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孤児院で生活 12

 朝になった。いつものように着替えて、1階に行き朝の身支度をする。リビングに行きカルロス一家に挨拶。朝のココアを飲む。朝ココア好き……。ホッとする。


 ちょうど良い時間になったところで、食堂に行く。


 朝食は、雑穀と豆のシリアルの様な物にボウの乳をかけた物だ。まだ硬いかと思いきや、柔らかくてちょうど良い口当たりである。事前にシリアルを煮込んでいたのかもしれない。こんな食べ方もあるのか。


 異世界だからか新しい発見があるたび毎日新鮮な気持ちになる。心が生きていると分かるので余計嬉しい。


 食器を返却して、バズさんに昨日頼まれた天板10枚を渡してミンサーを取り出す。机に設置した後、バズさんに使い方を教える。新しい調理器具だったのか、表情が明るい。「商業ギルドに……」と言っていたので、暇な時に行きますと答えておいた。


 今日は朝から応接室で勉強だ。私はモニカさんとカルロスさんに文字を教えている。


 ふと知りたい事が出来たので、ルンカさんに「魔法の教本はありますか?」と聞くと「孤児院にはありません」と答えられた。

 孤児院には無いという事は

「外には売っているんですか?」

「本屋には売っているでしょうが高いですよ、一般的には図書館で調べて自分でメモをとりますね」


 と言われたので、図書館に行く事にする。ルンカさんにカルロス一家を任せて、孤児院の外に出る。歩いている兵士さんを捕まえて、図書館の場所を聞き、マップにチェックをいれる。


 図書館は大きかった。中に入ると、身分証の確認があった。私は作ったばかりの商業ギルド証を提示した。来館日時と所属、名前を司書さん?が図書館の紙に記入していく。入館料銀貨1枚を支払い扉を潜ると、沢山の蔵書が並んでいた。

 私は圧倒されたが、本を整理している人が多分図書館の人だと思い、魔法関連の書物はどこにあるのか聞いた。親切に場所を教えてくれて、私でも迷わず目的の場所に行けた。しばらく立ち読みするが、古い本のためか言い回しが古い専門用語の為、脳が理解を拒否する。もっと簡単な物はないかと探すと「初めての魔法」と書かれた本を見つけた。パラリと見て、これを読むことにする。


 椅子に座りノートを出す。地球通販でボールペンを買い、アイテムボックスから新しいノートを出すと「初めての魔法」を読み始めた。


 私は魔法をイメージで使うことが出来ていたので、魔法を使う=イメージだと考えていた。なので、生活魔法がまとめてあるページで知識も必要なんだなと感じた。


 生活魔法は、薪に火をつけるくらいの炎を出す「着火」コップ一杯分の水を出す「飲み水」身体や汚れたものを綺麗にする「クリーン」アイテムボックス小より小さいお金や小物などを入れる事が出来る「スモールボックス」がある。

 気持ちは1つだ「院長ごめーん」だ。


 私は院長にクリーンしか付与していない。生活魔法が1つの魔法を示しているなら、今からでも院長に覚えてもらうことが出来るだろう。帰ったら院長に付与しよう。


 後は、魔法を使えるようになるまでの工程だ。魔法が使え無い人は、使える人に師事しなければならない。何故かというと、体に魔力を通してもらい、他人の魔力を感じることで自分の中にある魔力を活性化してもらい、それを自覚する事が出来なければいけないのだ。根気がいる作業である。前にルイーネさんとフランさんに魔力を手から出して下さいと言っていたが、私とんだ無茶振りである。そりゃ裏技使わないと覚えさせられない訳だ。その他には、魔法には適正が有る人と無い人がいる。例えば、水魔法を使いたい人が練習していても、適正が無ければ覚える事が出来ないらしい。私がしていた付与はその適正を無視しているから、身体に負担がかかるんじゃ無いか?あり得そうだ。あと魔法は使えば使うほど魔力量が増えるらしい。


 適正が有れば今度カルロスさんに生活魔法を自力で取得してもらおう。飛行魔法が使えるのだから、魔力の動きは分かるだろう。あとはイメージだ。って本にも書いてある。イメージ。別に魔法名は言わなくてもいいらしい。大抵はイメージをしっかり固めるために声を出す、詠唱する人がいるようだ。厨二っぽいのだと笑ってしまうかもしれない。


