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【旧作】私は異世界で自由に生きる〜子供達に癒される〜  作者: 春爛漫


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孤児院の卒業者

 昼食の時間に「今日の夕食は私の自宅で食べない?」とノアにお誘いしたら了承の返事をもらえたので料理長に今日の夕食は私とノアの分はいらないと伝えて、ルークの離乳食だけ作ってもらう事にした。


 男性陣を送り出した後にルークを使用人の子供達と庭で遊んでいてもらい、マリーシャに一緒にいてくれるようにお願いした。


 ユーリに授乳してから搾乳機で母乳を搾り、母乳をストックしてから自宅に行こうとしたら、瞬間移動扉の前にメモ用紙が落ちていたので読むと「孤児院から成人した子供達が来た」と書いてあったので魔道具屋に顔を出してパルコに聞くと、昼食を食べさせていると言われたのでキッチンに行く。


 するとなんとなく見た事のある子達、男の子5人がいたので「孤児院を卒業した子供か」と聞くとそうだと「院長に言われて来た」と言った。


 みんな、まだ普通の格好をしているので今から買い物などの準備を今からするのだろう。


 ダイニングでいいかと、読心を使って魔法使いになっていいかの質問をすると、5人全員迷いなくすぱすぱと答えていく。質問の答えを把握する私が大変だ。さすが冒険者希望者だと思った。少しの迷いが命取りになると教育してもらったのだろう。潔い答え方だ。歳の割にしっかりとしている。


 私的に全員満足出来る答えをもらったので、最後の質問「魔法が使えたら何を使いたい?」と聞いた。


 これは1人で答えが出せなかったようで、相談して決めていた。チームワークも今から抜群だね。


 5人で考えた後に、2人はアイテムボックスが欲しい、後の3人は水魔法と火魔法、治癒魔法が欲しいと答えがあった。


 各人の適正を見た後にかぶってないから大丈夫と安心した所で、そういや孤児院にお世話になった時に孤児全員で教会に適正を見て貰いに行ったのだったと思い出した。1人だけ魔法の適正が無い子がいるけど治癒魔法が使えたら食いっぱぐれはないと納得して、私を期待した目で見る男の子達に苦笑してしまった。

 どこかから私が魔法を使えるようにしてくれると話がもれていたようで、期待する男の子達の後ろに立って「苦しくなるから我慢してね」と言って、1人ずつ間違えないように魔法を付与していった。

 やっぱり魔法の適正が無かった子が1番苦しんだのでヒールを何度も掛けて落ち着かせた。


 全員分のお茶を入れ直して、トレーに乗せて戻り、リンダのケーキを出して切り分ける。成人のお祝いがあっても良いと思ったのだ。

 私はまだ授乳中なので遠慮する。


 全員に希望の魔法が使えるようになった事、魔力は使わないと増えないから訓練する事を注意事項として伝えてからケーキをご馳走した。


 確か2回目のケーキに興奮して食べている。

 いや、散髪に来た時にも食べたのかもしれない。私が何か孤児院の子供達にご馳走してくれとお願いしているから。


 男の子達は、やっぱり別の街に行かないでカリオンで活動するか?と相談している。


 話を聞いてみると、私をよく孤児院で目撃していたようで、警戒心無く話してくれた。

 若い彼らには甘味が魅力的らしくて、院長にも食べる物に困ったら孤児院に来なさいと言われているらしく、桃が食べたいと成長期の男の子らしい意見を聞けた。


 リーダーは誰かと聞くと、中肉中背の男の子が手を上げた。体格じゃなくて頭の良い子をリーダーにしたようだ。


 その子に1ヶ月分の宿代を渡して、いい装備を買うように言うと「はい!」と元気な返事が返って来た。

 なんだか子供の旅立ちが悲しくなってきたけど、全員を出口まで送り出した。

 お礼を言われて、離れていく子供達を見送った。正しく、この世界で成人した大人でも、私の常識の中では15歳は子供だ。


 生き残れますように。と願いを込めたら、私から光の玉が5つ飛び出して子供達を追いかけた。祝福が発動したようだ。


 キッチンに戻り、ダンテに「今日は大事な用があるから飛竜の肉で料理をお願い」と飛竜の肉の中でも柔らかい部位を出して料理するようにお願いした。私もノアも食べるからと。

