魔法使いツブラ誕生
今は夜、異空間住居の2階の空き部屋。
ちょっと創造魔法で試してみたい事があって気合い入れてます。
ティニース王国全土に設置可能で取り外しは私しか出来ない通り抜ける人は登録しなければ通れない。物はなんでも通り抜け出来る。この扉の周りでは争い事が出来ない。2枚で1つの能力を発揮する。瞬間移動扉、創造!!
両開きの大きい扉が2枚出て来た。高級そうだ。イメージどおり。私は1つの扉を持って部屋の反対へと行き壁に貼り付けて扉の横についているポケットに私の髪を入れ私を登録する。もう片方は創造した時に壁にもたれかかったままなので、壁に貼り付けこの扉のポケットにも髪を入れる。扉を開けてくぐり抜けるとあら不思議!部屋の反対に設置した扉から私が出てきた。成功だ!
私は沢山扉を作る、部屋が扉だらけになってやっと作るのをやめた。全部アイテムボックスにしまう。1番最初に作った扉に両手をかけて、壁からはがす。これも成功。扉に向けてファイアボールを撃とうとするが出来ない。これも成功。よし!よし!と腕を振り拳を握る。これで大金を……でへへ。
ちょっと冷静になろう。他に必要なモノは何か。嘘を見抜く力がほしい。創造・真偽判定!あとで誰かに嘘ついて貰おう。透明人間になる!創造・インビジブル!できたかな?寝室の鏡の前でインビジブル!消えた私消えましたよ!あとは身体強化がほしい。創造・身体強化!よし!あとは変装がいる。変身?でもいいな。今私にかかっている魔法を消して、創造・変身魔法!後は念の為、創造・気配察知!
変身魔法を試してみる。妖艶なお姉様に変身!ひゃあ!服も変わった。顔も変わってるけど。夜の蝶みたいになってるよ。妖艶な魔法使いに変身!を!こっちの方がいいね。この姿にしよっと。黒いローブにスリットが入ったスカート、足は豪華なサンダル。宝石本物かな?わからん。
今なら代官様、屋敷にいるよね。私はこっそり孤児院を抜け出す。ちょっと歩いた所で前方図上にライトを出し歩いて行く。こっそりチェックつけておいたマップが頼りだよー。結界を自分にかける。高級住宅街に入ったもうすぐだ。代官の屋敷の柵を左手に門まで歩いて行く。門の近くまできた所で「まて!」と門番に声を掛けられ、止まる。
「誰だ!?代官様の屋敷に何用だ!」
「ツブラと申します。代官様に購入していただきたい物がございまして。屋敷まで来させていただきました」
焦ったー、名前考えてなくて苗字答えちゃったよ。焦らせんなよ。門番くん。今の私は妖艶な魔法使い様。
「約束はされているのか?」
「お約束はしておりません。ですが、普通ではお金を出しても購入出来ない商品をお持ちしました」
「何処に持っている!」
「アイテムボックスの中でございます」
「出してみろ!」
「絨毯がある所では無いと嫌ですわ、商品にキズが付いてしまいますもの」
「怪しいな、魔法使いか?」
「身体検査してもらっても、よろしくってよ」
「アイテムボックスを持った者には不要だ!」
なんか門番くんの仲間が来た。1人スーツっぽい格好の人に門番くんが説明している。他の人は警戒している様だ。
スーツ姿の人が近くにきた。
「魔法使いとお見受けするが、持って来た商品とは何だ?」
「瞬間移動扉でございます」
門の周りが騒ついた。
「静かに!魔女様お名前は?」
「ツブラと申します」
「ではツブラ様、私の後に着いて来て下さい」
門を通してもらい、私の後ろに兵士が2人着いた。執事?ぽい人について歩いていく。お屋敷の中だ豪華ー。ライトがいっぱい付いてるよ。魔道具か。広い部屋に通された。
「瞬間移動扉を出していただけますかな?」
私は2枚アイテムボックスから取り出す。
「2枚ありますが?」
「2枚で1組なのです。ご要望でしたらお好きな数を揃えさせてもらいますわ」
