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不真面目な奴隷商

 ノアと家族とのプールは楽しかった。


 ノアは私が水の中に沈みこむと、溺れたと思ったのか慌てて引き上げられたけど、その時のノアが水も滴るいい男だったもんで、顔が熱くなってしまった。


 お父様もお兄様もいい体つきをしてらっしゃって、自分の番いや私を見て「破廉恥な!」と始めは叫んでいたけど、楽しそうに水の中で遊ぶ子供達と私に、毒気を抜かれたように、後から設置したプールサイドの椅子に座っていらっしゃった。

 慣れたお父様とお兄様は自分達の番いに熱い視線を送っていた。後から一緒に水に入ってイチャイチャしてたけど。


 ノアは背泳ぎする私を呆然と見ていた。まぁお腹が不格好だったかも知れない。

 水に慣れたノアは私に抱きついてきて、水の中で触れ合うのが新鮮みたいだった。私が水の中で逆立ちすると驚いていて、笑ってしまった。

 ノアはすぐクロールが出来るようになり、平泳ぎを教えると、恥ずかしそうにしていたが、マスターした。超人だ。私はそんなにすぐ出来るようにならなかった。負けた気分だ。


 子供達が疲れたらお開きになり、子供達を寝かしつけて、各々番いと去っていった。


 私が子供達の寝顔を見ていたら、ノアが後ろから抱きついてきて、ビキニ姿が綺麗だったよと言ってくれたけど、絶対色眼鏡がついている。

 はいはいと言っていたら「またプールで遊ぼうね」と言ってくれたので嬉しくなった。




 私はまた、行商と治療を始めた。次の目的地はラルドが街長をしていた所だ。


 真面目な治癒師になって、役場に行ったら、ラルドの代わりに代理人が街長をしていた。私の事は初めて知ったらしく、お兄様の紹介状を見せて、治療を承諾してくれた。役人さんはわたしの事を知っている人がいたみたいだ。

 広い街なので、通達に4日くれと言われた。


 私はその間、街にある孤児院に行く事にした。


 大きな孤児院だったので、玄関で声をかけたら、たくさんの子供が警戒したような、好奇心満載のような顔で見てきたので、手を振るとみんな「きゃっ」みたいな声を出して院の奥に行ってしまった。

 代わりに、若い女の人が出て来て用件を聞いて来たので、子供達の治療と寄付が出来ればと言うと心良く迎えてくれた。


 さっき去って行った子供達が1列に並ぶと、この孤児院にカリオンの孤児院並に子供がいることがわかった。女の人に手伝ってもらい、治療が終わった子にアイテムボックスから出した、服や靴を選んでもらった。

 孤児院にいる子供達は、両親が亡くなったか親に捨てられたか、虐待から逃げてきた子だ。

 少なからず怪我がある子がいる。傷ついた子を治していく。

 人数が50人近くいたので時間がかかった。


 子供達に服を選んでくれていた女の人が尊敬するように見てくれた。

 一緒に子供達の服と靴を選ぶ。子供達は元気で私を見ると「でぶ〜」と言う子がいるけど「お腹に子供がいるんだよ」と言えば、不思議そうにお腹を見る。


 まだ、赤ちゃんの事分からないかな?と思い、服を選ぶ、懐っこい子は私に抱きついてくれる。嬉しくなって抱きしめると、他の子が冷かす。

 なんて元気がいい子供達なんだ。パワフルさが凄い。力を吸い取られそうだ。

 今度は逆に女の人を尊敬する目で見てしまった。


 服を選び終わったのが、夕食前だったので慌てて孤児院をお暇した。



 カーマインのお屋敷に帰り、食堂に行く。

 お母様方と子供達が席についていた。お話ししながら待っていると、男性陣が帰って来た。各々「お帰り」と言いながらハグする。もちろん私とノアもだ。ちゅうもついてくる。まだ新婚だからね。


