襲撃の後
今日の夜どうしよう?
もう日差しが斜めになってきた。ミーチェちゃんは大泣きした後飲み物を飲んで、今は疲れが出たのか私にもたれてうとうとしている。
さっきの襲撃を思い出すと、ちょっとした後悔が出てくる。
馬の怪我。ポーションじゃなくてよかったんじゃないか。治癒魔法か回復魔法でも覚えてたらよかったんじゃないかなと思うのだ。傷を治すなら意味的に治癒魔法かな?治癒魔法創造!ミーチェちゃんに使ってみる。イメージイメージ。
「ヒール」
ぽわんと白に金色がかったモヤみたいのが出て全身に行き届いたらスッと消えた。これで今度は大丈夫だろう。
馬は人に慣れているのか、逃げたりしないで近くの葉っぱをモシャモシャ食べている。馬車に繋がれてた器具は外したからね。もう馬車壊れて使えないし。
「ぅゔ……」
ああ、やっと女性が目を覚ました様だ。だるそうにしながら身を起こす。
「……ミーチェ、カルロス?」
ウトウトしていたミーチェちゃんは呼ばれたことに気がつき、勢いよく女性に抱きついた。少し涙が出て来たようで、小さい声でウッウッと泣いている。
女性は抱きついたミーチェちゃんの頭を撫ぜながら、辺りを見渡す。男性を見つけた女性はミーチェちゃんを抱える様にして男性の近くに腰を落とした。恐々としながら、男性に手を伸ばし息を確認し、身体の暖かさにホッとしたのか涙を流した。
親子感動の再会なのだか、このままここにいるわけにもいかない。
「あのーすみません、私はカヨといいます。
熊に襲われていたあなた方を助けました。まずは、馬車を片付けたいので協力してくれますか?」
女性は家族以外目に入らなかったのか、びっくりした
様だったが丁寧に挨拶してくれた。
「助けていただきありがとうございます。私はモニカです。旦那のカルロスと娘のミーチェ4歳です。馬車の片付けとは……」
馬車は斜め上から潰されたのか老朽化のためかぐしゃぐしゃだった。
「モニカさん達の荷物を取り出さないといけないでしょう?お手伝いしますから。」
「まぁ!それは!助けていただいた上にお手伝いまで……ありがとうございます。ミーチェお父さんを見ててくれる?」
「うん」
私は立ち上がり、モニカさんと馬車に向かう。木などが尖ってささくれていて、危ない感じだ。
「いらない廃材は私がアイテムボックスの中にいれるので、言って下さい危ないので」
「アイテムボックスが使えるんですね。助かります」
2人で手分けして無事な荷物を運びだす。2人で片付ければ早い。道の上は木屑と荷物だけになった。
荷物が結構な量だ馬車が無ければ運べないんじゃなかろうか。
「失礼ですが、家族で引っ越しとか……」
「そうなんです。今まで住んでいたところに居られなくなってしまって……」
冷静になってよく見れば、女性の着ている服は結構いたんでいた。身体も平均より痩せているんじゃなかろうか?ええい!ここまで面倒みたら乗り掛かった船だ。最後まで面倒見よう!
「理由を伺っても?」
「実は……」
なにやら疲れた様子のモニカさん、すぐに話し出した。誰かに聞いて欲しかったのかもしれない。
話はこうだ、今までは家族で村に住み農家として暮らしていたそうだ。だがいつからか魔物が出て来る様になり村の作物は大ダメージ。そこで誰かが言い出したようだ、モニカさんの畑だけ被害がないと。もちろん言いがかりだ。でも、小さい村社会、魔物被害で村のみんなは気が立っている。陰口に、罵倒。最近では身の危険も感じる様になって来た。モニカさん達は心身共に参ってしまい、村人の悪意から逃げるように馬とボロの馬車を買い家族が安全に暮らせる場所を目指して村から出てきたようだ。
いくら蓄えがあるかわからないが、無謀だ。慣れない旅に気疲れ護衛も無しにむしろよくここまで来れたものだ。理由を聞けばさらに放ってはおけない。
でも私の能力は特殊すぎる。普通の人には毒にもなるだろう。
けれど、一家が街で暮らすのも大変だろう。新たな村も迎え入れてくれるかは、わからない。
悩ましい。でも放ってはおけない。
制約魔法は、どうだろう?私の能力を誰にも話せない様にする。いいんじゃない?話そうとすれば、声は出ず、紙に書こうとしても手が動かなくなる。いいんじゃない?まぁ私も根無草だけども。
あっ旦那さんも起きた。さてお話だ。