大切な命
待ちに待った?待ったけど、真面目な治癒師でインビジブルを掛けて今日の役場に飛行魔法で飛んで行く。
コナーが教えてくれたけど、王都は今宿が取れない程人が居るようだ。今日の治療が怖いな。人の波。
おおー!凄い、最高に並んでる。急がなくちゃ。役場の影になっている所から中に入る。椅子も机も箱も準備してある。椅子に座り治療の開始だ。
私の噂を聞いて藁にも縋る思いで来たって人の多い事多い事。王都民じゃなくて、よそから来た人の方が多いんじゃない?頑張って治療していく。たまに創造魔法も使って。いろんな患者さんがいる。いきなり身体が動かなくなった人とか、指が無い人とか。生まれつき臓器が無い人なんかもいる。ここで創造魔法が光る。人が多くても1人の患者さんに時間をかけないといけない時もある。脳に障害を持っている人もいる。いろんな患者さんと向き合うしかない。
それにしても、時間を食う。4カ所以上に分けなきゃ行けないんじゃないの?……そんなの、やってみないと分からないか。
いつものように重症者にはおにぎりを渡す。おにぎり足りるかな?
お昼になり、私もおにぎりを食べる。なんかむかむかする。体調悪いかな?私は自分に治癒魔法をかける。少し気分が良くなった。おにぎり1個だけにしておこう。
治療を継続する。人が減ってる気がしない。でもこの人達だって、今日を頼りに来た人ばかり。真摯に治療して行こう。
日が暮れてきた。光魔法を飛ばせるだけ飛ばして、並んでいる人が暗くならないようにする。お腹が空いてきたから、おにぎり食べよう。
やっぱりお腹がむかむかする。自分に治癒魔法を掛ける。楽になった。
1日目の治療が終わったのは、夜明けが近づいて来た時だった。お金を回収して、お世話になった人達に果物バスケットを渡していく。みんな、疲れていたけれど笑顔で受け取ってくれた。
私はインビジブルで姿を隠して、今日の役場に飛行魔法で飛んでいく。若いから徹夜なんて大丈夫だと思ってたんだけど、少し頭痛がする。自分に治癒魔法を掛ける。すっと痛みがおさまった。
役場は開いて無いけど、治療を待つ列が出来初めている。役場の裏側でインビジブルを解いて表にまわる。先頭の列の人に挨拶して、椅子と机、お金を入れる箱を用意する。2日目の治療開始だ。
お金を貰い、治癒魔法を掛ける。早く来てくれた人は緊急の治療が多いので、急がなければいけない。役場の人が来るまで1人で患者さんを治療していった。
役場の人が来て、扉が開いたので場所を役場の中に移動して治療を行う。昨日準備してくれてあったのだろう、椅子と机と箱が置いてあった。私は自分で用意した椅子と机と箱をアイテムボックスにしまい、用意してくれた物を使う事にした。
治療を継続していく。朝食の時間になったので、サンドイッチを食べる。おにぎりばかりで良くないと思ったのだ。スッキリと食べられる。昨日はろくなものを食べて無かったので、野菜が食べたかったのだと思った。
かなり早朝から治療を始めたので、長い列は出来ていない。いいペースだ。
朝食を食べ終わったのだろうタイミングで患者さんが増え始めた。早く来ていた人はホッとしている。
私はひたすら治療を続けた。お昼前にお腹が空き、おにぎりを出して食べる。またお腹がムカムカしてきた。おにぎりがいけないのかな?でも、買ったばかりで腐ってはいないはず。治癒魔法を自分に掛ける。
おにぎりを食べ終わる頃、急激に吐き気がやって来た。私は口を押さえて役場の隅に走っていき、お皿を出してその中に、食べたおにぎりをもどした。吐瀉物が入ったお皿はアイテムボックスのゴミ箱に捨てて、倒れた状態だった身をおこす。アイテムボックスからお茶を取り出して飲む。後ろから「聖女様大丈夫ですか!?」とざわめきが聞こえてきたけれど、吐いたら多少スッキリしたので、立ち上がり元の椅子に座る。
治療を続けた。私が毅然としていると、ざわめきは少しずつ収まってきた。何故か聖女様と呼ばれた。
15時頃、お腹が空いてきたので、サンドイッチを食べた。ムカムカはしてこなかった。栄養が足りないと果物のクリムを食べた。スッキリしていて食べやすい。
この日の治療は深夜に終わった。手伝ってくれた皆に果物バスケットを配った。ここでも笑顔で受け取ってくれた。
役場を出てインビジブルを掛けて、飛行魔法で次の治療予定地の役場まで飛んで行った。裏側に回り異空間住居を開けて中に入る。扉を閉めて家に入り2階に上がる。目覚まし時計を朝の4時に設定してクリーンを掛けてそのまま寝た。
目覚まし時計の音で目が覚める。1日目と2日目の体調が悪かったので、自身に鑑定を掛ける。驚いたが納得して無理せずゆっくり起きる。行儀が悪いがベッドでサンドイッチを食べて朝食を取る。変身したままだったので、そのまま異空間住居から出て役場の表に回る。
患者さんが並んでいたので、声を掛けて自前の椅子と机と箱を置き3日目の治療を始める。
