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【旧作】私は異世界で自由に生きる〜子供達に癒される〜  作者: 春爛漫


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流れの治癒師 1

 子供達と別れた後、なんか人助けをしたい気分になった。

 人に感謝されると嬉しい?うん、嬉しい。

 人を笑顔にしたい?うん、笑ってくれると嬉しい。

 人に嬉しがってもらいたい?悲しいより嬉しい方がいい。

 人を喜ばせたい?喜んでくれたら嬉しい。

 人を幸せにしたい?幸せに出来るのならしてあげたい。


 今の自分に何が出来るだろうか?沢山の能力を貰った。贅沢なくらいだ。苦しがっている人がいたら助けてあげたい。でも無条件で助けるのはダメだ。その人の生活を知らないと。

 幸いこの世界は神様がいて、凄い悪い人には天罰が下る。でも、それ以外は手を出されていない。貧しい人がいても、病気の人がいても、食うに困ってる人がいても、神様は大体放置だ。神様に真剣に祈った人は救うみたいだけど。神官がいい例だよね。

 気温も温暖で過ごしやすい。麦は強い。野菜は美味しい。この世界は神様が人の為に作ってる事はわかる。勤勉に働けば生活していける。

 でも、それって学があって、健康じゃなければ暮らせない。足がなければ、手がなければ、五感が正常でなければ働けない。働けなければ奴隷商で借金奴隷になって最低限生きていける。

 でも、それって生きてるって言えるの?身体は生きてても心は死んでるんじゃない?前世の私みたいに。


 誰かに本当は助けて欲しいんだよ。




 私は人影のない道に入り、異空間住居に行く。2階に上がり姿見の前に立つ。変身魔法で真面目な治癒師に変身する。うん、凄い真面目そうになった。服もちょっと神聖そう。

 私は誰にも見つからないように、異空間住居から人影のない道に出た。身分証はカヨだから名前はそのままでいいや。偉い人は何処だろう?役場に行って聞いてみよう。

 通行人に役場の場所を聞く。マップにチェック。歩いていく。


 役場に着いた。思ってたより大きい。中に入ると受付がある。


「すみません、私はカヨと言います。流れの治癒師です。1番偉い人に会いたいのですが、どうしたらいいですか?」


「カヨさんですね。偉い人は、街長になりますがご用件は何でしょう」


「街長ですね。用件は、私は、どんな病気や怪我でも治せるので、銀貨1枚で商売したいです。どんな病気や怪我でも治します。それを、街に周知して治療する場所を提供してほしいです。どれだけの人が来ても大丈夫です」


「……少し椅子に掛けてお待ち下さい。身分証をお持ちでしたら、お貸し願いますか?」


「はい。身分証です」


 私は、椅子に腰掛けて待つ。


 結構な時間待った。すぐに追い払われ無かっただけマシかな。しかし、いつまで待たされるのだろう。


 私の近くに役人さんが来た。


「カヨ様ですね。街長がお会いになられます。着いてきて頂けますか」


「分かりました」


 やっと偉い人が会ってくれる。念の為、結界を張っておこう。役人さんに着いていく。3階まで上がって奥の部屋。役人さんがノックする。


「街長、カヨ様をお連れしました」


「入りなさい」


「失礼します。カヨ様こちらへ」


 促されて部屋に入る。初老のダンディーなおじ様だ。目力強!

 私は胸に手を当ててお辞儀する。


「はじめまして、流れの治癒師カヨと申します」


「はじめまして、街長のガルバディスだ。椅子に腰掛けてくれたまえ」


「はい。失礼します」


「受付から話しは聞いている。君は街の病人や怪我人を銀貨1枚で治してくれるそうだね。身分証は返すよ。領都カリオンで魔道具の登録をしているようだが、お門違いではないかな?」


「いいえ。お門違いなどではありません。魔道具の登録もしておりますが、冒険者ギルドに登録して魔物の討伐も経験しております。ですが、治癒魔法も神聖魔法も使えます。ポーションの用意も出来ます。ただ、人より多くのことが出来るだけです。この街すべての人を治療しろと言われても私の魔力量なら出来ます」


「ウソでは無いと?」


「私は嘘など一つも付いておりません」


「治療を無料にしない、適当な金額にもしない理由は?」


「人に楽を教えてはいけません。無料で治療したならば、聖女と崇められましょう。しかし、人は慣れる物です。次に対価を求めたら、何故無料ではないと憤るでしょう。適当な金額にしないのは、私が少しでも多くの人を助けたいからです。しかし対価は貰います。例え銀貨1枚でも」


