レインに胸きゅん
豪華な室内のキャンピングカーに座り、サーニャさんとパージさんと話しをすると「呼び捨てで呼んで下さい」と言われた。
年上の人をすぐに呼び捨てにするのは抵抗がある。自宅の奴隷達は呼び捨てにしているが。業務連絡しているうちにそうなっちゃったんだよね。
サーニャさんとパージさんは、貴族には必要な事だと話す。使用人に敬語で話してはいけないと諭される。
そうか、私は今教育を受けているのだ。貴族としての態度、心構えを。私は2人に感謝して、今後呼び捨てにすることにした。
屋敷以外の人、領主館で勤めている人は呼び捨てにしていい場合と駄目な場合があるらしい。難しい。
例えば今だとトレバー・ジン前男爵だと、貴族だから、主家の者でも、一応ジン前男爵と呼べば問題無いらしい。他のよく解らない人には、殿をつければ問題ないと言う。
あと本人が、敬称をつけなくていいと言った場合は、公式の場以外は畏まらなくていいらしい。
貴族めんどくさい。
サーニャの話しだと、この国は貴族の決まり事は緩い方らしい。他国に行けば、もっと面倒な決まりがあるようだ。でもそれを軽んじてはいけないらしく、この国は無駄を省き成長して来た国なのだと。
例えば挨拶。式典などを除いて、ひざまづいて挨拶する必要は、貴族と平民の間では必要ないらしい。王族に対しても、右手を胸に当ててお辞儀すれば問題ないし、不敬罪は貴族を守る物だから、明確な悪意がなければ、不問にされるらしい。からかいなどは捕らえられるみたいだが。貴族を馬鹿にしているので、悪意があるそうだ。
服装も緩い。汚い服で王族や貴族の前に出るのはダメだが、パーティーやお茶会などに王族や貴族が出る時には服装をきちんと場に合わせた物を着ないといけないらしいが、平民が王族や貴族に謁見する場合には着古された服じゃない限り許されるようだ。
これは、民がたった1日の事で無駄な金を使わせない為にあるそうで、綺麗な服はマナーになるので必要だそうだが。その為に新調した服は普段着にも着れるので、無駄にはならないと判断される為、最低限必要になるそうだ。
王族や貴族が「無礼講」だと言えば、最低限の礼儀さえ守れば、罰される事はないと言う。
大事なのは、式典かそれ以外という事だろう。相手の身分が分からなければ、下手な事をしない限り罰される事は無いと言う事だ。
貴族がお茶会に呼ばれたならば、日中にふさわしい少し華美な服を着ればいいし、パーティーなどに呼ばれたならば、ドレスを着ればいいらしい。
破廉恥な服は言語道断だそうだが。着て来た人が恥をかくらしい。まぁ踊り子のような服を着なければ良いだけのようだが。踊り子の服も伝統的な衣装らしいが、公式の場所ではアウトらしい。
余興として呼んだ仕事の踊り子は良いらしい。依頼された真面目な仕事だからね。滅多に呼ばれる事は無いようだが。
私的な集まりでするパーティーには仕事として呼ばれる事があるらしい。踊り子や吟遊詩人や娯楽を提供する人達が。
なにそれ楽しそう。
カヨは知りたかった事を知れて、知識欲が満たされて満足である。
サーニャとパージは何故、お屋敷に勤める事になったのか聞くと、縁故もあったしお給料と夫婦で勤められる環境がよかったそうだ。
お給料はいくら貰っているのか確認すると、サーニャが夫婦合わせて1ヶ月金貨100枚で、パージは奥さんがメイドをしていて、1ヶ月金貨130枚だそうだ。
一般的な料理人見習いが、1ヶ月金貨20枚だそうで、技術や料理の腕が上がれば、上司、この場合は料理長に執事と経理の人で相談して、給料を上げるか考えるそうだ。
パージは副料理長だから高い給金なのね。
自宅の奴隷達にも採用しようかしら。いつまでも金貨5枚じゃ可哀想だと思っていたんだよね。
2人とする話しは為になるものが多かった。たまには違う仕事をしている人と話すのは楽しいかもしれない。
しばらくして、次の村に着いた。
誘導された場所にキャンピングカーを止めて、村長と挨拶する。
集会所を借りて、中の案内をしてもらい、明日1日で視察を終え、その後一泊してから次の朝、出発するらしい。