1人で治療を行っていると役場の人が来たので、昨日同様アイテムボックスに自前の3点セットはしまい、役場に準備されていた、椅子と机と箱を使わせて貰った。
9時頃お腹が空いてサンドイッチを食べていた後、入り口から騒ぐ声が聞こえて、見るとノアが入ってきた。2日ぶりのノアだ。私は嬉しくなって立ち上がりノアに抱きついた。ノアも抱きしめ返してくれた。思う存分堪能していると「心配した」と声が聞こえてきた。「何故?」と返すと。「昨日食事を吐いたと連絡があった」と言う。
朝に王太子の使いが王都屋敷に来てコナーに手紙を渡したのだそう。コナーは慌てて、瞬間移動扉から領地の屋敷に来て、仕事に行った男性陣の代わりにお母様が手紙を読み、ノアを領主館から呼び、ここに来させたらしい。私は嬉しく思いながら、笑って言った。
「病気じゃないから安心して」
「でも、昨日は調子が悪かったんだろう?」
「そうだね、でもね原因は分かっているの。ノア、私ねノアの赤ちゃんができたの。お腹に子供がいるんだよ」
ノアは驚いたように顔を上げた。私を見て顔をくしゃっとして柔らかく私を抱きしめて泣いた。嬉しいのと心配したので、気持ちが落ち着かなかったみたい。
ノアと2人の空間を作っていたのだけど誰かが言った「妊娠した」と言う言葉を聞いた人々が、わっと「おめでとう」の声を掛けてくれた。私は「ありがとう」と声を返した。
ノアが落ち着いたら治療の再開をしたのだけど、ノアが私から離れない。仕方なく私の横に椅子を出して座ってもらった。私の左手と手を繋ぎ一緒にいる。心配で仕方ないみたいだ。ノアに「今から心配してどうするの、お父さんになるんだよ」と言えば嬉しそうに顔を崩す。今のノアに何を言っても無駄だ。
お昼になったので、ノアに食事を食べてきてと言うと私も一緒に食べようと言う。キッチン組が作ってくれた食事をノアに渡して、私はクリムを食べた。それだけじゃダメだと言うが、妊娠のつわりはこれで問題無いと、取り合わなかった。ノアにおかわりを渡して、治療を続ける。給餌してこようとしたノアを叱り、妊婦だから大丈夫と強めに言った。
ノアに「お母様達が心配してるから妊娠だと安心させてあげて」と言えば、しぶしぶ後ろ髪引かれるように帰って行った。
ノアには強く言ったが、ノアが来た事で私は安心していた。1人だと不安になるが、ノアが来てくれた事で心強くいれる。
まだ沢山いる患者さんに向かい合った。
この日も深夜に終わった。早朝から治療したのがよかったかもしれない。お世話になった人に果物バスケットを渡し、椅子とお金をしまい役場を後にした。インビジブルを掛けて、最後の役場まで飛行魔法で飛んで行った。
昨日同様、役場の裏側から異空間住居に入りクリーンをして、目覚まし時計を掛けて就寝した。
早朝に起きて、よし!最後の日だぞ!と気合いを入れた。ベッドでサンドイッチを食べて異空間住居から外に出る。
役場の表に行き、3点セットを置いて待っている人を治療していく。
今日は頭が2人の身体が1人の女性が来た。裕福な家に生まれたが、何処に行ってもきみ悪がられるから、どうにか治療して欲しいと縋られた。
服を脱いで身体にタオルケットを巻いて貰い、私は創造魔法と治癒魔法をフルに使った。いつもより気合いも魔力も十分だ。身体に無理がないように、慎重に身体と臓器を造っていく。心臓の所で汗が吹き出した。最も繊細な部位だ。気分が悪くなってくるが集中を切らさないように、魔法を掛けて行く。2人も苦しそうだ。肩から心臓を細胞分裂させた後は同じ臓器を作り命を吹き込んでいく。足元まで分裂させ終わり、治癒魔法をかけたら終了だ。汗が足元まで滴っている。双子も同様だ。アイテムボックスからおにぎりのお皿を2つ取り出して、2人の前に置き、衝立を出して2人を隠す。水分補給もしなくてはいけない。ポカリを出してコップに注ぐ。双子は貪るようにおにぎりを食べていた。飲み物が飛び散るが、些細なことだ。私は達成感に包まれていた。自分も水分補給をして、自分と椅子と床にクリーンを掛ける。役人さんは呆然と見ていた。
孤児院にいた時の服を2着だして、クリーンを掛けた2人に着てもらう。サイズは大丈夫だ。2人は涙を流して帰って行った。後片付けをして、衝立をアイテムボックスにしまい、次の人を治療する。
何だか役人さんにキラキラした目で見られている。気持ちが落ち着かない。
お腹が空いたので、サンドイッチを食べる。治療は続ける。あの2人を治療した事に比べれば他の人の治療が簡単に思えてきた。一皮むけた感じだ。
あの治療のおかげか、今日は夜の21時に治療が終わった。お金を回収してお世話になった人全員に果物バスケットを渡した。みんな、ありがたがってくれた。役場から出たら瞬間移動で領地のノアの部屋に移動した。
変身魔法を解いて、ノアの横に潜り込む。安心する。帰って来たんだ。そのまま眠りに落ちた。




