである。

 同行していた評価担当教授らがその旨を説明すると、研修に参加していた生徒達のみならず、護衛に就いていた聖騎士隊の間からも幾らか安堵の声が漏れ聞こえてきた。

 つまり、それ程までに南西研修地点は非常に危うい状況に陥りつつあったという訳である。

 この地点での早期切り上げは妥当な判断だといえるだろう。

 ただ、それでもリテリアはまだ引き上げるべきではないと考えていた。

 評価作業を一日前倒しにせざるを得なくなった最大の要因である、魔性闇獣と魔性亜人の異常な増加の原因を探らねばならない。もしもこの問題を深掘りせずにそのまま放置していたら、後々大変な事態に発展するかも知れないからだ。

 リテリアがその旨を申し入れると、一部の聖騎士が賛同し、手伝ってくれることになった。


「じゃあ俺も手伝うよ、リテリア嬢」


 アルゼンも協力を申し出てくれた。流石にミラベルとアネッサは聖騎士団第二駐屯地に戻ることにした様だ。リテリアとしても、このふたりには無理をさせるつもりは無かった。


「リテリアも、特級聖癒士だからって無理しちゃ駄目だよ」

「うん、大丈夫。飽くまでも原因調査だけだから、討伐までは流石に手が廻らないわ」


 撤収してゆくアネッサを笑顔で送り出したリテリア。ミラベルも幾分申し訳無さそうな顔つきを見せていたものの、矢張り疲労と緊張には耐えられなかったらしく、リテリアに苦笑を向けながら南西研修地点を去っていった。


「それでは、宜しくお願いします」

「これからは素人を守らなくて済むから、我々としても気が楽ですよ」


 頭を下げるリテリアに、聖騎士隊の小隊長が少しばかりほっとした笑みを返してきた。リテリアもアルゼンもタルネアン太聖大学の生徒ではあるが、実戦経験を積んでいる戦力として迎え入れられたのだろう。

 かくして、居残った臨時調査隊は数名ずつの班を編成し、手分けして森の中での徘徊を始めた。

 途中、何度か魔性闇獣と遭遇し、その都度撃退するという場面もあったが、今回はほとんど苦戦することも無く、次々と撃破して捜索範囲を広げていった。

 そうして二時間程度、調査を進めたところで奇妙な発見が幾つか報告された。

 実戦研修に参加していた生徒や教授ではない別の何者かによる野営の痕跡が見つかった、というのである。

 もしかすると、その何者かが同地域で魔性闇獣や魔性亜人を攻撃したことで、手負いの怪物共が結果として実戦研修の集団に襲い掛かってきたのかも知れない。

 その何者かが誰なのかは分からないが、手がかりを得た以上、ここから先の捜索は改めて聖騎士側で引き継いで進めてゆくしかなさそうだ。


「では、一旦戻りましょう。この人数で野営を組むのは却って危ない」


 聖騎士隊の小隊長の提案で、休憩を挟んでから聖騎士団第二駐屯地に引き返す運びとなった。

 ところが――。


(……あれ? もしかして……)


 リテリアは小川に水を汲みに行った際、見覚えのある後姿を茂みの向こうに発見した。同行していたアルゼンにそのことを告げると、ふたりで追ってみようということになった。

 もしも、あの後姿が想像通りなら、これは少し話が面倒なことになりそうだった。

 だが、放っておく訳にはいかない。

 リテリアは、相手を驚かせない様にと最大限配慮しつつ、そっと声をかけた。


「ねぇ……そこに居るの、もしかしてミルネッティ?」


 ちらりと見えた後姿だったが、しかしリテリアには確信があった。共にシェルバー大魔宮へ突入し、共に枝先の里で試練に立ち向かった仲間なのだ。見間違える筈が無い。

 すると程無くして、バツの悪そうな笑い声が静かに漏れ聞こえてきた。


「あはは……バレちゃった?」


 頭を掻きながら茂みの向こうから姿を見せたのは、矢張りミルネッティだった。

 そして更に驚いたことに、ここに来ていたのは彼女だけではなかった。


「え……レオさんも来てるの?」

「うん。ご主人様に呼ばれてね」


 更に曰く、イオ、ホレイス、ジェイドらも同じく、この地点に留まっているらしい。

 一体、どういうことなのか。

 リテリアは何となく、嫌な予感を覚え始めていた。


「まさかとは思うけど……この辺の魔性闇獣と魔性亜人を実戦研修の班に誘導してたのも、ミルネッティ達だったの?」

「うん。全部、ご主人様の命令」


 リテリアは思わず、アルゼンと顔を見合わせる。ふたり揃って、唖然としてしまった。一体何故、ソウルケイジがそんなことを指示したのだろうか。


「えぇっとね、リテリアの脳波? ってやつ? それを、メテオライダーから隠す為なんだって」


 リテリアの美貌が緊張に強張った。

 まさかここで、その名が出てくるとは思ってもみなかった。


「リテリアが治癒術使う時にね、その脳波って奴がメテオライダーに読まれちゃうんだって。だから魔性闇獣と魔性亜人を大勢、一カ所に集めることでそいつらの脳波でリテリアのを隠そうとしたらしいよ」


 答えるミルネッティも、今ひとつ分かっていないらしい。恐らくソウルケイジの受け売りだろう。

 だが、それでは何故そんな手間をかける必要があったのか。


「何かね、ご主人様ったら変なことをいってたんだ。聖女の脳波を囮にするとかどうとか」


 あっけらかんと答えるミルネッティ。

 リテリアは、ごくりと息を呑んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