 夕食を食べながら、みんな1日の報告をする。みんな1日変わりない日を過ごしたようだ。


 食事が終わり、ノアの部屋に帰ったら「子供にデブって言われたー」と報告したら、「どんなカヨでも好きだよ」と抱きしめて言われたので、照れてしまった。


 ノアにはあまり恥じらいが無い。だから信用できるんだけど、言われた方の気持ちが分からないので、負けたーと思う時が結構ある。勝ち負けの問題では無いけど。


 こうして私はノアに宥められちゃうんだ。





 次の日、また孤児院に来ていた。

 昨日急いで帰ったので、寄付金を渡して無かったのだ。

 昨日の女の人が出て来てくれて、対応してくれた。金貨のぱんぱんに入った袋を渡すと、恐縮して受け取ってくれた。


 最近行商人もしてるから、金貨が多くなってるんだ。すまんが、貰ってくれ。


 女の人に小さい子供達と遊びたいと言えば、子供達の所に連れて行ってくれた。部屋に入ると、転んでどこかにぶつけたのか、頭から血を流している子供がいて、周りの子が泣いていた。

 慌てて血を流している子に近付いて、頭に治癒魔法を掛けてあげた。


 女の人に、日常的にあるのかと聞くと「こんな事は滅多にない」と言っていたので、運が悪かったのだろうとその子と血がついている床にクリーンを掛けた。

 私は血を流していた子を膝に乗せて、いい子いい子と頭を撫でた。ホッとしたのか、抱きついてきて甘えられた。かわいい。

 周りで泣いていた子達も、友達が元気だと分かったら泣き止んでいた。みんなびっくりして泣いちゃったんだろう。可愛い子達だ。


 女の人に「この部屋にいます」と言うと「お願いします」と去って行った。子供の人数が多いから人が足りていないのかもしれない。

 だが、小さい子供だけにしておくと今日みたいに何が起こるか分からない。

 子供の頭を撫でながら、援助できる事を考えた。




 お昼近くなって来たら、女の人が食事をどうするか聞いて来たので、妊娠しているので自分で持っている食事を食べると伝えた。


 小さい子供達は女の人に「お昼ごはんだよ」と伝えられると、我先にと駆け出して行った。取り残された私はちょっと寂しくなった。

 一緒に食堂に行くと、女の人の他に大人が2人いた。挨拶をして空いてる椅子に座り、サンドイッチを食べた。デザートにクリムを食べて食事を終わらせる。


 子供達はお腹いっぱい食事を食べられているようだ。問題は人手だけかなと思い、同じく食事が終わった年配の女性に声を掛ける。


「はじめまして、カヨと申します。院長でいらっしゃいますか?」


「そうです。午前中は子供達と遊んでくださったようで、ありがとうございます」


「この孤児院には、職員の方は足りているのですか?」


「お恥ずかしい話し、募集しても人が来ないんですよ。今は大人3人で回していますが」


「もし、借金奴隷を買って連れて来たら、役場に申請に行ってもらえますか?」


「子供達を思ってくれる、いい人だったらいいんですけどねぇ。人を見るっていうのは楽じゃないですよ」


「午後に一緒に奴隷商に行ってくれますか?私が借金奴隷を買うので、院長に主人登録をしてもらいたいです。私は人の嘘が分かるので、なるべくいい人を選びますよ」


「本当ですか!?あら、慌てちゃって恥ずかしい。それが、本当ならお任せしたいですねぇ」


「じゃあ午後は一緒に奴隷商に行きましょう」


「よろしくお願いします」


 子供達が食堂からいなくなったら、院長と2人で奴隷商に行くことにした。


 奴隷商の場所は院長が知っていたので、一緒に向かう。庶民でも裕福な人がいる区画に来た。院長がお店を教えてくれる。

 私は読心と真偽判定を使い、扉をノックした。


 中から「用件は?」と聞かれたので「借金奴隷を買いに来た」と返す。扉が開いて迎え入れられた。