 適正は教会か各ギルドでも見てもらえるらしい。私は多分鑑定でその人の適正を見ることが出来るだろう。今まで意識しなかったから見え無かったんじゃないかなぁと思う。奴隷商の時は料理スキル持っているかだけ意識してたから、他のスキルが見えなかったんだと思うんだ。


 あ!やばい!私のステータス偽装しておこう。創造、偽装!ステータスの偽装する。普通の能力に見えているはずだ。鑑定を掛けられると、かけられた本人は分かるらしい。とさっきの古臭い本に書いてあった。から今までは大丈夫だったのだろう。


 次の本探そう。分かりやすい本。良い魔法ないかなぁ。ファンタジーの本は沢山読んでたから、知識だけならお任せ!って気分だけど料理の腕前は上達する訳ないし、所詮私!能力は平凡なのだよ。異世界の知識は今からだからね!


 「治癒魔法はお任せ」って本読んでみようかな?



 ふぅん、毒を受けたら解毒してからヒールで治すと効果があるのか、やっぱり魔法はイメージ。怪我人の状態を診てから治すのが基本な訳ね。範囲魔法は怪我人がまとまった状態でいてくれないと魔力効率が悪いと、魔力が切れたらめまいのような状態になるのかぁ?魔力∞の私には関係ないね。

 魔力欠乏を治すには安静にするか魔力回復薬を飲むこと、魔力が少ない人はひと口でも魔力が全回復するが、多い人は何本も飲まなければいけないと、1本飲んだら全回復する訳じゃ無いんだな。

 怪我の状態が悪い時、死にそうな時は対象者が元気な頃の身体を想像して魔力をかなり多めに込める事、この時身体が光ったら治癒成功、光らなければ死亡する。病気の場合もほぼ同じ、病気の原因を魔法で探し、治したい思いを魔力と共に対象者に流す。慣れた人は病気の重度か軽度に合わせた魔力を使い治療が出来るようになる。

 欠損の場合、対象者の身体が正常な状態になる様にイメージして、欠損部位に大量の魔力を流すこと。そうすると欠損部位に肉が盛り上がってきて治る。魔力が少ない人は1度で全部治らなくても何回かに分けて治療すれば治す事が出来る。

 最後のページには人体解剖図と骨格が載っていた。覚えなくちゃいけないんだろうなぁ。



 他にはどんな本があるかな?おっ!魔法全集と書かれた本がある。見よう。魔法版辞書みたい。魔法名が書いてあって、そのあとにどんな魔法か解説されている。これ欲しい。図書館出たら本屋行こう。



 他の本は〜と。んー興味がでないなぁ。今日はもう終わりにして、また調べたいことができたら来よう。腹具合がお昼を過ぎている事を教えてくれる。屋台でなんか買って食べよう!

 司書さんに本屋の場所を聞いてマップにチェックする。



 図書館を出て屋台が出ていた通りにくる。美味しそうな匂いがする〜!行列ができている店がある。並ぼう。元日本人のさがか、行列見たら並びたくなる。

 順番来るの早いな。銅貨5枚を支払い、大きな肉の串焼きを貰う。食べ応えありそう〜。公園が見えるからお邪魔しよう。芝生に座り、串焼きにかぶりつく。 ん〜〜!肉を食べてるって感じがする〜!柔らかめの肉質にスパイスの効いた味わい、ぱくぱく食べれちゃう。さすが行列の店だ!


