開拓村 到着!
朝、起きて着替える。1階に行き顔を洗い歯を磨く。髪をとかしたら、ダイニングで朝食。家にいるみんなで食べるけど、強制では無いのでお寝坊さんがいても気にしない。
朝食を食べ終わったら、誰かがミーチェちゃんを孤児院に送り届ける。
他の人はのんびりしたり、開店の準備をしたり、家事をする。
今日の私は、待ち人がいるので本を読みながら、リビングで待つ。
バタバタと慌てたような足音がして、ペイターとリンが顔を見せた。
「おはよう。良く眠れたみたいね」
「おはようございます!起きるのが遅くなってしまいすみませんでした」
「おはようございます!」
「顔を洗ってきて、朝食はいつでも食べれるよ」
2人は顔を洗いに行った。その後すぐにダイニングで朝食を食べ始める。私は本の続きを読んだ。
2人共、出かける準備が出来たので、パルコに数日留守にするから、魔道具屋の店番をお願いして出かける。
開拓村への旅?だ。ペイターに道案内をしてもらい、人通りが多い南門から出て歩いて行く。
5分くらい歩いたら、2人に止まってもらい、アイテムボックスから自動車を出す。ドアを開けて2人に乗り込んでもらい、自動車に結界を張る。
2人共おっかなびっくりでぎこちなかったけど、運転を始めると、ちょっとして慣れたのか車の中を興味深く見ていた。ペイターに途中のナビはお任せして、前の馬車を追越しながら街道を進んでいく。
変わり映えのない道を進みながら、ペイターとリンはお話ししている。どことなく楽しそうだ。
お昼前になり、車を止めて2人に車から降りてもらう。車をアイテムボックスに仕舞い、2人に制約魔法を受けてもらう。
「カヨの秘密・魔法・能力を秘密にすること」
異空間住居の扉を開けて2人に入ってもらう。2人共びっくりして、こわごわと中に入った。家の玄関で靴を脱いでもらい、家の案内をする。2人はトイレに行った。我慢していたみたいだ。ダイニングで、ダンテに作ってもらった食事を出し3人で食べる。
「カヨさん、ここは……」
「ここは異空間住居。持ち運べる家みたいな物かな?安全に旅出来るよ」
「そんなものがあったなんて……」
「多分わたしだけの能力、だから制約魔法したでしょ?誰にも教えられなくなるの」
「あ!そうか、それで……」
「内緒にしてね」
了承の返事をもらった。便利で安全だからね、使っていくのだ。
食事が終わり少しゆっくりした後、異空間住居から出て、また車で走り出す。結界はちゃんと付けてるよ。
運転してたら、動物が飛び出して来て、ひいてしまった。凄い衝撃だった。後ろの席に座っているペイターとリンも悲鳴をあげた。車から降りようとして、外を見たら、大きな犬?に囲まれている。
とりあえず、全員に結界を張り、ペイター達に戦闘をするか確認する。
「ペイターとリン戦ってみる?開拓村に行ったら、多分自分達で戦わないといけなくなるよ。今なら結界張ってあげるから、安全に戦えるし」
「魔物との戦闘は久しぶりですが、頑張ってみます」
「私も戦います」
魔物だったのか、じゃあ犬じゃなくてウルフか。2人が外に出て、魔法を使う。
ペイターは地面から杭を出し魔物を仕止める。リンは動いているウルフに向かって水を鋭く細く出して、ウルフを切り倒していく。初めてとは思えない戦闘だ。何処かで訓練でもしたのかな?