「まだ他にあると?」
「ございます」
「使い方を教えてもらいたいのですが」
「分かりました、セットさせていただきます」
私が動くと兵士の人が身じろぎした音がした。扉を1枚持って部屋の1番遠い場所へ行く。壁に貼り付けたら元の場所へ戻り、もう一枚をセットする。
「セットできましたわ。どなたが通りますか?」
兵士の1人が「では、私が」と前に出て来て扉を開けようとする。
「お止まりになって、まだ通れませんわよ。あなたの髪を扉の右に付いているポケットに入れて下さい。1本で大丈夫ですわ、もう1枚の扉にも髪を入れて下さい」
兵士の人が扉2枚に髪を入れた。
「そちらの扉から入ってもらって構いません」
と遠い場所へセットした扉から中へ入ろうとする。
「は?」
「えっ!」
「これは!」
見てみると不思議だろう。遠い扉から近い扉に兵士が半身になっているのだ、両方の扉で。扉をくぐる兵士は自分の後ろ姿が見えているって事だ。しばらく一歩で止まっていた足が動き、近くの扉から出て来た。
「これは……本物ですな。何組あると?」
「そちらのお金が続く限りありますわよ」
「他の国には売りましたか?」
「売っておりません、この国が初めてですわ」
「他の国には売らないと約束してくれますか?」
「お金次第ですわ」
「分かりました。主と相談させていただきます。お泊まりはどちらで?よろしければこの屋敷に部屋を案内させていただきますが?」
「結構ですわ。私はまたひと月後に代官様のお屋敷を訪ねさせていただきます。その時にお金と何組入り様か伺いますわ」
「セットされた瞬間移動扉はこのままにしていただけると助かるのですが」
「サンプルとして置いていきますわ。扉は私以外は剥がせませんので、あと移動扉で移動出来る距離は王都からこの国の端までです。それ以上の距離は移動出来ませんわ」
「分かりました。お帰りで?」
「帰ります。あと一つ、扉の周りでは戦闘できませんの。お試しください」
とツブラは出て行った。兵士が後を追いかけるが、外に出た途端ツブラが飛んだ。空を飛んだのだ。ツブラが見えなくなるまで兵士は呆然としていた。
呆然としていた兵士達は急いで執事のもとへ戻り、今の事を報告する。
「ツブラ様が空を飛んだだと!?」
「飛んで帰られました」
「私も見ました!」
「凄い魔法使いなのにどうして知られていない?いや、早くリンダーン様へご報告しなければ」
執事はこの屋敷の主、リンダーンが居る部屋に向かう。ノックをして、名前を言う。
「リンダーン様、ミンドです。緊急案件が出来ました」
「入れ」
部屋の中へ入る。晩酌していたリンダーンが言う。
「お前が慌てて珍しいじゃないか」
「のんびりしている暇はありませんよ!王族案件です!」
「なに!どうした!」
「先程ツブラと名乗る魔法使いが参りました。商品を買って貰いたいと、瞬間移動扉です。1番広い応接室に現物があります。それから、ツブラ様は空を飛んで帰られました」
「何ぃ!瞬間移動扉!?空を飛ぶ!?わしを呼ばんか!」
「そんな事出来ませんでした。身元不確かな者です。リンダーン様に近づけることなど出来ません」
「瞬間移動扉?がある応接室まで行くぞ!」
「リンダーン様ここにお髪を入れて……」
「なんだこれは!!楽しいではないか!自分の後ろ姿が見えるぞ」
「楽しがっている場合ではないです。王宮に緊急で手紙を出さなければ、ツブラ様がこの扉を複数持っていることは確実です。他国には売っていないと言っていましたが金銭によると言っていました。距離は王宮から国境まで移動させられるようです」
「そうだな。急いで王宮に手紙を出そう。緊急の転送の魔道具があっただろう。それで送ろう」
カヨは話が王宮まで行くとは知らず、その夜やり遂げた満足感から熟睡していた。