 クシはアイテムボックスのゴミ箱に入れお茶を出して、一服する。この公園なんかのんびり出来るなぁ。日差しもあたたかいし。自然とあくびが出てくる。日光浴ー。


 さぁ、本屋に行こう。


 着いた本屋は大きかった。それに警備が厳重だ。入り口に近くと門の中の警備員に声をかけられた。


「当店は本の販売をしております。お客様でしょうか?」


 「はい」と答えると、門が開いて「どうぞ」と促される。もう1人の警備員がお店の扉を開けて「いらっしゃいませ」と迎えてくれた。中に入ると個室に通される。置いてあったソファに腰掛けると、店員さんが尋ねてきた。


「今日はどの様な本をご希望でしょうか?」


「魔法全集とスキル全集もあればそれも、あとは小さい子供が読む本と魔法の初歩の勉強の本、職業が書いてある本があればそれもお願いします」


「承りました。準備をして参ります」


 と部屋を出て行った。新品の本はとても高価なのだろうか?厳重な警備に気疲れした。ソファに深く腰掛け、目を閉じた。


 しばらくして、部屋がノックされた「はい」と返事をすれば、女性の店員さんが扉を開き沢山の本を載せたカートを押して部屋へ入って来た。ソファの横につけ、本を2冊机に置く。


「ご希望の本をお持ちしました。魔法全集は2種類あります。ご確認下さい」


「どちらが新しい本ですか?情報が多い本をいただきたいのですが」


「こちらになります。1度手にとってご確認下さい」


 見せてくれた本は図書室に置いてあった本より見やすかった。


「こちらを貰います」


「分かりました。次はスキル全集です。こちらも2冊ありますが、新しいものはこちらになります。最新情報が追加で掲載されております」


 2冊とも見てみる、やはり新しい方が読みやすい。


「新しい方をいただきます」


「次は職業の本となります。こちらはこの1冊だけになるので、ご確認下さい」


 手にとって中をみてみる。職業名が書いてあり、簡単な説明文も書いてあった。職業を選ぶメリットデメリットも記載されていたので、実用にたると考えた。


「こちらもいただきます」


「分かりました。次は小さいお子様が読む本です。量が多いので時間がかかりますが、1冊ずつご説明させていただきます。こちらの本ですが……」


 本当に量が多かった。1冊1冊は本が薄いし小さいのに、物語の本から注文した魔法の初歩の本、読み書きの教本、数字の本・計算の本、少し大きめの子供の本と沢山だ。

 私は選び、物語の本を3冊と他1冊ずつ購入すると言う。購入しない本は別の店員が片付けに行った。店員さんが本の購入代金を1冊ずつ説明してくれる。


「……ですので、全部で金貨190枚となります」


 私はアイテムボックスから金貨が入った袋を取り出した。トレーを用意してくれたので、その上で数える。店員さんも確認して購入の手続きは終わった。


「本のお持ち帰りはアイテムボックスで持ち帰られますか?」


 「はい」と、アイテムボックスに本を入れていく。店員さんが出口まで案内してくれた。「またのご来店お待ちしております」と扉を開けて。「ありがとうございました」と外に出る。警備員さんが門を開けてくれたので、そのまま帰った。


「ハイソな雰囲気は疲れる……」


 思わず声に出てしまった。


 孤児院に帰り、院長を探知する。畑にいるので呼びに行き、一緒に勉強部屋へ行き、買ってきた本を出して一冊ずつ説明し、院長に渡す。


 院長は新品の本を複数貰い、軽くパニックになっていたが、私が「読み書き、数字・計算の本は私達の勉強に使ってくれればいいですよ」と言うと、ちょっと疲れたように「ありがとうございます」と返してくれた。

 前から疑問に思ったことがあったので、院長に聞いてみる。


「みんな時間ってどう判断しているんですか?」


「孤児院にはありませんが、時計と言う物がありますので、所得が高い方はそれで判断されていると思います」


「1日の時間て分かりますか?」


「24時間ですね。どうしたんですか?いきなり」


「いえ、私が住んでいた所と同じで安心したんですよ」


 この世界、妙に地球と似ている。地球と同じ発展の仕方をしているんじゃなかろうか?でも魔道具とかあるし、魔法も魔物も。分からないけどこの世界の主神が地球の神様と友達だったりしてね。夢がある。


「カヨさん本の事は、明日、子供達に報告させていただきます。本当にありがとうございます」


 院長が頭を下げてきた。私は院長の背中を撫でて「顔を上げて下さい」と声をかける。顔を上げた院長の目元は赤かった。泣きはしないが、一歩手前だったようだ。


「カヨさんに相談に乗ってもらいたい事が、エリックの進路希望の事です。カヨさんも一緒に聞いていたので、ご存じの事ですが、エリックは成人後孤児院の職員として働きたいと希望を出しています。私が頼りなかったせいで、あの子の可能性を縮めてしまったのでは無いかと不安なのです。今は奴隷達4人も居て手は足りていますし」