時間はかかったがウルフを全部、倒せた。逃げようとしたウルフの周りに結界を張って外に出れないようにしたんだけどね。
私はウルフを鑑定する。肉は食べれるみたいだ。
「2人共凄いね!全部倒しちゃうなんて!ウルフは食べれるみたいだからペイターが持って行きなよ」
「孤児院で訓練しましたから……」
リンに話しを聞くと、孤児院にいた時にルイーネと数人の子供達で魔物のいる森に行き、2泊3日で魔物を倒す訓練をしたようだ。孤児院、そんな事もしてたんだ。実戦的だね。だから2人で歩いて開拓村へ行こうとしたんだ。
ペイターが魔物を全部収納し終えたようだ。
また車に乗り、開拓村を目指して走り出す。主道から道を外れたからか、あまり使われていない道は兵士の人の見回りから外れちゃうのかな?ちょこちょこ魔物っぽいのが見える。
2人にどうして魔物だと分かったのか聞くと、魔物は目が赤いんだそう。分かりやすいね。
日が暮れてきたら、今日の移動は終わり。異空間住居に入り、食事にする。
2人に風呂に入った事があるか聞くと、無いらしい。一度は経験してもいいんじゃない?と言い、風呂の使い方を教え、私はリビングに。
乳製飲料を飲んでうとうとしていたら、リンが風呂から出てきた。どうだった?と聞けば、水を贅沢に使いお湯だったので温かかった。貴族様になったみたいだと興奮ぎみに答えた。
リンにドライヤーを渡し、髪を乾かすように言う。ほどほどに長い髪だから、時間がかかった。ドライヤーはあげると言い、1階の寝室に案内する。今日はここで寝てねと言い、私は2階へ行き就寝した。
翌朝、いつも通りに起き出し、出かける準備をする。
1階に行くと、2人は起きてダイニングにいた。食事を出し、3人で朝食を食べる。作り置きだけど、今日もおいしい。食事がおいしいと力が湧いてくる。
「多分だけど、徒歩5日の距離じゃ、今日の夕方か明日のお昼までに着くと思うの。着いたら何をするの?」
「そっ、そんなに早く着くんですね。国が主導している開拓村なので、着いたら責任者の人に挨拶に行って、開拓の仕事を割り振ってもらいます」
ふーん、そうなってるんだ。開拓村についてからも、ペイターとリンと少しの間一緒にいようかな。
異空間住居を出て、車に乗り走り出す。今日はどこまで行けるかな。2人にトイレを我慢しないように言って運転を続ける。途中にある村や町は素通りだ。
私、運転してると脇腹が痛くなってくるんだよね。妹に言ったら「力の入れすぎだ」って言われたっけ。
でも、障害物に当たらないように、事故らないようにしてたら、自然と力が入っちゃう。これは治らないなぁ、クセになってる。イタタってなったら休憩しちゃおう。
それにしても、一定間隔で村や町があるなぁ。旅人の為かも。宿があるとか、異空間住居がある私には関係ないけどね。
9時くらいにいったん異空間住居で休憩を取った。トイレ休憩と、皆でアイスを食べた。2人は初めて食べたみたいで、2人で冷たいね、甘いね、おいしいねと言いながら食べていた。ハートが独身の私に飛んできそうだ。ラブラブだな2人共。
お昼まで、もうひとっ走り。事故らない様に進みますよ。でもね、小型の魔物?が車の前を横切るんだわ。私の小さな心臓が悲鳴をあげる。日本じゃないから、引いたら食糧になるんだけどね。
小型といえど、野生の動物?魔物?が沢山のいる所で、ペイターとリンは大丈夫かね。心配だわぁ。
お昼になり、異空間住居で昼食を食べる。2人共もりもり食べてる。結婚したって言っても、まだ成長期だもんね。お腹空くよ。2人共開拓村に行っても3食食べれる様に頑張るんだよー。カルロス一家みたいに2食で痩せちゃダメだからね。
食休みをしてから、また車に乗り走り出す。魔物よ飛び出さないでくれ。何事も?無く走り続ける。
日暮れ前に多分開拓村だと思われる所まで来たけど、時間も微妙だから今晩は異空間住居で休む事にした。少し早い夕食を食べ、2人はお風呂に入るそうだ。ダイニングの机の上に飲み物だけ置いて、私は2階に行く。ベッドでゴロゴロしながら本を読む。今度は魔物事典みたいなの買おうかな。
本を読んでたらいつのまにか寝ていた。朝だ。
そういやメンリル様にもらった旅装、丈夫みたいで痛みはないけど、劣化防止の付与かけておこう。服と靴に靴下に。
3人で朝食を食べる。異空間住居では最後の朝食だ。ヨーグルトを出してあげる。甘くて果物が入ってるやつね。やっぱり甘いものが出ると嬉しそう。
異空間住居から出て開拓村まで歩いて行く。ペイターとリンが並んで歩いて、私は後ろだ。ちらほらといる人に責任者の人の場所を聞いている。比較的おおきな建物の中に入る。中にいる女性に何処の部屋に居るのか聞いている。案内され扉をくぐると威圧感のある壮年の男性がいた。
