孤児院で生活 16 結婚
カヨ達が孤児院に来て1月と4週経った頃。カリオンの街に変化が訪れた。街が賑やかなのだ、孤児院にいても声が聞こえる。
「何でしょう?」
「さぁ?分かりませんね」
「私ちょっと見てきます」
カヨは孤児院から出て騒ぎの大きい方へ歩いて行く。周りもそんな感じだ。街の主要道路の方へ歩いて行くと人の行き止まりが見えた。近くの人に「何かあるんですか?」と聞いてみる。「王族が来るって話だよ」と教えてくれた。「ありがとう」と言い孤児院に戻っていく。多分見えても馬車だけだろう。王族が街に出てきたら危ない。孤児院に土産話が出来ただけで満足だ。孤児院に入ると昼食が始まっていた。食事をよそい、席に着く。
「外の騒ぎ何だったの?」
モニカさんが聞いてくる。
「王族が来たそうですよ」
と答えると、ちょっと大きな声で「王族!?」と叫んだ。周りが何だ何だと聞いてくるので答えていると、子供達にも話が伝わったようだ。
「王族?」
「王子様かな?」
「お姫様かもよ」
「すてき」
と色々言っている。子供は夢があるなぁとほのぼのしていたら、「カヨさんは気にならないの?」と聞かれた。「気になったから見に行きましたよ」と答えると「んもぅ、そういう事じゃないの」と言われた。どういう事だよ。
食事も食べ終わり。ふたたび勉強部屋もとい応接室へ。もうすぐで歴史も終わる。歴史が長い国なので、大きな出来事以外は余り、教本に書かれていない様だ。図書館とかに行ったら永い歴史書とかありそう。ちょっと嫌な気分になった。本を読むのは好きだが、勉強は苦手なのだ。
応接室に入りソファに座る。ルンカさんの勉強開始だ。ふむふむ王様が法律変えたのね、え!同性同士で結婚できるの!先進的だわぁ。疑問が出て来た。
「ルンカさん、結婚てどうやってするんですか?」
「結婚はですね、教会で出来ます。教会の中に小神殿がありまして、その前で宣言すると神様から祝福と結婚の印を受け取るそうです。結婚の印は胸の上、鎖骨の下あたりに出るそうです。結婚を同性同士でしたら、できちゃったらしく、法改正に繋がったようです」
へぇ、神様公認だから法律変えたのか。この世界ホントに神様近いな。
「ちなみに、同性同士でも子供ができますよ。専用の薬を使うと一発で子供が出来るそうです」
薬かぁ、余り深くつついてはいけない話題だな。さて、歴史の続き。今のお城って新しく作ったんだぁ。そうだよね、国が豊かじゃないと大きい買物は出来ないよね。今の王様とお妃様は恋愛結婚か、いいなぁ。この国がちょっと好きになったよ。自由バンザイ!
歴史が終わって、次は法律だけどミーチェちゃんはどうする?判断はご両親に任せますが、法律が難しいか?ルンカさんそのあたりは?専門用語が難しいと、大人だけで勉強した方が良くない?そうしますか。
法律の勉強ミーチェちゃんは不参加で。勉強始めますか。農家は開墾しただけ自分の土地になるんだ、ギルドは全国にあるのね、神様に誓ったことは守らないと天罰が下ると、たやすく神様に誓わないでおこう。人は悪いことしすぎると天罰が下ると、天罰多いな。と順番に法律を教えてもらう。
その頃の代官屋敷
「やっと着いたか。世話になるぞリンダーン」
「いえ、王太子殿下の無事のご到着喜ばしい事です。ご自分の屋敷のようにゆるりとお休み下さいませ」
「ああ、そうさせてもらう……それで、例の物は」
「ご案内させていただきます」
応接間の一室
「なんだこれは!本当に移動出来たぞ」
「まあ、瞬間移動扉ですので」
「私の後ろ姿とは面白いものを見せてくれる。髪で登録していない者の瞬間移動扉の反応も見てみたい。扉の近くでは戦闘行為が出来ないとか?それも確認してみたい」
「承りました」
メイドを呼び扉を開けよ、と命令してみたが扉は開かない。
「あの……」
「ああ、悪い事をした。この扉は開かないで正解なんだ。もう一つ実験に付き合ってくれ、扉を開けるので中の空間を触ってみてほしい」
王太子自ら扉を開ける。メイドは空間を通り抜けようと手を伸ばすが何かに反発されて手が入れられない。
「分かったよ。協力ありがとう、大変参考になった」
「それでは、私は失礼致します」
「警護隊長と、その部下を1人呼んでくれ」
「畏まりました」
「殿下、お呼びとか。何かありましたか?」
「いや、実験に協力してもらおうとしているだけさ。この扉の前で戦闘行為をして貰いたい」
「はあ?分かりました、おい、私が剣を受け止めるから、攻撃して来い」
「はっ!了解です」
兵士が剣を鞘から抜き、決意した表情で剣を振り下ろす。振り下ろさない?
