逢迦
霞み舞う儚さに
染まる景色が眩しくて
今日も覇気のない爪先に
ひとり視線を落とす
宥めるように
吹かれた一片が
私の前髪を撫でて止まる
それすらも
ほんの少しの癇気に思えて
軽く頭を振って無下に払った
咎めるように
膝頭を叩いて
落ちていった春の愛し子
視線の先の黒の合皮に
白く1滴 季節を纏わせた
咲かねば誰も
足も 気にも止めない景色に
ひとり密かに 安堵を覚えて
冷たい手と 額を添えた
肌に伝わる 微かな呼吸
静か根を張る 仄かなぬくもり
長い秋冬 逢瀬のままに
春は遥か どうかこのまま
無情の刻が 私だけを置いて
朝を告げる陽射しも とうに早起き
指折り数え今か今かと
浮き立つ世界に 身を縮める
開け開けと焦がれる全てが
その先に待つ儚さに重なり
直視できない弱い私は
無垢に終わりを願う笑顔たちから
気取られぬよう顔を背けた
燃え尽きる瞬間こそが
一番強く輝くの
残酷だと知りつつも
私もそれを美しいと思ってしまうから
自らの散り際が同じだとは
到底思えないけれど
それでも今際の際は
静かに向き合いたいと願って止まないから
弱い私は 背け続ける
なかったことになんて、させないから
靴を染める小さな白が
いたずらに微笑んだ気がして
嗚呼、今年も綺麗だよ
少し上向いた爪先に
ぽつり溢した
定期的に訪れる眠れぬ夜の手遊びの痕跡