獣人の街と家族写真
領都マルクスにいると幸せだが、私にもやりたい事があるんだ。
ノアに家に一度帰ると言ったら、悲壮な顔をして縋りつかれた。ノアは私が色んな能力を持っている事を忘れてるんじゃないだろうか?
ノアを説得して、ノアの部屋に私の家と繋ぐ瞬間移動扉をつけると約束する。ノアの拘束から抜け出して、王家に渡したのとは違うデザインの扉を創造する。
一組出来たので、ノアの部屋の壁にセットして私の髪を瞬間移動扉のポケットに入れる。瞬間移動で私の家のルーフバルコニーに移動して、靴を脱いで、私の部屋の中に瞬間移動扉をセットする。髪をポケットに入れて、扉を開けてスリッパでノアの部屋に行く。
ノアが泣いていた。私の気配が完璧に感じられなくなったので、パニックになっていたようだ。
ノアの歳は29歳。普通は早くて、成人の15歳に番いに出会える人がいる中で、ノアは遅めだ。私が転生して1年も経っていないのだが、それだけの時を待たせてしまった負目のようなものがある。
私を抱きしめて離さないノアを抱きしめ返して、私はノアの元から離れないよと、お出かけしてもノアの所に絶対、帰ってくるよと声をかけ続けた。
ノアの泣き震えも収まり、ノアに髪の毛を2本貰う。瞬間移動扉のポケットに1本ずつ入れて、ノアを私の部屋へ招待する。靴は脱いでもらい、スリッパを用意して私の部屋に行く。ノアが私のベッドに横になり「カヨの匂いがする」とご満悦だ。3階はすべて私の部屋なので、ノアの部屋も作るか聞いたら、私と一緒の部屋がいいと言った。ちょっとキュンとしながらも、私のベッドは大きいから大丈夫かと確認して、ノアの隣に横になり2人でじゃれあう。ノアの頭を撫でていると幸せを感じる。今日はノアと私の部屋でお休みした。
朝起きてノアの部屋に行き、屋敷のみんなと朝食を食べた後、私は左腕に腕時計を着けてインビジブルを掛け、飛行魔法でマルクスを出て、まだ行った事の無い道を飛んで行く。商人の馬車を追い抜かしたりしながら、街道を進む。途中の村に寄って、怪我人や病人を治し、また飛んでいく。
大きな街があったので、インビジブルを解いて門の列に加わる。身分証を見せて、門を抜け街に入る。この街も綺麗だ。
獣人ばかりの街並みを歩き、いろんなお店を見て行く。野菜を売っている店で、珍しく果物が売っていたので声をかけると、昨日冒険者が持ってきて売ってくれたんだと話してくれる。欲しくなったので、値段を聞くと金貨30枚、30万円だ。驚いたが売ってもらい、アイテムボックスの中にしまう。黄色の果物だったので、食べるのが楽しみだ。
お昼になったので、瞬間移動でマルクスの屋敷に帰り、食堂に行く。ノアが、私から知らない匂いがするとしきりに気にしていた。帰ってきたら、クリーンも掛けなきゃいけないかな?
昼食を食べたら街に戻って、孤児院の場所を聞いて孤児院に行く。孤児院の扉をノックしたら、顔の怖いおじさんが出て来たのでびびってしまい、しどろもどろしながら来た目的を話す。納得してくれたのか、中に入れて貰い子供達の所に連れて行ってくれた。
怖い顔をしたおじさん・ダニエルさんは本当は優しいおじさんだった。体が大人になるにつれて怖い顔になってしまったようで、苦労したと笑いながら話してくれた。奥さんが厨房におり、夫婦2人で孤児院を回しているんだそう。
子供達用の服や靴などを出して、ダニエルさんと2人で子供達の服を選んでいく。
怖い顔をだらしなく崩していたので、相当な子供好きだと予想した。ギャップ萌えだね。
12人いた子供達の服や靴を選び終わったら、奥さんを呼んでもらい、魔法の質問表の質問に答えてもらった。顔の怖いダニエルさんの奥さんだけあって、肝っ玉の強い奥さんだった。豪快な人だ。
質問には全問正解してもらったので、魔法が使えたらどんな魔法が使いたいか聞いたら、ダニエルさんは治癒魔法が使いたいと言い、奥さんはアイテムボックスが使いたいと言った。孤児院でアイテムボックスと治癒魔法が欲しい人が多い気がする。結構切実に欲しいものなのかもしれない。
2人にそれぞれアイテムボックスと治癒魔法を付与して、魔法適正を見る。旦那さんは生活魔法と治癒魔法の適正があったので、付与する前に見ればよかったと後悔してしまった。奥さんは火魔法の適正があった。
それぞれに適正を教えて、『初めての魔法』の本を渡した。子供達に魔法を教えてあげてほしいとお願いすると、まかせてと胸を張って言われた。いい夫婦だなぁ。寄付金を渡して夕食まで、小さい子供と遊ばせてもらい帰った。
クリーンを掛けて、瞬間移動で屋敷に戻る。お決まりの夕食前にノアとハグして夕食を食べる。寂しがり屋の私には合っている旦那様かもしれない。ハグをすると心が満たされる。
翌日、午前中に街に行き、役場でお兄様から貰った紹介状を渡した。少し待ったが、街長の所に案内してもらい、住人たちの治療を3日後に行う事を決定した。