今は夕暮れ時なので、料理は作らず、持って来た食事を食べるようだ。
集会所でみんなでマジックバッグから出した食事をする。作り置きでも、プロが作った食事だ。美味しい。
みんな満足そうに食事をする。この後は眠るだけなので、みんなリラックスしている。
こうやって、一緒に仕事をして食事をして、一体感を持つのかもしれない。
食事が終わった、私とノアは案内された部屋に上がる。上司がいない方が良い時もある。
私とノアは部屋に入り、異空間住居の中に行くのだった。
リビングで2人、今日何していたか話しつつスキンシップをする。これで日中一緒にいなくても寂しくない。
満足したら、寝る準備をして、ベッドに横になる。ノアがお腹の鼓動を聞いている。もうすぐ生まれてくるからね。
ノアと手を繋いで、眠る。
明日も良い日でありますように。
朝起きて、出かける準備をしてから、異空間住居を出る。集会所の広い場所に向かい、出来立ての朝食をいただく。ノアと給餌し合って、今日も元気な事に幸せを噛み締める。
食事が終わったノア達、視察団は村長の所へ行く。
私はサーニャに1人で出かけると言い、村の外にに出る。インビジブルを掛けて、飛行魔法で空を飛ぶ。
魔物探知をして、村の周りを見て行く。この辺りも兵士がちゃんと間引いてくれているみたいね。
魔物の反応は小物ばかりだ。少し離れた場所に、1つ魔物の反応がある。村に害はないだろうが、行ってみる。
そこには白いもふもふした毛のチャウチャウの子犬みたいな顔をした、ぱっちりした目の、頭と身体のバランスがとれた、大型犬くらいの可愛い魔物がいた。胸きゅんだけど、鑑定する。
ーパクティーー
可愛い見た目で、近づいて来た獲物を捕らえて捕食する。牙と爪は鋭い。肉は美味い。
きゃー、可愛い見た目で怖い魔物なのね。でも胸きゅんしちゃったの。ペットにしたい!
この世界には妖精がいるから、妖精に出来ないかな?創造魔法なら出来る?今までは植物にしか、魔木になるほど魔力は注いでないからなー。
よし!創造魔法を信用してみよう!出来なければ、退治しないといけなくなるし。
パクティーに近づき、バインドで動きを止める。暴れるので、自身に身体強化を掛けて、パクティーを創造魔法の魔力で覆う。
人を傷つけず、守ってくれる妖精になれ!でも戦える時は戦ってね。
創造魔法を行使し続ける。抵抗感があったが、途中からスムーズに魔力が通るようになった。
暴れていたのも、大人しくなり座り込んでいる。
創造魔法の魔力が消えた!成功したかな?パクティーを見る。
!目が虹色だ!成功した。私はインビジブルを解いて、パクティーの隣りに降りる。パクティーはこっちを不思議そうに見てクーンと鳴く。可愛い。
意思が通じるように話しかける。
「あなたに、私の家族になってもらいたいの。お願い出来る?大切にするから」
パクティーはクーンと鳴いて、私の手を舐めてくれた。凶暴性は感じない。懐っこさを感じる。鑑定!
ーパクティーの妖精ー
人を好きになり、共に生きていく妖精。親しい人が傷つけられると、獰猛な一面も。食事は魔力を食べる。誰にも傷つけられない。寿命は魔力がなくなった時。
成功だ!首輪をつけよう。結界と状態異常無効、飛行魔法にインビジブルと誰にでも念話出来るようにしよう!誰にも傷つけられないからいらないかも知れない能力があるけど。
リボンでちょうちょ結びした、さっき考えた能力を付与した首輪を創造する。それを妖精に着ける。
『貴方は誰?』
「私はカヨ。君と家族になりたいんだ。なってくれる?」
『僕のお嫁さんを探してくれるならいいよ』
「約束は出来ないけど、パクティーを探してみるわ。それじゃ駄目かな?」
『良いよ。僕は貴方のおかげで自我がはっきりして、考え事が出来るようになった。あなたとお腹の子供も守るよ』
「ありがとう!君のお名前は何かしら?教えてくれる?」
『僕に名前は無いんだ。ただの魔物だったから。貴方の名前は?』
「私はカヨ!君の名前をつけてもいいかな?」
『カヨ。気にいる名前をつけてね』
難しいリクエストがきたぞ。瞳が虹色だから、レインボーでレインはダメかな?