「どうした。まだか?」
「いいえ、隊長、振り下ろせません。腕が剣を振り下ろそうとすると動かなくなります」
「何!?軟弱な事を言い追って!私が攻撃するぞ。……腕が動かない!?何だこれは!?」
「警護隊長、何も不思議な事はない。この扉の前では戦闘行為が出来なくなるそうだ、実験は成功だね」
「そのような扉があるとは……」
「ありがとうもういいよ」
「はっ!御前失礼致します」
隊長が去った後王太子は「これはとんでもない扉だな……」と呟いていた。これから王太子は街の視察をしつつ、魔女がくるのを待たなければならない。王太子は忙しいのだ。出来る時に出来る事をせねばならない。
「リンダーン、旅で疲れた。今日は早めに休むので準備を頼む」
「はい、承りました。お部屋へご案内いたします」
「頼む」
王太子は早めの夕食を取り部屋で休むのだった。
場所は孤児院。先程、王太子殿下の使いと名乗る者が現れ、4日後に孤児院の視察をすることを伝え去って行った。
夕食の時間に院長に教えてもらったが、院長は少し気が動転しているようだ。食欲が余り無いらしく気もそぞろで、とてもゆっくり食事している。院長の話を聞き付けた子供が他の子に教えている。子供達は元気だ。「王子様に逢えるの?」と興奮している。教えてもらった法律で不敬罪があったが、命を狙うなどしなければ、処罰は軽いそうだ。これは、王族や貴族を護る為の法律らしい。院長はそのあたりも心配なんだろなぁと思いつつ、食事をする。私やカルロス一家がいたら邪魔になるだろう。当日は静かにしていよう。と決意する。
4日後、私とカルロス一家は部屋にこもり、ミーチェちゃんと遊んでいる。王太子殿下一行は午前中に来たようだ。廊下がざわざわしている。部屋の前を通過する時は静かにし、通り過ぎるのを待つ。ミーチェちゃんは不思議そうな顔だ。ミーチェちゃんが無駄に騒ぐ子じゃなくて良かった。
王太子殿下一行はお昼前に帰って行ったそうだ。どんな感じだったのか昼食中に教えて貰うと、院長は感動した様子で、語ってくれる。
始め来た時には大人全員でお出迎えしたそうだ、1人ずつねぎらいの声をかけてくれて、孤児院の中を案内したようだ。勉強部屋に行き子供達が痩せているのを心配してくれて、私達が来た時よりみんなふっくらして来たんだぞと思う。そして勉強部屋に入り1人ずつ声をかけてくれて、小さい子供とは抱き上げたりして、遊んでくれたそうだ。王太子いいやつじゃないか。その後帰って行ったようだ。どうも外見も王子様していたようでキラキラしていたみたいだ、子供達が興奮してお話している。今日ばかりは、食事よりお話で口が動いている。仕方がない、生涯1度逢えたら良いような人だ。
午後からはルンカさんの法律のお勉強だ。こういうのは、全部覚えなくても必要な時に思い出せるくらいで教えてもらえばいい。
なにせ、本が大きい。院長が使っていた教本だ。全部覚えられる訳が無い。法律の勉強はゆっくり進む、私やカルロス夫婦が途中で質問したりするからだ。法律の勉強は時間がかかるな。どれくらいで終わるだろう。
夕食はオムレツもどきとパンを食べ、やっと孤児院で卵が買えたと感慨深くなる。マジックバッグを使って焼き立てのまましまっていたようだ。みんなもトロトロのオムレツもどきを美味しそうに食べている。
食事が終わったら、就寝だ。孤児院の年長組は最近は職業訓練と魔法の訓練ばかりで疲れているだろう。早めに休む。私とカルロス一家も部屋に帰り異空間住居に行く。カルロス一家の最近のブームはお風呂に入る事だ。今日もお風呂に入ってから休むのだろう。おやすみの挨拶をしてくれた。
私の最近のブームは、寝る時におやすみという音楽を聴きながら眠る事だ、リラックス出来るからタイマーをかけて横になる。音楽に誘われて眠気がやってくる。今日はイベント盛りだくさんだったなぁと思いつつ。