 中に入ると、何か空気が重い。先導されるまま、院長と2人でついていく。商談室だろう場所に案内されて、しばし待つ。


 少しいい服を着た男性が入ってきて、どんな奴隷を希望しているか聞いてきた。


「怪我や病気関係なく、子供が好きな借金奴隷を紹介してほしいです」


「分かりました。奴隷はこちらに連れてきますか?」


「なるべく多くの奴隷を見たいので、奴隷達の所に連れて行ってもらえますか」


「分かりました。ご案内いたします」


 院長と2人で、男性についていく。ここも、地下が奴隷のいる場所のようだ。階段を降りていく。

 奴隷を見ると、ろくに体を拭けていないのだろう薄汚れていて、痩せている。服も汚い。

 ここの奴隷商は、奴隷に優しく無いのだろう。管理もきちんとしているのか怪しいものだ。匂いも結構する。カリオンの奴隷商の方がきちんとして、奴隷を大切にしていた事がわかる。


 男性に奴隷を紹介してもらい、奴隷と話す。奴隷は話しをするのも億劫そうだ。ここの生活が良くないのだろう。


 根気よく、真面目に働いて子供が好きそうな人を選ぶ。

 3人いた。誰もが今すぐ倒れそうだ。男性が強く言い聞かせて階段を登らせる。値段を提示される。奴隷達の状態ならこんなものだろう。お金を払い、書類を貰う。


 契約の間に案内される。奴隷が倒れた。近付いて治癒魔法を掛ける。男性が驚いていたが、お金を払ったのだ。もう奴隷はこちらの者だ。奴隷が立ち上がった。契約の間に入る。

 魔法が使えるか確認されたので、院長に確認する。魔法は使えないらしい。男性に血をもらえるかと言われたので、院長にお願いする。院長に怪我は治すと約束して、院長は覚悟を決めた顔をして手を切った。男性がもういいと言うまで血を出した。終わったらすぐに院長を治療した。院長は安心したように息を吐いた。

 男性は奴隷の契約液に血を混ぜて何処に奴隷紋を押すか聞いてきた。院長は「目立たない所に」と男性に言った。結局、奴隷3人は背中に奴隷紋を押されていた。すぐに乾燥したようで、奴隷が服を着る。


 男性がこれで終わりですと、出口まで案内してくれた。「またのお越しを」と言っていたけれど、2度と来たくなかった。気分が暗くなる奴隷商だった。


 買った3人に治癒魔法を掛けて、病気や怪我を治す。お礼を言われて、院長に身の回りの物を買いたいから店を案内してくれと頼む。

 服と下着と靴下と靴を買い、店の人に迷惑な顔をされながらも日用品を買った。

 全員にクリーンを掛けて、孤児院まで帰る。


 孤児院に帰ったら、まともに食事も取れていないだろう3人に、キッチン組が作ってくれた食事を出すと貪るように食べた。クリムを食べさせて、人心地ついた所で買ってきた物に着替えてもらい、院長に「役場に申請してくださいね」と奴隷達の書類を渡す。

 院長はありがたがってくれた。


 奴隷達の体調が戻ったら、子供達のいい相手になるだろう。読心に真偽判定まで使ったのだ。これで嘘なら立派な詐欺師だ。


 今、孤児院で働いている3人の大人に魔法の質問をしていく。全員いい人だったので「魔法が使えれば何を使いたい?」と聞くと、料理を担当している者はアイテムボックスが使いたい、院長は生活魔法が使いたい、若い女の人は今朝のことが頭にあったのだろう、治癒魔法が使いたいと言った。

 3人を鑑定させてもらうと、驚いた事に、院長と料理担当の人が魔法の適正が無かった。

 3人に希望の魔法を付与すると、適正がない2人が苦しんだ。治癒魔法を掛けてあげて、痛みが治まった頃に魔法を使えるようになった事を言い「子供達に魔法を教えてあげて下さい」と『初めての魔法』の本を院長に渡した。3人に感謝された。


 残りの3日、孤児院に来させてもらい、子供達と戯れた。




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