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村人のいろいろな生活

 ローゼット領での事件の顛末はあっけない物だった。


 領主の代理人が2人兵士と一緒に派遣されてきて、街と町に別れて調査した所、町長の書類に関係者の名前が書かれていて、迅速に捕らえたそうだ。

 街の一部でラルドを取り返そうと、反乱が企まれていたが、初期の段階で察知して返り討ちにしたそうだ。


 ガリの村も町長が犯罪者となった事で、今まで横暴だった村長を追い落として、村長の親類でも性格の良い人が新しい村長となったようだ。



 私はガリの村で行商をしながら、話し好きのおばちゃんから話しを聞いていた。今まで前村長が贅沢を許さなかったので、その反動でベッドが売れる事売れる事。他にも服や靴、砂糖に塩、飴ちゃんが売れた。

 村人が使ってたベッドはリサイクル不可能だったので、アイテムボックスのゴミ箱に入れた。どんだけ横暴だったんだよ、前村長。


 村人と楽しくおしゃべりしながら、行商もする。

 行商人も村長のせいで寄り付かなくて、町までボロい馬車に乗って遠くまで買い物に行ってたそうだけど、新村長が馬車を今度、新しく買ってくれるらしい。嬉しそうに話してくれた。

 もちろん病気、怪我の治療もした。


 ガリの村民は明るくて良い人達だった。




 昼食をカーマインのお屋敷で食べた後、隣りのもう一つある村に寄って、行商をする。村長に商売していい場所を聞き、ちょっと広い広場で商品を広げる。

 興味深そうに見ている村人に声を掛けて、商品の前に誘導する。

 家が買えると分かった村人が、急いで家に帰ってお金を取ってくると、走って行った。王都近くの村で、手に入れた中古のベッドも売れた。

 この辺りの領地では、木工をしている人が少ないのかもしれない。


 お客さんがいなくなったタイミングで、ベッドを買ってくれた人と家を買ってくれた人の家に、荷物を運ぶ事にした。家を買ってくれた人には、家を教えてもらい、家の中の荷物を外に出しておいて下さいと言って、家に帰って準備しておいてもらう。

 ベッドを買ってくれた人達には、家に案内してもらい、家にあるベッドと買ってくれたベッドをアイテムボックスを使い、入れ替えた。喜んでくれたので、いい気持ちで、他の家にも配達した。

 この村の人達は物を使えるだけ大切に使うのかもしれない。かろうじて中古で使えるか使えないかという所だったので、自信が無い商品は売れないとアイテムボックスのゴミ箱に捨てた。


 家を買ってくれた人の家に行き、荷物を外に出すのを手伝う。風が吹き込みそうな家をアイテムボックスのゴミ箱に捨てて、開拓村で手に入れた中古の家を取り出した。

 家の主は喜んでくれて、荷物を家の中に入れるのを手伝った。

 いい買い物が出来たと握手してくれて、この村の人達もいい人だったなと、満足して帰った。



 この村の隣りが、例の町長が居た町だ。

 顔が割れているので、初めから真面目な治癒師になり、町の中に入った。役場に行き、町人を銀貨1枚で治したいと言えば、副町長のもとへ案内されて紹介状を渡した。2日待ってくれと言われたので了承して、孤児院の事を聞いた。

 副町長が恥ずかしい事だがと前置きして、犯罪者の前町長が溜め込んでいた横領金を使い、中古の家を買いそこで子供達の面倒を見ていると話してくれた。


 聞いた場所に向かうと、子供達は大人を警戒していて、可哀想になるほどだった。根気よく近づいていって、最後は餌付けして仲良くなった。

 お世話してくれている人に、明日も来る事を伝えて、カーマインのお屋敷に帰った。


 私はノアにぎゅっと抱きしめてもらうと安心するから、子供達にもそれを分けてあげたいと思った。




 新しい孤児院の子供達は私のことを覚えてくれていて、クリムを一緒に食べた。同じ物を一緒に食べた連帯感で、小さな子供を抱きしめる事に成功した。嬉しくなって、その子の事を撫でたりしていると、他の子供がそわそわし出した。ピンときた私は、今まで抱きしめていた子を放して、他の子供を抱きしめた。その子はむふんと息を吐き出して、私に抱きついてくれた。

 今まで愛情をもらえなかった分、この子達は愛情に飢えているんだと思った。

 お昼以外の時間、子供達と1日一緒にいた。



 次の日は子供達全員に治癒魔法を掛けた。服や靴などは、孤児院に入ってから買ってもらったのだろう。比較的きれいな物を身につけていた。また抱きしめ合い、体温を分け合った。

 明日から私は、また来なくなる。子供達に地球通販で買ったぬいぐるみをプレゼントした。初めて貰ったおもちゃに、子供達は嬉しそうに抱きしめていた。


 私は罪悪感を誤魔化しただけだ。私の都合で、子供達の元に来なくなる。いっときの温もりを与えて、離す。残酷な事をしているのかもしれない。私には子供達に強く生きてもらうしか、願うことはできない。


 名残惜しく、お別れした。




 今日は、役場の1階で治療をする日だ。

 私は椅子と机とお金を入れる箱を置いて、手伝ってくれる役人さん達にポジションのお願いをした。


 さぁ治療の開始だ!