 若い子達は歓声を上げて喜んでくれた。


 散髪屋と魔道具屋と美容室と結婚相談所と雑貨屋に声をかけて「夕食は全員で食べるよ」と宣言した。

 三階にいるアイリさんを探していると、ルーフバルコニーにいたらしく「今日はご馳走にするからみんなで食事する」と言えば了承してくれた。

 その後に言いにくそうにしながら「ダイニングに座る場所が無い」と言われた。私の配慮不足だ。人数が増えたのに机と椅子を増やさなかった。


 アイリさんにお礼を言ってからダイニングに行くと、もう大きい机を置いているからスペースが無い。

 時空間魔法で空間を広げて、今の2倍の大きさにすると同じ大きさの机が置けるので、地球通販で以前買った履歴から長机を選択して椅子とセットになっているので購入して出した。椅子の数を数えて、全員座れると思った所ではぁ、とため息をついた。この分じゃあトイレも譲り合ってしているのだろうなと思い、排水場所は同じにして時空間魔法で空間を広げた後にトイレを複数作った。お風呂はすまん。今までのものを使ってくれ。トイレのスリッパを置いて完了だ。


 玄関も靴で混み合ってるので、大きな靴箱を設置して靴をしまっていく。いろいろ不便をかけているなぁ。設計初心者が一から作った家だから、いろいろ抜けている物があるだろう。みんな文句も言わずに使ってくれている事実がありがたい。

 玄関が綺麗になったところで掃除をして、掃除道具を隅に立てかけた。


 鍵を開けて外に出ると、爽やかな風が通り過ぎて春だなぁと清々しい気持ちになった。

 家の鍵を閉めてから、孤児院に向かって歩き出した。


 慣れたカリオンの街並みに散歩気分で歩いていると、ユーリが起きたようで泣きそうになっている。孤児院までもう少しなんだけどお乳が待てなさそうだ。

 建物の隅に寄って椅子をアイテムボックスから出して授乳ポンチョをかぶり、ユーリに授乳する。


 視点が変わると見る景色も変わる。

 こうやって見ると、領都カリオンはよそ者が多いのに気がつく。人の出入りが激しそうだ。

 チャシマ領は王族の直轄地だから治安がいいし、交易の中心だ。それに王都まで比較的近いから立地がいい。その分、派遣されている兵士も多いんだけどね。いや、地元採用の兵士かもしれない。


 ユーリの授乳が終わったら後片付けをして、また歩き出す。


 数ヶ月ぶりの孤児院に建物がボロいなぁと思いつつ、建物の建て替えをしてあげたいけど、孤児院の作りは特殊なんだよね。

 それに建て替え中は子供達の泊まる場所も確保しないといけないから大変だ。

 私が連れて来た赤ちゃんだった子は、もうすぐ2歳のはずだから大きくなっただろうなぁ。


 前庭で剣を振り回している子達を眺めながら通り過ぎる。ルイーネさんが剣の指導をしている。冒険者か兵士になりたい子達なんだろうな。


 裏庭に行くと畑作業をしている子供と、小さい5歳くらいまでの子供達が隅っこで遊んでいて、院長はフランさんとルンカさんと一緒に数人の子供の魔法の練習をしていた。


 私は小さい子供が増えている事に気づいて、卒業する子もいれば新たに入ってくる子供もいるのだと、少し悲しくなった。


 私は院長に声をかけて、少し離れて会話する。


「カヨさん。子供が少し大きくなったようですね」


「はい。日々成長しています。孤児院に変わったことはないですか?」


 院長が少し困った顔をする。


「以前に比べたら充分過ぎるほど恵まれているのはわかっているのですが、子供達の就職先を探す為にお店を訪ねると孤児だと足下を見られていると言いますか、低い賃金なら雇ってやると言われる所が多くて困っているんです。今までなら孤児院を私が離れられなかったので成人した子を放り出すように送り出していた事を考えると、成人してお金もなくて賃金は低くて……ちょっと現実を突きつけられて気持ちが下がっているようです。

 ……言葉にしたらスッキリとしました。過去を後悔しても遅いですね。もう少し子供達にとって良い条件の就職先を探します!」


「そうですか……」


 基本的にはカヨは商売は苦手だ。

 これは現実で、孤児達は社会に出ると差別にさらされるのだろう。ハルトさんだって頭は良いのに冤罪を信じてもらえなくて奴隷になっていたじゃないか。


 王族に全国の街町に孤児院を作ってもらったが、人としての根本的な部分には差別が付きまとうのかもしれない。


「一度、代官様とお話しされた方がいいかもしれません。私の身分証が発行されたら院長に使用人の身分証を渡しますので、それを持って話に行ってください。根本的な身分差別が原因のように感じます。親がいない庶民がいたっていいじゃないですか」


 院長はいきなり大きくなった話に驚いている。代官の所に行くなんて考えたこともなかったのだろう。


「え?ええ!?だ、代官様の所なんてっ!とても行けませんよ!」


「院長、院長室に行きましょうか。大事な話があります」


 院長には普通に接してほしいので言わなかったが、私の身分を話す時だ。

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