 街長はしばらく考えた。経験からして、この街全ての人を治療出来る訳が無いと。だが、目の前の娘大事を述べても動じない。ここが裁判所であればと思う。真偽を判別する事が出来るのに。だが、もう少しで実力が分かる。ノックの音がした。もう少しで化けの皮が剥がれるぞ。


「入れ」


 入って来たのは車椅子に座った、両腕・両足が無く、目も見えず顔色が悪い、まだ20代の男性だった。実は目に見えない所にも傷がある。元から障害ももっていた。言葉が話せないのだ。

 彼は運が悪かった。ある意味では幸運の持ち主だ。

 まだ両腕・両足があった頃、街道を馬車で走っていて、魔物に襲われた。その中で、ただ1人の生還者だ。言葉も話せぬまま襲われ、生きたまま手足を食われたせいで、精神にも異常をきたしていると思われる。

 この男を救えるか?


「カヨ君。君に彼を銀貨1枚で治してほしい。お願い出来るかな?」


「分かりました。準備させて下さい」


 カヨは彼を治せる。しかし、治したらすぐに彼は飢餓状態になるだろう。食事の準備をせねば。

 カヨはアイテムボックスから大きなお皿と、大量買いしてあったコンビニおにぎりを取り出した。せっせと包装を剥がし、お皿におにぎりを置いていく。


 その姿は、治癒魔法を知らない人から見たら異様な行動だった。


「君は何をしているのだね?」


「彼は肉体の多くを欠損しています。このまま治癒魔法をかけて身体を治したら、激しい飢餓状態になります。その為の食事の準備です」


 部屋の中でカヨだけが動き続けた。


 準備が出来た。食事も飲み物も万全だ。


「今から彼を治します」


 カヨは彼にサーチをかけた。悪い所だらけだ。治癒魔法を信じて、最大魔力を注げば治るだろう。カヨはイメージする。彼が元気で、五体満足で居る所を。治癒魔法!最大魔力で!


 はたから見れば、カヨが彼の側に立ち、手を彼に向けて無言で立っていた所にいきなり光がほとばしった。


 街長は半目で見ていたが凄い魔力が放出されているのが分かる。街長は魔法が使えた。だから魔力の流れがわかるのだ。彼女は本物かもしれない。光がおさまった頃、傷だらけの彼はいなかった。五体満足な彼がそこにいた。




 治癒魔法が成功した。再度サーチをかけてみても異常は無い。でもカヨは焦っていた。机の上に置いたお皿を手に取り、おにぎりを持って彼の口に当てる。

 凄い勢いで彼が噛み付いてきた。飢餓状態だ。カヨは結界を身体に張ってあるので、噛み付かれても大丈夫だ。勢いは怖かったが。わんこそば方式で彼に給仕する。たまにお茶を飲ませる。凄い勢いで飲み物も減っていく。お皿のおにぎりが全部無くなる頃、食欲が収まって来たようだ。最後にお茶を飲ませる。結構汚れていたので、クリーンをかける。カヨは彼に話しかけた。


「すべて治りましたよ。言葉も話せるはずです」


 彼はカヨを見た。自分の手足を見て声をあげて泣いた。悪夢は終わったのだ。



 街長は黙って全てを見ていた。カヨが聖女に見える。彼女は本物だ。話せなかった彼が声を出して泣いている。泣いているという事は思考が出来ているという事だ。声を出しているから言葉も話せるようになったと思ってもいい。彼は有力者の子供だ。健康になったなら、両親も喜ぶだろう。完敗だ。



 治した彼が出て行った。彼の心が強ければ普通の青年として生きていけるだろう。カヨはお皿とペットボトルをアイテムボックスにしまい、椅子に座る。街長に一言。


「治療、銀貨1枚です」


 街長が笑い出した。なんだよ、さっきまで喧嘩腰だったじゃんよ。笑いながら銀貨1枚を取り出し、こちらに渡してきた。まいど。


「明日から3日だけ待ってくれ。御触れを役場から街全体に出す。場所はここだ。役場の1階でやる。明日から3日後、1人銀貨1枚でよろしく頼む」


「分かりました。場所を提供していただきありがとうございます。それでは失礼します」


 カヨは階段を降りて、役場から出て行く。あ〜緊張した!でも彼、治ってよかったな。本人良かったと思ってるか分からないけれど。適当な日陰でインビジブルをかけ、飛行魔法で飛ぶ。

 明日から3日後かぁ。結構待つな。街全体に話しが行き渡るまで、結構かかるって事だよね。最後、街長が協力的になって良かった。


 待ってる間、孤児院に遊びに行こ!

 


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