「君の瞳の色が虹みたいだから、私のいた所では虹の事をレインボーと言うの。そこからとって、レインじゃダメ?」
『良いよ。気に入った。僕の名前はレイン!よろしくね、カヨ!』
「ありがとう。クリーンを掛けさせてね。綺麗になるから。身体を触ってもいい?レインの魅力的な毛並みと可愛い顔にやられちゃったの」
笑いながら言う。レインは悩むそぶりも見せず『良いよ』と返事してくれた。
私は柔らかい毛並みを触る。クリーンを掛けて綺麗になった体。体毛が絡まってる所がある。あとでブラッシングしてあげないと。
体がうずうずして、思わず抱きついてしまった。もっふもふで幸せ。好き。私が抱きついても揺るがない体。以外と筋肉質なのかもしれない。
ほっぺを舐めてくれる。野生だったからちょっと臭いかも。レインの口にクリーンを掛ける。口の中のなくなった水分に驚いているようだ。
アイテムボックスから、プイを出して食べさせる。レインは一口で食べた。みずみずしい甘さに驚いているようだ。
『カヨ!今のすごいおいしかった!魔力も入ってたし、また食べたい!』
「いいよ。お腹壊さないでね」
私はレインにプイを食べさせ続けた。本当にお腹大丈夫かしら?20個くらい食べさせたところで満足したようだ。口を舌で舐めた。
『僕は魔力があれば生きられるけど、今のはまた食べたいな』
かわいい瞳でおねだりしてくる。きゅんとする。
「私達人間は1日3食、食べるの。レインも一緒に食事しましょう」
レインは巨体を跳ねて喜んだ。お嫁さんとか言ってたけど、まだ、精神は子供みたい。かわいい。
「貴方の首輪にインビジブルと飛行魔法が付与されているから、一緒に飛べる?インビジブルは必要な時だけ掛けて」
『僕飛べるの!?わあ!少し浮いた!楽しいや!』
「一緒に行ける?」
『行けるよ!僕飛べる!』
私はまだ慣れないレインの飛行に速度を合わせて、村まで飛んだ。姿を隠してなかったから、何人かには目撃されてしまった。
帰って来た私とレインにサーニャは驚いていた。魔物じゃないか確認してくるので、妖精だと言えば「妖精!?」と驚いていた。瞳の色が違う事に気づいたようだ。
パージや休憩していた護衛も騒ぎに気づいたようで出てくる。
私がレインを撫でて「害は無い」と言うと、自分達も近づいて確かめて、最後は毛並みにうっとりしていた。レインは人見知りはしないようだ。顔を舐められた護衛は驚いていたが。
「今日から旅に加わるからよろしくね。名前はレインだからね」
念話で会話出来るのも確認したみたいでみんな「よろしくレイン」と挨拶していた。レインは撫でられるのが好きみたいだ。目を少し細めて気持ち良さそうにしている。
お昼になって、視察団の人達が帰ってきて、同じやりとりをした。果物が好物だと言うと、自分のマジックバッグに入っている果物を食べさせている人もいた。
レインはみんなのアイドルになった。
「カヨは冒険者ギルドでレインの獣魔登録をしないといけないね」
「もう、レインは魔物じゃないのに登録しないといけない?妖精だよ」
「見た目が魔物だからね。人の居る場所に連れて行くなら登録した方がいい。余計な手出しを防げる」
ノアが言うなら正しいんだろう。視察で町に行った時に登録しよう。
地球通販で、果物が20個ほど入る器を探して購入した。レインの食器だ。
みんなで昼食を食べた。レインと言うささやかな癒しを添えて。