 昔からある町らしく、老齢の人が多い。歳がいっている人達は治癒魔法を掛けるだけで、年齢のせいでガタが来ていた身体が劇的に良くなる。腰が曲がっていた人が、しゃんと背を伸ばし歩いて帰るのだ。家族はびっくりだ。


 今回は特別、悪い病気や怪我の人はいなかったので、余裕を持って治療できた。


 夕食前には治療が終わったので、治療に協力してくれた関係者に、果物バスケットを渡して机や椅子、お金が入った箱をアイテムボックスにしまい、カーマインのお屋敷に帰った。


 治療をする日は、お昼も夕食も一緒に出来ない事が多いので、夕食に間に合った私に、ノアがことの他喜んだ。今日は会えないと思っていたとの事だ。熱烈なハグで迎えられた。ちゅっちゅっしていたら、お父様に「子供の教育に良くない!」と怒られた。仕方ないよね。ノアは悪い事はしていないといった表情で平然としていた。鋼の心臓だね。


 食事が終わり、ノアと手を繋いで部屋に帰り、ノアによしよししてもらいながら、眠りについた。





 次の日は隣りの村に飛んで行き、村に歩いて入り、村長に行商をしたいと言えば歓迎されて、場所を貸してもらえた。


 いつものように、商品を広げてお客さんが来るのを待つと、変な動きをした小汚い女の子がこっちに来ていた。サーチを掛けると病気だったので治癒魔法掛けて治し、クリーンを掛けてから私の膝に乗せた。

 女の子はじっとしていて、買い物に来た村人に驚かれていた。


 女の子は、両親を亡くしていて村長の家に引き取られたが、落ち着きがなくあちこち徘徊していて、言葉も怪しかったらしい。

 村人みんな両親を亡くしたショックからそんな行動を取るようになったと思っていたようだが、なんて事ない、さっき私が治癒して病気を治したのだ。

 女の子は病気だった。知的障害だったのだ。もう治したから普通の生活を送れるはずだ。


 村長が女の子を探しにきて、私の膝の上でじっとしている女の子に驚いていた。

 村長に謝られて、女の子を引き取って行った。


 ここの村人も良い人だ。両親を亡くした女の子をみんなで気にかけていたんだろう。


 今日からは、普通の生活が送れるはず。両親が居なくても、ここの村人みんなが家族だ。少しずつ勉強していって、大人になって欲しい。


 安くなった塩を販売しながら、そう思った。


 町からは近い村だったからか、大物は売れなかった。いつものように病気や怪我を治して、一度昼食でカーマインの屋敷で食事を取り、午後からは次の村に向かった。




 次の村に来て、村長に商売をしていい場所を聞き、商品を広げると、阿呆な光景に出会った。

 いい年した男が、結婚している女性に言い寄っていたのだ。神が祝福した旦那がいるのに横恋慕しているのかと見ていると、振られたのかこちらの方へと歩いて来て、通りかかった女性をまた口説いていた。女性はいつもの事と言わんばかりに、男に蹴りを入れて去っていった。


 ポカーンと見ていると、男と目が会ってしまった。男は私の隣に来て「どこから来たんだい?君とは運命を感じる」と私を口説いてきた。

 結婚の印が見える、襟ぐりが広い服を着ているのに、既婚女性を口説いてきたのだ。なんだこの男はと、見ていると何を勘違いしたのか腰を抱き寄せて来たので、ゾッときて、おもわず男の頬を平手で張ってしまった。


 その時小さな雷が私が叩いた所に落ちた。


 え?神の怒り??と思い、気絶した男の顔を見ると、おもわず笑ってしまいそうになった。


 この世界にも地球と同じように、ハート形のような印がある。恋文を書く時に使うような物だ。心配症のノアがこの手紙は受け取ってはいけないと教えてくれた。


 この男の頬にはその形の黒い印に雷が真ん中を貫いている模様がはいっていた。地球で言うと多分、ハートクラッシャーだ。

 この男には気をつけろって意味だと思う。神様も面白い事をする。


 買い物に来た人達が恐る恐る近づいてきて、私が来い来いと手を振ると、男を見て笑い出した。


 どうやらこの男、女と見るや誰にでも近づいてきて口説く迷惑な男だったらしい。次々と男の顔を見た人が笑い出すから、男の周りに人垣が出来てしまった。


 今まで迷惑をかけられた人だろう「いい気味だ」と言う人も居た。


 騒ぎに目を覚ました男が囲まれているのに目を白黒しているのが、またおかしかったのか村人が笑い出した。男は訳が分からずという感じだったが、親切?な人が金属で出来た鏡を見せてやれば、驚愕した顔をして頬を擦るが取れず井戸のある方へ走って行った。


 それを見てまた村人が笑った。


 せっかく来たんだからと、村人が商品を見てくれた。買ってくれる人も多かったので、忙しく会計をした。最後に治癒魔法目当ての人を治療して帰った。


 カーマインのお屋敷に帰ってノアに男に触られた感触を消したくて、ここ触ってと言ったら何か感じたのか、腰に鼻を近づけてきた。あ!クリーンしてなかったと慌ててクリーンした時には遅かった。

 ノアが怒りの表情で「発情した男の匂いがする」と私を離してくれなくなった。


 美形の怒った顔は怖いと、学んだ。




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