流れの治癒師 2 神官の印
あれから3日間、私はイワンの孤児院に遊びに行った。
思う存分に小さい子達と遊べて満足だ。
街に御触れが出されたみたいで、街はちょっと浮き足立っている感じだった。
私の詳細は伏せて、治癒師が2月の1週の風の日に役場1階にて1人銀貨1枚で治療する。希望者は当日役場に来るように。と通達されていた。
怪我や病気の人だけで無く、この機会に健康に不安がある人も行くみたいで、当日は住人やたまたま街に来ていた商人なども行くような事を街の人達が話していた。
今、宿屋は宿泊の人でいっぱいのようだ。
当日何人来るのか心配になってきた。
私は地球通販で、おにぎりを大量に買い、お皿にのせてアイテムボックスに保存中である。ついでに、果物を入れるのにちょうど良さそうなバスケットを大量買いして、果物を綺麗に見えるようにバスケットの中に入れていく。アイテムボックスの中は時間が止まって腐らないから、過剰なくらい詰めていく。
準備万端で、当日の朝。
私は変身魔法で真面目な治癒師に変身して、インビジブルをかけて飛行魔法で街の上から役場に行く。もうかなりの人が長蛇の列を作っていて、街の兵士の人達が列を整理している。
私は役場の階段の影でインビジブルを解き、階段から降りて役場1階に着いた。
私の事を見知っている役人さんが、すぐに近くに来てくれて、私を用意していた椅子に座らせてくれた。
私の両隣に役人さんが2人ずつ着いてくれて片方には机と、お金を入れる為だろう箱が置いてあった。
皆が位置に着いたら患者さんを役場の中に入れていく。治療の開始だ。
患者さんが誘導され、右側の役人さんに銀貨1枚を渡し、私の前に来て治療を受けると、左側の役人さんに誘導されて帰って行く。それをどんどん繰り返す。
たまに、大怪我や大病を患っている人が来たら治療の後におにぎりを2・3個渡し、帰ってもらう。飢餓状態になるからだ。我慢出来ず、食べて帰る人もいた。
余りにも身なりが汚れている貧困層の人にはクリーンをかけて、治療してからおにぎりを持てるだけ渡し帰ってもらう。今日の飢えだけでも解消して欲しかった。
付き添いの人を連れて担架で運ばれてくる人もいた。治療をすると、感激して泣きだす人もいたので、役場の人が頑張って誘導していた。
油断出来ないのが、健康そうで安いから一応治療してもらおうかなという人だ。本人は気づかず大病を患っている場合もある。人間の身体は繊細だ。大腸にポリープが出来ているだけで、便秘になる人もいる。便秘で死ぬ人だっているのだ。
どうにかこうにか、役場の人に手伝ってもらい治療を続けていく。集中力が切れそうだ。魔力は無限大なのだが。
お昼になると、お腹がいつもより空いた。頭と魔力を使って治療しているからだと思う。でもそんな事、治療に来る人には関係ない。早くから並んでくれている人もいるのだ。
私は、おにぎり片手に口をもぐもぐしながら治療した。お腹が空いてどうしようもないのだ。同じようにお腹が空いている患者さんには悪いが、役人さんは交代で休憩を取っていても、私の代わりはいないのだ。座らせて貰えるだけ楽なのだが。
子供が治療に来たら、可愛いくて果物をあげてしまった。贔屓ぐらい許してくれ。だって可愛いんだもん。
治療は夜まで続いた。この街ってこんなに人がいたんだ。暗くなったら、光魔法であかりを届く限り照らした。
結局、終わったのは深夜だった。私は、山となったお金を回収して、手伝ってくれた人皆に用意しておいた果物のバスケットを渡して、お礼を言った。役人さんも兵士の人も疲れていたが、みんな笑顔で受け取ってくれた。
街長に呼ばれたので、部屋に行ってみると魔道具の灯りで照らされていた。
「今日は街の住人達の為にありがとう。君の言っていた事は本当だった。だが、他の場所に行って同じ事をしようとしても聞き入れない、信じられない人もいるだろう。そこでだ、私が紹介状を用意した。この紹介状を渡せば融通してくれるだろう。君の頑張りにこんな物しか用意出来なかったが、今後の活躍に期待している」
街長から、紹介状を手渡された。私は果物のバスケットを出して、街長に渡す。
「今回、私の事を信じて下さり、ありがとうございました。感謝の気持ちにこのバスケットを受け取ってください。沢山の人をトラブルなく治療出来たのは、街長と役場の皆さん、兵士の方のおかげです。ありがとうございました」
私は感謝の気持ちにお礼をする。街長に治癒魔法をかけてから、お別れの挨拶をして部屋を後にした。
アイテムボックスに紹介状をしまう。
最後に役場の皆さんに頭を下げて、役場から出たら飛行魔法で街の外に飛んで行った。
異空間住居を開けて中に入り、変身魔法をとく。今日は疲れた。お腹も空いたが、お風呂に入ってゆっくりしたい。異世界に来て初めてのお風呂だ。猛烈に温かいお湯に浸かりたかった。
お風呂を沸かし、髪留めを取り、服を脱いでお風呂に入る。湯気が気持ちいい。髪と身体をささっと洗い、湯船に浸かる。口元まで浸かったら満足の息が溢れた。温かいお湯は身体の緊張をほぐしてくれる。
ああ、今日は気を張ってたんだな。疲れまで抜けていくようだ。疲れていても、やりきった満足感はある。この街だけでも、沢山の怪我人・病人がいた。これから幸せな生活がおくれればいいな。
眠気が来た所で、ハッとする。お風呂から出ないと。お湯を抜き、明日クリーンをかければ良いと風呂をでる。創造魔法でドライの魔法を創造し、自分にかける。一瞬で水気が飛んでいった。
便利便利。服をアイテムボックスから出して寝巻きに着替える。
ダイニングに行き、地球通販で1人用の鍋料理を出し食べる。お風呂でほかほかになった所にあったかい鍋、幸せを噛み締める。
全て運命神様とメンリル様のおかげです。ありがとうございます。カヨは心の中で感謝の祈りを込めた。
途端、右手の甲が熱くなる。カヨは箸を置いた。なんだろう、手の甲が熱い。カヨは右手の甲を見た。紋章のような、入れ墨よりもくっきりとした印が刻まれていた。
びっくりしすぎて眠気が飛んだ。これ、神官の印だ。そんなに真剣に祈ったかな?眠気で心から祈ったかもしれない。
確かルンカさんは神殿に勤める義務は無いと言っていた。印さえ隠蔽してしまえば、世間には知られない。私は隠蔽魔法を手の甲にかけたが、隠蔽されない。神の力が強いの?だから隠蔽出来ない?私は変身魔法を自身にかけた。がやっぱり消えない。溜まってた疲れがどっと来た。仕方ない、明日考えよう。
食事の続きをする。ちらっちらっと手の甲の印が見える。気になる、でも今は食事を終えて一刻も早く眠りにつきたい。
食事が終わったら温かいお茶を飲み、2階の寝室にいく。手の甲の事を考えなかったら、今日の私は100点満点だ。
自分自身を誉めてやりながらベッドに入る。沈み込みように眠りに着いた。