「はじめまして、入村希望のペイターとリンです」
「はじめましてだな、俺はこの開拓村のリーダーをしているバルドラだ。入村希望者3人か?若くていいな。入村を許可する」
「あっ、私は付き添いです。村に馴染んだのを見届けたら帰ります」
「そうなのか……若い人手は歓迎なんだがな」
バルドラさんが村を案内してくれるそうだ。建物を出て村を少し歩く。
「森の切り開きは終わって、切り株も抜いた。井戸も掘った。今は家を建てて、畑を作っている所だ。もう一踏ん張りで村が形になる。いい時にきたな」
私はバルドラさんに聞く。
「土地の割り振りは終わったんですか?」
「ああ、終わっている。後はお前達の様に、入村希望でくる奴等の分が残ってるがな、家はここにいる古い奴等から作っていってる。お前達は1番最後だな」
「家を作れれば、自分達で作ってもいいですか?」
「作れれば良いぞ!土地を割り振ってやる」
とロープを持ってきて案内してくれる。農業もするから結構大きい土地だ。
「このロープの中は好きにしてくれてもいい。何かいる物があれば俺に言ってくれ」
「出来上がった家の中を参考までに拝見したいです。いいですか?」
「いいぞ!着いてこい」
バルドラさんに着いて歩いていく。ペイターとリンは不安そうだ。
着いたのか、家の近くにいる男の人に声をかけている。了承を取れたようだ。案内してくれるつもりだろう、バルドラさんも一緒に家の中に入る。私はペイターとリンに問いかける。
「ペイター、リン、あなた達の家は私が建てるわ。2人には、この家をみて自分達の家をどんな家にするのかイメージしてもらいたいの。出来る?」
「カヨさんがそう言ってくれるんなら家は建てれるんでしょう。僕とリンは自分の理想の家を考えたらいいんですね?」
「そういう事、楽しんで案内して貰いなさい」
2人は返事をしてくれた。さっきみたいに不安そうな顔じゃない。希望に満ちた顔だ。
積極的にバルドラさんに質問している。私も家の作りをしっかり見ておく。
家の見学が終わったら、バルドラさんと家の主にお礼を言う。
私はバルドラさんに、どんな施設が建つのか聞く。
「そうだな、教会と雑貨屋くらいだな。肉は狩人から買ってくれ。あとは行商人が来る予定だから足らない物や売りたい物を売買してくれ。売りたい物があれば、雑貨屋でも買うぞ。今朝、来てくれた建物は集会所になる予定だ」
ありがとうございますとお礼を言う。バルドラさんと別れ、ペイターとリンの土地に3人で行く。ロープの中に入り、地球通販でみんなが座れる椅子と机を購入する。目の前に出てきた。
2人に座るように言い、紙と鉛筆を出す。大体の家の設計図を作るのだ。
「2人の中で自分の家のイメージがわいていると思う。それを今から紙に書いていくから、どんどん希望を言って」
2人共返事をして、意見を出す。私はその話しを紙に書いていく。結構な要望がでた。その要望をもとに、間取りを平面で書いていく。
お昼になったので、アイテムボックスから食事を出し3人で食べる。外で食べる食事もいいものだ。クリーンで食器を綺麗にして片付ける。
午前の続きで間取りを作っていく、私も意見を出し、パンを焼くオーブンを置くスペースとか、将来の子供部屋だとかアドバイスしていく。出来た間取り図を手に取り、椅子と机をアイテムボックスにしまう。
ロープから外に出て、紙に書いた図面をしっかりと頭に焼き付ける。地面に手をついて、家を建てるスペースを圧縮し平らにする。もう一度図面を見て目を閉じる。創造魔法、衝撃に強く劣化しない家を創造!どんと目の前に家が現れた。2人はもう言葉にならない歓声をあげている。
2人の歓声を聞いて、何だ何だと人が集まってしまった。「問題ないです。何もないです」と言って村人を散らそうにも、来た人が家を見て固まるから人が減らない。普通の田舎の2階建て住宅なんだけどなぁ、こっそり地下室作ったけど。
騒ぎを聞きつけたバルドラさんが来て、家を見て固まったけど、流石責任者。家が羨ましくて文句を言う人には「自分1人で作れるなら作れ!」と、ただ興味で来た人には「仕事に戻れ」と声をかけて人を追い返してくれる。
残ったのは、私達3人とバルドラさん。
「どうしてこんな事に?」
「ただ家を作っただけですけど」
「さっき別れてから時間がそんなにたっていないが?」
「魔法で作りました」
「魔法が使えるのか」
「ペイターとリンも使えますよ」
バルドラさんは疲れた息を吐き出した。手を目もとに当てて「もっと常識の範囲でなぁ」と呟いている。私達3人は集会所に連行された。