「院長、私はエリック君は責任感のある若者だと思っています。成人したら、職員として働いてもらって、バズさんの買い物について行かせるなど外の世界も見せてあげれば良いと思います。その後、新たに着きたい職業が出来たら、応援してあげればいいと。それに、手は足りていると言っても4人は奴隷達です。もし院長がいなくなってしまったら孤児院に大人が1人も居なくなります。私はエリック君を副院長にして、奴隷達の相続人になってもらえばいいと考えます」


「……そうか、そうですね。そのようにするのが孤児院にとっては最善ですね。エリックの人生もエリックが考えればよいことでした。カヨさんありがとう」


 院長が本を棚に片付ける。私は忘れていた事を思い出し院長に謝る。


「院長!すみませんでした!クリーンが生活魔法の1つだと今日知りました。院長に再度魔法の付与を受けてもらいたいのですが」


「そんな事、気にして居ませんよ。私はありがたかったのです。院の子達を綺麗にしてあげれることが」


「院長の心が優しいことは分かりました。が、もう一度付与を受けて下さい。お願いします」


「カヨさんが良いのであれば、宜しくお願いします」


 院長にベッドに横になってもらい、付与の準備をする。


「院長、痛くなりますので、心構えをして下さい。院長に生活魔法を付与!」


「ゔうっっっ」


 苦しみかたは、大丈夫か?汗は出ていない。やっぱり生活魔法は4つで1つの魔法なんだ。


「院長、付与が終わりましたよ。着火と飲み水、スモールボックスが使えるようになっていると思います」 


 痛みでぼうっとした院長は手を上げて着火の魔法を使った。手から炎がボボっと出た。スモールボックスも開けて手の出し入れをしている。成功だ。 


「院長がんばりましたね!魔法が出来ていますよ!子供達にも魔法を教えてあげられますよ!」


 子供達に教えてあげられる!の所で院長は泣いた。



 孤児院のマーサは孤児院育ちの院長だ。魔法なんて遠い世界の話だった。子供達は魔法の存在を知ると一度はマーサに「魔法を覚えたい」と言ってくる。教えてあげられない自分が悔しく、子供達は諦めていった。それが、魔法を教える事が出来るというのだ。嬉しくてたまらない。カヨさんが本棚から1冊本を持って来る。「初めての魔法」だ。本を受け取る。高価な本を買う余裕なんて無かった。マーサは嬉し涙を流した。



 私は本を抱きしめて泣いてしまった院長に、困ったなぁと空中を見る。外が賑やかになって来た。夕食だ。「夕食ですよ」と院長に声をかける。「ルイーネさんとフランさんも魔法を教える事が出来ますよ」と言えば院長は「皆で本を読んで勉強する」と答えた。「魔法の適正を教会かギルドで見てもらえるそうですよ」と返すと「明日、子供達を連れて行って来ます」と答えた。



 2人で食堂に行き、夕食を貰う。今日のスープに肉団子が入っていた。さっそくミンサーを使ってくれたと嬉しくなった。肉は子供達にも人気だ、団子にしてあるので、幼児の子も食べられる。


 院長が食堂の前に行き、「明日は魔法の適正を見に外出します」と公表していた。子供達は大喜びだ。夜眠れるといいけど。


 夕食の肉団子は美味しくいただきました。院長がルイーネさんとフランさんに夕食後残るように言っている。魔法を教える事だろう。


 カルロス一家と部屋へ帰り、リビングに集合する。カルロスさんの魔法適正を鑑定して、生活魔法を使えるのを確認する。


「カルロスさんは魔法が使えるので生活魔法を覚えて下さい」


 「私に使えるかな?」と困った顔をしていたので「魔法が使えれば覚えられる」と答えた。とりあえず空き時間に覚える練習をするそうだ。


 私は、おやすみなさいと挨拶して2階に上がり就寝した。



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