その3日は、ノアの休日でイチャイチャしたり、街の孤児院に遊びに行ったりして過ごした。
3日後、役場の1階で治療させてもらった。いつものように沢山の人が並ぶが、慣れてきたカヨはスムーズに列を捌いていた。この日は珍しく、呪い持ちの人が来たが、冒険者で魔物を倒した時に呪いを貰ってしまったとの事だ。神聖魔法で呪いを浄化して、傷を治す。冒険者の人はずっと苦しかったのだろう。涙を流して喜んでいた。
このような人を見ると思うのだ。治療を続けて良かったと。
治療は日暮れを少し過ぎた時間で終わった。大分効率的に治療できた。お決まりの果物バスケットを配り、クリーンを掛けてマルクスの屋敷に瞬間移動した。
お屋敷のみんなはもうお休みしているので、静かにノアの部屋に行く。部屋に入ったらノアに縋りつかれて、お昼も帰ってこないし戻ってくるのが遅いと詰られた。「ごめんね」と頭を撫でながら、どうにか慣れてもらわないといけないと、決意を新たにした。ソファに座りダンテが作ってくれた夕食を食べて、ノアとお休み。凄い甘えられた。
翌朝は起きるのがだるいので二度寝させてもらい、昼食で起きて、家族に挨拶した。ノアに給餌され、お返しに食べ物を食べさせて、無事食事を終えた。
お昼からはティモシー君とウィル君とお母様方と一緒に空を飛んで遊んだ。
お母様方の為に、飛行魔法を付与した指輪を新たに作って進呈した。お母様方は乗馬用のズボンを履いて子供達と遊んでいる。技術は子供達よりお母様方の方があるので、良い遊び相手になる。たまにお母様方が奔放に飛び回っているが、楽しければいいのだ。
ウィル君もぷかぷか浮かぶだけだったが進歩して、ふわふわ飛んでいる。思うように飛べる事に楽しみを覚えたみたいだ。
こういう機会に魔法の楽しさを学んでもらいたいものだ。
子供達2人が疲れたら、外遊び終了。部屋のベッドで2人並んで寝かせる。
カメラがあったら、この天使の寝顔が撮れるのになぁと思い、もしかしたら出来るんじゃない?と思い、地球通販でフォトプリンターを検索する。
種類が沢山あるけど、画質にこだわりたい!良さそうなフォトプリンターとデジカメを魔道具化して買い、フォトプリンターにインクの種類がたくさん入っていることを確認して、セットする。
デジカメを起動して、天使の寝顔を思う存分撮ったら、綺麗に撮れた画像を選び、フォトプリンターでプリントする。
1人で、写真を見てにまにましていたら、お母様方がきて「何してるの?」と聞いてきたので、笑顔のまま無言で写真を見せた。
お母様方が「まあ!」と驚き、夢中になって写真を見ている。この世界には精密画があるくらいで、写真は無いから新鮮なのか、まじまじと写真を見ている。
地球通販から、しっかりめのアルバムを買って、写真を貼り付けていく。お母様方からも回収して、貼り付け終わったらお母様方にプレゼントする。「宝物にするわ!」と言っているので、デジカメの使い方を教えて、お母様方に隣に並んで貰い写真を撮らせてもらう。撮った写真をフォトプリンターに読み込ませて印刷まで一通り教える。自分達の顔写真が出て来たので、手にすると喜び2人で見ていた。
デジカメとフォトプリンターをお母様方にプレゼントした。お子様達を思う存分、写真に収めて貰いたい。
もう一度、履歴から同じ物を購入して男性陣が帰ったら、集合写真を撮ろうと決意した。
男性陣が仕事から帰ってきて、夕食が始まった。話題はやはり写真のことだ。お母様方が食事が終わったら見ようとおっしゃっているので、自然とリビングに集まるだろう。
皆で食事を堪能したら、リビングに移りお茶を飲みながらアルバムを見る。私は執事の人に相談しながら、どこが写真写りがいいか考える。
決まったら椅子に座る人は座って貰い、お子様たちも膝に抱えてもらうなどして、落ち着いた。後の人は椅子の後ろに回ってもらい、執事の人に使い方を教えて私は、ノアの隣でスタンバイした。
執事の人の掛け声で全員笑顔を作り、デジカメに収まった。私はデジカメを貰い、机の上にフォトプリンターを出して、今の写真データを取り込み人数分プリントした。全員に配り、ウィル君はまだ写真が分からないから、ウィル君用の写真をアルバムに貼り付けてもらった。
皆、感心して写真を眺めポケットにしまっていた。初めての家族写真は大事だよね。私は写真立てを購入して写真を入れて、希望者には写真立てをあげた。自分の部屋に飾っておこう。
ノアに2人だけの写真が欲しいと言われたので、執事さんに協力してもらい、写真を撮った。これは2枚プリントして、写真ケースに入れてノアに渡した。私は写真立てだな。ノアが嬉しそうにポケットにしまったので、良かった良かった。
とりあえずアイテムボックスにしまい、明日、部屋に置きに行こう。ノアと2人で部屋に帰った。




