カリオン到着
カリオンの門前まで来たここは裏門だからか人は少ないが並んでいる。私たちは最後尾に並ぶ。
「やっと着きましたね」
思わず声が出た。カルロスさんは胸がいっぱいという顔で「はい、やっと着きました」と答えてくれた。
以外とすぐに順番が来た。
門番さんが
「身分証明書を出して下さい」
と言って来たので無い事を言うと、
「この円盤に触って下さい」
と言われた。触ってみると青くぼうと光った。
「はい、大丈夫です。通行料銀貨1枚です」
金貨を渡すと9枚銀貨が返ってきた。
カルロスさんたちはと見ると、村で作ってもらった身分証明書を出していた。通行料は取られなかった様だ。
「カルロスさん教会に行きたいんですけどいいですか?」
「いいですよ。行きましょう」
よし行きましょう。の前に複数人いた門番の人に場所を聞く。こっそりマップにチェックを入れる。これで迷わない。
実は方向音痴なんで。
街の中を歩いて行く。治安がいいのは本当のようだ、一定の間隔をあけて兵士?ぽい人が何度か見える。安心して歩いていると目的地が見えて来た。
カリオンは広いから教会は何ヵ所かある様な事を言っていた。ここは何を崇めている教会だろう?
「誰か一緒に行きますか?」
ミーチェちゃんが行きたいそうだ、モニカさんも必然的についてくる。
建物自体は古いが丁寧に使われていることが感じとれる。入ってすぐの場所は受付みたいだ、教会に初めて来た事を伝えると、案内してくれた。
ここは何の神様を祀っているのかと聞くと「すべての神様です」と教えてくれた。
祈りの間に着くと、特に作法は無いと言われた。心のままに祈ってくれと。
私はひざまづいて胸の前で手を握った。運命神様とメンリル様に祈った。無事街に着いたことこれからこの世界で生きて行く事を伝えさせて貰った。
少し胸が軽くなった気がした。ミーチェちゃんも可愛く祈っている。
私はシスターに、何処かで勉強を大人にも教えてくれる所はないかと聞いてみた。
それなら、孤児院がいいと教えてくれた。寄付金を渡してその代わりに勉強を教えてくれると。紹介状を書いてもらい、孤児院までの道順を教わる。お布施を金貨3枚渡して出て来た。
カルロスさんに次は孤児院に行く事を相談し、みんなで向かう。また雑多な街並みを孤児院まで歩いて行く。
着いた場所は広いけれど建物が結構傷んでいた。
ここで子供たちが暮らしているのだろうか。
柵であたり一帯を囲んでいるが門番はいない。鍵は掛かっていないので中に入る。馬どうしよう。
「馬どうしましょうか?」
カルロスさんが外で待つと言ってくれるが、もうお昼の時間だ。昨日買ったサンドイッチを渡して、お昼ご飯にして下さいと言うと、なぜかびっくりされた。
聞けば普段は1日2食なのだという。こっちがびっくりだ。
孤児院の隅っこでみんなでサンドイッチを食べる事にした。3人とも嬉しそうにサンドイッチを食べている。私は1人もんもんと、だから痩せているんだと憤慨していた。よしこの3人太らせようと。
お昼も食べ終わり、いざ孤児院へ!
モニカさんとミーチェちゃんと3人で行く。
扉は空いていたけど、入るのも気まずく「すみませーん、誰か居ませんか?」と大きい声を出すと、小さい声で「はーい」と聞こえてきた。遠くにいたようだ。
中年の痩せた女性が出てきた。教会で貰った紹介状を渡すと、読んで「はい、はい」と頷き中に案内してくれる。床がギシギシ鳴って折れそうで怖い、中もかなり老朽化している。
応接室らしき所に通された。座って下さいと促される。お茶の準備をしてくれているようだ。
地球通販でクッキーを買い、皿の上に出して机の上に置く。
ミーチェちゃんが釣れた。クッキーがおいしそうに見えたのだろう。モニカさんも控えめだが食べている。
まだ若いもんね。
お茶を持って来てくれた女性が驚いていたが、「お土産です」と言うと食べてくれた。
「私、孤児院で院長をしております、マーサと申します。お勉強をされたいとの紹介でしたがどの様なことをご希望ですか?」
「読み書き計算、歴史に通貨単位や一般常識を男性1人とここにいる3人に教えていただきたいです」
マーサさんは少し迷ったように
「カリオンへはいつからいらっしゃいましたか?」
と聞いてきた。
「今日です」
「以前はどちらにいらっしゃいました?」
「モニカさん一家は少し離れた村に、私も似たような者です」
「そうですか、学ぶ頻度はどれくらいを考えていますか?」
「出来れば毎日。なるべく早く知識を身につけたいです」
少しの間、院長先生は悩んでいたけれど決心した顔をした。
「いいでしょう。あなた達に勉強を教えましょう」
モニカさんと私は頭を下げてお礼を言った。
「ありがとうございます」
私はカバンから金貨の入った巾着を取り出し、
「お納めください」
机の上に置いた。院長先生はびっくりした様だったけど「ありがとうございます」と受け取ってくれた。
「あとですね、先ほども言いました通り、今日到着したばかりなんです。ですので孤児院に空き部屋などがありましたら、寝床を提供していただけないでしょうか?家賃食費もお支払いしますし、勉強の時間外には孤児院のお手伝いもさせていただきます。どうでしょうか?」
いきなりの申し出に院長先生もモニカさんも驚いている。しかし、効率の問題だ。私たちは学べるだけ学びたい、それにミーチェちゃんにもお友達がほしい。古ぼけた部屋だって異空間住居があれば問題ない。
院長マーサは悩んでいた。今までその様な提案はされた事がなかったからだ、この荒屋に住みたいなどと。
家賃も食費も払うと言う、今寄付してもらったばかりだというのに。悪い人には見えない、子供を見れば親の性格がわかる。何年も前から子供達を沢山見て来たから。
勉強する間、半年くらいだろうか。お金を入れて貰えれば子供たちにお腹いっぱい食事を与えてあげられる。院長の心は決まった。
「いいでしょう。まず孤児院の生活に文句を言わないでもらえますか?」
「もちろんです」
「子供達を傷つけない事、殴る蹴るはもっての他です」
「そんな事はしません」
「信じますよ」
「はい」
カヨ達はしばらくの宿を得た。足りない所は自分の力が役に立つはず。モニカさんは驚いてたけど反対しなかった、カルロスさんにも報告しないとなぁ。
「院長これからよろしくお願いします」